1966年に放送開始した、初代『ウルトラマン』では、子供たちの声にしっかり耳を傾ける隊員たちが描かれた (C)円谷プロ

【画像】怪獣を見た子供の「通報シーン」が描かれる「ウルトラマン」のエピソード(5枚)

「家族が怪獣に殺された少年」の言葉を信じない?

 大人に信じてもらえないと、子供心というものはえらく傷つくものです。

 ウルトラシリーズに登場する防衛チームは、時おりびっくりするほど子供からの通報を無視します。視聴者の子供からすれば「だから大人はイヤなんだ」と家出したくなることでしょう。当時の少年たちの心を若干傷つけたに違いない、ウルトラ防衛チームの「通報ガン無視シーン」を具体的に見ていきましょう。

『ウルトラマン』『ウルトラセブン』では子供との信頼関係がバッチリ?

 ウルトラシリーズの初期では、実はそこまで子供の発言が軽んじられていたわけではありません。 『ウルトラマン』ではホシノ少年が科学特捜隊の名誉隊員に任命されるくらいですから、世界の根底に子供への信頼が満ち満ちていたといっても良いでしょう。

 また、第20話「恐怖のルート87」では、無断で本部に入室してきた謎の少年の「高原竜ヒドラが暴れる」という警句にも敏感に対応。すぐにアキコ隊員はムラマツキャップらに連絡を取って調査を開始。身元不明の少年による言葉であっても、無下にはしませんでした。

 次作『ウルトラセブン』はより本格的なSFを目指した作品。この方針が子供の描かれ方にどう影響を与えたのでしょうか。第3話「湖のひみつ」では、キリヤマ隊長が巨大な落下物の通報があったことを受け、ダンとフルハシに調査を命じます。その際にちらっと「子供の連絡であてにはならんが」と前置きする程度で、実際にすぐに隊員を派遣しています。

第2期ウルトラシリーズとなると……子供はほとんど「嘘つき」扱い?

 昭和ウルトラシリーズも、いわゆる「第2期」に突入すると、子供と防衛チームの間に暗雲が立ち込め始めます。『帰ってきたウルトラマン』の第7話「怪獣レインボー作戦」では、次郎くんが撮影した記念写真に怪獣が写っていることが発覚。周囲の大人はトリック写真と決めつけ、防衛チームMATも調査に乗り出してくれたはいいものの付近に怪獣の姿は認められず……次郎くんの嘘つきの疑いは晴れないままでした。「もういいよ、MATには頼まないから」と漏らす姿は、なんとも寂しげでした。

 そのような傾向は、『ウルトラマンA』の防衛チームTACでは輪をかけて顕著です。たとえば13話「死刑!ウルトラ5兄弟」などは特に「ぶったるんで」います。超獣バラバによって兄を殺された少年が懸命に事情を警察に説明しているというのに、警察は「事故」の一点張りで、その少年から直接話を聞いた北斗も南も調査に乗り出さないのです。

 さらに第42話「冬の怪奇シリーズ 神秘!怪獣ウーの復活」でも、雪山で父が超獣の犠牲になった少女が訴えかけているというのにTACの山中隊員らは「雪崩と見間違えたのでは?」などと心ない言葉をかける始末でした。もちろんこれらはストーリー上の要請であり、構成上、致し方ない部分も多々あったのでしょう。

平成に入って……「子供」と「大人(防衛チーム)」の関係はフラットに?

 平成以降のウルトラシリーズではどうでしょうか。例えば『ウルトラマンダイナ』の13話「怪獣工場」。嘘つきと評判の少年が怪獣を作っている工場を発見。しかし警察にも防衛チーム「S-GUTS」にも信じてもらえませんでした。夜に再び通報するも、アスカ隊員は取り合わず。少年は機転をきかせて「昼間に貸した漫画返せ」と、別の方向から迫りました。ここではアスカ隊員と少年が対等の関係を築いていました。

 『ウルトラマンマックス』の第33話 「ようこそ!地球へ 前篇 バルタン星の科学」、はこれまでの「子供」と「防衛チーム」の関係を踏まえると重要なエピソードです。巨大な怪獣を目撃した少年が防衛チームDASHに通報しますが、例のごとく怪獣は隊員が駆けつける前に忽然と姿を消します。とはいえ通報した少年をカイト隊員は小馬鹿になどしません。

 「これからも君がもし異変や怪獣に出くわしたら、勇気を持ってDASHに知らせてくれ。DASHは必ずくる」

 ……実に心強いセリフです。まともに大人に取り合ってもらえなかった少年少女たちの無念が救われる言葉でもあります。そもそも、通報すること、目撃したことを訴えることだって勇気が要るものなのです。この寄り添いの視点が導入されたのは重要です。平成から令和へと時代は移り、「子供」と「防衛チーム」の関係は今後どのような変化を見せていくのでしょうか?