プレイに慣れていないプレイヤーを初見殺しで翻弄した、ファミコン用ソフト『トランスフォーマー コンボイの謎』

【画像】懐かしすぎ! 激ムズだったファミコンのキャラクターゲームたち(4枚)

あまりにも難しかったファミコンのキャラクターゲーム

 およそ1000本を超えるラインナップを誇り、10年近くにわたってテレビゲーム市場をリードしたファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)。その人気ぶりは凄まじく、当時はゲームメーカーが手掛けるオリジナル作品やアーケードゲームの簡易移植版に加え、マンガやアニメ、タレントなどを題材としたゲーム作品、いわゆるキャラクターゲームも大量に作られました。

 今回は、ファミコン向けに発売されたキャラクターゲームのうち、ファミっ子のチャレンジ精神を打ち砕いた高難度のゲームを4本紹介します。それぞれのゲームが高難度化に拍車をかけたポイントは……?

トランスフォーマー コンボイの謎

 難し過ぎるキャラクターゲームとして真っ先に名前が挙がるであろう『トランスフォーマー コンボイの謎』。本作はタイトルの通り「トランスフォーマー」シリーズをもとにしたアクションゲームですが、開始数秒も経たずに自機を失うという、「徹底した初見殺し」でも知られています。

 主人公の「ウルトラマグナス」は敵弾や敵機に触れると即壊れてしまうため、どんな状況であっても被弾はまず許されません。にも関わらず、ステージ1のスタート直後に出現する敵キャラ(ジェットロン)は、わずか数ドットほどの視認しにくい弾を前触れもなく撃ち出してきます。ゆえに、考えなしにステージを進めば背景と同化した敵弾に撃墜され、何も分からないまま1機を失うハメになったのです。

 ウルトラマグナスのトランスフォームを使いこなせば突破できなくもありませんが、基本的に道中の難しさは変化せず、細心の注意を払いながら敵弾と敵機を見定める必要がありました。その一方、ボス戦は特にパターンを覚えずとも、弾を連射すれば勝てるレベルで難易度が低く、ゲーム全編にわたってバランス調整の「謎」が残ることになりました。

オバケのQ太郎 ワンワンパニック

「決して被弾は許されない」という性質を持つキャラクターゲームは他にも多々ありますが、とりわけ有名なのは『オバケのQ太郎 ワンワンパニック』ではないでしょうか。こちらは原作・藤子不二雄によるマンガ『オバケのQ太郎」がモチーフの横スクロールアクションゲーム。プレイヤーは主人公「Q太郎」を操り、ステージを駆け巡りながらアイテムの運搬や囚われたオバケの救出を行います。

 本作はゴリ押しで全ステージクリアできるほど甘くなく、序盤からきちんと敵キャラの動作を把握した上で攻略法の確立が求められました。というのも、本作のQ太郎は攻撃技(ガウガウ砲)こそ使えるものの、基本的には無力な存在だったのです。

 道中にはQ太郎が苦手とする犬をはじめ、鳥、煙突の煙、空中を漂う風船など、触れただけで即死級の敵キャラおよび障害物が盛りだくさん。「高速で飛んでくるバウバウ砲に何度もぶつかる」「犬を避けようとしてスズメやカラスと激突する」といったアクシデントがひっきりなしに起こるため、繰り返しトライしてQ太郎の制御を完璧にマスターしなければなりませんでした。

 ステージ1とステージ2も難しめですが、本番は仲間のオバケを助け出すステージ3から。ちなみに、海外ではNintendo Entertainment System(以下、NES)向けに『Chubby Cherub』という名前で発売され、Q太郎の代わりに天使のキャラクターが主役を飾っています。

ドラゴンボール 神龍の謎

 令和の今もなおシリーズ展開が続く「ドラゴンボール」ですが、ファミコン向けに発売されたキャラクターゲーム第1弾は、常に空腹と戦わなければならない、緊張感にあふれたアクションゲームでした。

 バンダイから発売された『ドラゴンボール 神龍の謎』は、プレイヤーが少年期の「孫悟空」(以下、悟空)を操作し、世界各地に散らばったドラゴンボール集めやレッドリボン軍との戦いに奔走します。本編はトップビュー(フィールド移動)+サイドビュー形式(ボス戦)で進行。原作コミックス1~2巻に相当するステージや突拍子もない宇宙ステージまで、原作再現とオリジナル展開が入り乱れるカオスな雰囲気が特徴です。

 とはいえ、ゲームバランスが良好だったとはお世辞にも言えません。その原因となったのは、孫悟空の残り体力と制限時間を示す「POWER」システムです。プレイ中は時間の流れに応じてPOWERが少しずつ減っていき、数値が0になると悟空が力尽きてしまいます。

 このPOWERを回復するアイテム(食料)がランダムでフィールド上に出現する仕様だったため、運が悪いと十分な量の食料を手に入れることができなかったのです。POWERを適切に保つためには、各ステージの隠し部屋を探し当て、落ちているポイポイカプセルから食料が出ることを祈るほかありません。

 さらに、各ステージで待ち受けるボス(ヤムチャ・兎人参化など)も手強く、攻略法がつかめない状態では突破も簡単ではありません。全編に及んでゲームバランスの不安定さが目立ったものの、発売時期が『ドラゴンボール』ブームの真っ最中だったからか、累計売上120万本以上という大ヒットを記録しました。

キョロちゃんランド

「クエックエックエッ チョコボール」のCMがキャッチーな森永製菓「チョコボール」。パッケージに描かれているマスコットキャラクター「キョロちゃん」が、実は約30年前にファミコンでゲーム化されていたのをご存知でしょうか。

 その名も『キョロちゃんランド』。プレイヤーはコントローラーを介してキョロちゃんを導き、トラップだらけの「TOWER OF EYES」(以下、タワー)の登頂を目指します。

 キョロちゃんランドと銘打つように、タワーはファンシーな雰囲気に包まれて……いるわけではなく、黒一色の背景にレンガ状のブロックが積み上がった殺風景な作りで、キョロちゃんとチョコボールの世界観は一部を除いてほぼ生かされていません。というのも、本作はNES用のアクションゲーム『Castelian』を日本向けに調整したローカライズ作品であり、実際のところ、目に見えて変わったのは主人公がキョロちゃんに置き換わったぐらいで、ゲームシステムはほとんど手が加えられなかったのです。

 効果音だけが暗闇に響きわたるなか、無表情でテクテクとタワーを登っていくキョロちゃん。その姿はどこか寂しさと不気味さを感じさせます。

 タワーに仕掛けられた数々のトラップと制限時間の厳しさも相まってか、ゲーム自体の難易度も相当高め。周囲の足場と見分けがつかない落とし穴や上階に登るためのエレベーターの場所を完璧に覚えるのはもちろん、攻略ルートを完璧に見出した上で、道中をつまずくことなく駆け抜けるテクニックが問われました。

 チョコボールの外装を彷彿とさせるパッケージデザインと裏腹に、シュールな見た目と高難度のギャップが目立ちまくる『キョロちゃんランド』。キョロちゃんを題材に掲げた後続タイトルと比べると、より一層本作の異質さが浮かび上がってきます。