『機動戦士ガンダム』37話「テキサスの攻防」は、アムロとセイラの出撃から戦局が動き出す。画像は同エピソードが収録された、「機動戦士ガンダムDVD-BOX 2」(バンダイビジュアル)

【動画】「ギャン」の激しいサーベル攻撃! ガンダムの耳元を「ヒュンヒュン」

「ふぅ……命拾いのあとのいいお風呂だったのに」

 1979年12月15日は『機動戦士ガンダム』の第37話「テキサスの攻防」が放送された日です。ソロモンの激闘を終えたホワイトベース隊は、しばしの休息を過ごしていました。ブライトはブリッジ内で仮眠を取り、アムロはフラウに健康診断をしてもらいながら、久しぶりに語り合います。

 しかし状況は、戦場の兵士に無限の時間を与えてはくれませんでした。半ば放棄された観光用スペースコロニー・テキサスにソロモンを脱出したチベ級重巡洋艦らしき反応をキャッチしたホワイトベース隊は、掃討のために出撃します。

 ここでホワイトベース隊にとって予想外だったのは、テキサス・コロニーにいたのはチベ級だけではなく、補給を待つシャアのザンジバルが身を潜めていたことでした。すでに新型モビルスーツであるシャア専用ゲルググは届いていたものの、ララァ・スン用のモビルアーマー・エルメスは整備の遅れから到着しておらず、戦力不足のシャアは、近辺にいたマ・クベに連絡し、ホワイトベース隊を狙わせたのです。

 テキサス・コロニーに接近し、チベが動いたことを確認したブライトは、休息していたメンバーに総員起こしをかけます。そして直後に映し出されたシーンに、当時の青少年たちは度肝を抜かれることとなりました。

 なんと、セイラさんがお風呂に入っていたのです。裸身を半分ほどさらけだし、幸せそうに湯船に浸かっていたセイラさんでしたが、総員起こしの警報を聞き素早くバスタブからあがり、「ふぅ……命拾いのあとのいいお風呂だったのに」と呟くのでした。

 一方そのころ、シャアからホワイトベース接近を知らされたマ・クベはシャアの目の前で武勲を挙げるチャンスと奮い立ちます。部下のリック・ドム4機にガンダムをテキサスへおびき出すよう命じると、自身は新型モビルスーツ「MS-15 ギャン」で出撃。岩礁帯とコロニーに罠を仕掛けに向かうのです。

 マ・クベ自身は、この時点でおそらくモビルスーツによる戦闘経験はほぼないと言ってよい状態です。数多のエースパイロットを撃墜してきたガンダムと正面から戦っても勝機はありません。卑劣ではありますが、マ・クベにとっては「罠」こそがガンダムに勝利する唯一の手段だったのです。



さまざまな策をめぐらせたうえでガンダムに挑んだ、マ・クベのギャン。画像は「HGUC 1/144 YMS-15 ギャン」(BANDAI SPIRITS)

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「ウラガン……あの壺をキシリア様に届けてくれよ」

 Gアーマーで出撃したアムロとセイラはリック・ドムと交戦に入り、一撃を加え最後尾のドムの右手とジャイアント・バズを破壊したところですぐに分離。ガンダムとGファイターへチェンジします。この戦いでのリック・ドムの動きは実に見事で、3機のドムが三位一体の攻撃を仕掛け、最初に損傷した機体もヒート・サーベルで果敢にガンダムへと挑みかかります。しかしアムロとセイラの敵ではなく、一方的に撃破されてしまうのでした。

 やがて戦場は岩礁帯へと移り、マ・クベのギャンが姿を現します。アムロは即座にマ・クベの作戦を感知しますが、仕掛けられた爆弾に引っかかってダメージを受けてしまいます。テキサス・コロニー内に侵入したギャンを追ったガンダムは、爆弾やハイド・ボンブによってダメージを受けながらも致命傷は避けており、その様子を見たマ・クベを驚愕させます。

 仕掛けた罠の大半をかわされたマ・クベはなおも正面から戦おうとはしませんでしたが、増援としてシャアのゲルググが現れたことに気づき、退くに退けなくなってしまうのです。「シャア、退けーい!」と叫びながら飛び出し、シャアを一旦後方に下がらせガンダム目掛けて猛然と突きかかったギャンの剣筋は鋭く、ガンダムを追い込んだように見えました。

 しかし汚い手しか使えないマ・クベではアムロに勝てないのは明らかでした。シャアへの対抗心から戦いを止めようとはしないマ・クベでしたが、アムロはビームサーベルの二刀流でマ・クベを追いこむと、そのまま抱き着くようにして背中から両脇にかけてギャンを切り裂きます。死を間近にしたマ・クベの脳裏に思い浮かんだのはキシリア・ザビに送り届けようと考えていた、北宋時代のものと推定される白磁の壺。

「ウラガン……あの壺をキシリア様に届けてくれよ……あれは、いいものだ!」

 手段をえらばず、長く連邦軍とホワイトベース隊を苦しめた、強敵の最期でした。