琵琶湖周辺にて局地的な人気を誇る釣魚、ホンモロコ。釣って楽しいだけでなく、食べても美味しいらしく、春の風物詩として釣り人の気持ちを熱くする。湖国の偉大な小魚の釣りに挑戦した。

20年越しの初対面はパラナ川ではなく長命寺川

滋賀県に事務所を移して3年半が経った、この哀れな語り部(←筆者のことです)。ビワマス、コアユ、ハス、ワカサギ、バス…と琵琶湖の魚を釣って食べてきた。海育ちの味覚でも琵琶湖の魚はどれも美味しいと感じるが、ホンモロコは個人的に後回しになっていた。子供の頃に食べたコイ科の魚の味にあまり良い印象を持っていなかったからだ。

さて、ホンモロコはコイ科の小魚で、琵琶湖の固有種とされている。普段は湖の水深5~15mくらいの場所でよく見られるが、春になると湖岸や流入河川に移動し、アシやヤナギの根元に産卵する。そのときに釣れるお腹いっぱいに抱卵したホンモロコが一般的に旬とされている。琵琶湖で獲れる魚のなかで最も高価という説もあり、京都の料亭では高級魚として提供されているらしい(行ったことはない)。

今年こそ、ホンモロコを釣って食べたいと思っていたところ…ある人物から超々ひさしぶりに連絡がきた。知る人ぞ知る、ドラード釣りの先駆者、Sさんである。

今から20年前、出版社で釣り雑誌編集の仕事をしながら、南米へドラードを釣りに行くことを夢見ていたこの哀れな語り部。当時、「ドラードフィッシングの魅力」というWebサイトを運営していたSさんに連絡をとり、ドラード釣りの何たるかを教わっていたりした。そのSさん、10数年前から琵琶湖でビワマス、コアユ、ホンモロコを釣ったりワカサギを掬ったりしているらしい。語り部とかなり被って、いや、またまた先を行かれているではないか…。

そんなわけで、3月下旬にSさんとホンモロコ釣りに行く約束をしたのである。

1993年、Sさんが『Angling』誌に寄稿した「黄金がほえる アルゼンチン・パラナ川のドラード」という記事。 ©望月俊典

パラナ川ではなく長命寺川にて、ドラードではなくホンモロコを狙う。 ©望月俊典

語り部のタックル。竿はメバルロッドとバスロッドを使用。釣果にはさほど関係がないように思うが、個人的な統計ではややバスロッドが有利。 ©望月俊典

Sさんは4本出しスタイル。ティップラン用のロッドとブローニングのオールドロッドが混じる。リールはミチェルの409も使用。タックルの新旧と釣果にはさほど関係はないようだ。 ©望月俊典

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Sさんにコツを教えてもらうと…ホンモロコがヒット!

3月末なのに、朝の湖西は雪が降るほど冷え込んでいた。琵琶湖大橋を渡り、長命寺川沿いに車で遡上していくと…突然、対岸にズラーっと釣り人が並んで竿を出している異様な光景が目に入ってきた。お祭り騒ぎのようなその場所はスルーして、そこから少し離れた待ち合わせ場所に行くと、Sさん以外誰もいなかった。さすがである。

Sさん「望月さん、初めまして。やっと会えましたね。この場所は静かでいいですよ。去年は100匹以上釣ったこともあります」

20年来の挨拶はほどほどに、まずは釣りの準備である。語り部はバスロッドとメバルロッドに仕掛けをセットし、ロッドを三脚に立てる。エサは赤虫だが、付け方にコツがあるらしい。

Sさん「赤虫は頭の先端に針を刺す。適当につけるとすぐに体液が抜けてしまい、釣れなくなる。初心者にありがちなミスです」

言われたようにエサを付け、適当に川の沖へとキャスティングで投入する。ホンモロコ釣りというと昔は延べ竿での浮き釣りだけだったが、今は延べ竿とリール竿が併存している。

Sさん「延べ竿でやっている人も多いけど、釣ることだけを考えたらリール竿の方が絶対に有利。メリットは仕掛けを飛ばせて遠くが探れることと、風が吹いたときも強いです。オモリを重くすればそんなに糸も流されない」

語り部はリール竿を2本出しているが、Sさんは4本。やっぱり多い方がその分よく釣れますか?

Sさん「竿を何本か出すのは単純に確率を上げるだけでなく、仕掛けを投げる遠さを変えている。それで当たる距離を測っているんです」

釣りを始めてすぐに、Sさんが1匹キャッチ。すぐに語り部の竿のティップがプルプルプル…と動き、軽く巻くと掛かっていた。小気味のいい引きが楽しめる。釣れたのは10cmほどの抱卵したメス。

Sさん「それくらいのメスが一番美味しいですよ」

語り部が使用する仕掛け。カツイチのザ・琵琶湖シリーズは2セット入ってお得。フックがキラキラ光るので濁りに強いという説がある。がまかつの仕掛けはハリの強度が高くフッキングも良好。オモリは風や流れの強さで1.5号と2号を使い分ける。 ©望月俊典

竿先に出る一瞬のアタリも見逃してはならない。意外に気の抜けない釣りである。 ©望月俊典

語り部のファーストホンモロコ。仕掛けの上の方を食っているようだ。 ©望月俊典

派手さはないものの、日本の淡水魚らしい淡い美しさがある。 ©望月俊典

赤虫の体液で、ホンモロコの在不在を判断

わりと頻繁にアタリはあるのだが、合わせたり巻いたりしてもホンモロコが掛かっていることは少ない。

Sさん「アタリがあってそのまま待っていると2本、3本掛かってくることもある。ゆっくり巻いていると追い食いしてくることもある。完全に向こう合わせの釣りです」

仕掛けの問題なのか、活性の問題なのかは謎だが、合わせるよりも巻いた方が掛かる確率が高いように思う。釣れたホンモロコを嗅いでみると、コイ科の魚にしては極めて臭いが少ないことに気づく。

その後も飽きない程度にアタリが続いた。ワカサギもそうなのだが、数を釣ろうとする場合、エサの交換を面倒くさがらず、フレッシュさ維持することが基本中の基本だ。

Sさん「そこに魚がいるかいないか、赤虫の体液が抜けていることで判断ができます。抜けていればアタリとして現れなくてもホンモロコに啄まれていると思われ、赤いままだとそこにはホンモロコがいない可能性が高い」

そんなハウツーを伝授していただきながら、日が暮れるまでドラード釣りや南米の話をしていた。確かに座っているのは長命寺川だが、目の前に広がっていた光景はパラナ川やイベラ湿原だった…ような気もする。Sさんはほとんど竿を見ずに夢中で話していたので、なぜか初心者の語り部の方がちょっと多く釣っていたりもした。

Sさんの3連発ヒット。狙ってできるようになればホンモロコの免許皆伝。 ©望月俊典

語り部も2連発! なんとなくコツを掴んできた。 ©望月俊典

赤虫は黒い頭の部分に内側からハリを掛けるのが肝要。これなら赤い体液がすぐになくならない。 ©望月俊典

体液が抜けた赤虫。竿やウキにアタリが出なくても、モロコに啄まれた可能性が高い。 ©望月俊典

Sさんのモロコ仕掛けにヒットしたナマズ。ファイト中にモロコを2匹吐き出した。このあと蒲焼になった。 ©望月俊典

語り部の釣果、ホンモロコ38匹。タンクに入れてエアレーションしながら持ち帰った。 ©望月俊典

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食べるまでがホンモロコ釣り。高級魚の実力とは!?

釣ったホンモロコはポリタンクに入れて持ち帰り、2~3日の間エアレーションをした綺麗な水で生かし、氷締め。それを炭火で素焼きにして食べてみることにした。この食べ方が一番美味いらしい。

炭火でじわじわ焼いていると、香ばしい匂いが立ち上がり、食欲を刺激された。片面ずつ焼いたら、最後は網の目に頭から刺して仕上げとなる。この焼き方だとホンモロコの油が頭まで滴り美味しくなる…らしい。

これを酢味噌と生姜醤油で食べてみた。

…う、美味い! 想像していたよりもずっと美味である。身は香ばしく、甘みのある脂が乗っている。内臓の程よい苦味がアクセントになり、噛むほどに大人の味へと調和される。じっくりと炭火で焼いたせいか小骨も気にならない。

琵琶湖のコアユやワカサギも美味いが、それとは違う、ずっしりとした重い味わいがホンモロコにはあるのだ。前者が明るくわかりやすいハリウッド映画だとしたら、後者は陰鬱で芸術性の高い昔のフランス映画のような味わい…と言ったら伝わるだろうか?

またすぐにでもホンモロコを釣りに行きたい(否、行った)。

2~3日綺麗な水で生かしてから氷締めにした。生かさずに釣った日に食べてももちろんOK。 ©望月俊典

銀ピカのホンモロコ。締めたあとは塩で洗ってヌメリを取る。 ©望月俊典

炭火で両面をじっくり焼いていく。卵が多い個体はお腹が破れることもある。 ©望月俊典

両面焼いたら仕上げは網の目に頭を刺して逆立ち焼き。ちょっと網目が大きいか…。 ©望月俊典

焼き上がったホンモロコ。ちょっと頭がコゲてしまったが…。これを生姜醤油、酢味噌でいただいた。 ©望月俊典

お腹にたっぷりと卵が入っているメス。これも甘くて美味しい。コイ科特有の胸を突くようなあの臭みはほぼない。 ©望月俊典

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