王者ランクル「ライバル四駆」はなぜ「消えた」!? 海外には「日産“本格”SUV」あるのに? 最上級SUV「サファリ」復活の可能性はないのか

日産は、本格的な走破性を誇る四輪駆動の大型SUVを海外向けに販売しています。国内にも導入すれば、根強い人気を誇るトヨタ「ランドクルーザー」にも対抗できそうですが、なぜできないのでしょうか。その理由を考察します。

「ランクル」納期の長期化! 本格四駆を持つ日産にも「チャンス」あり!?

 2024年1月29日、トヨタが誇る大型本格クロカンSUV「ランドクルーザー(ランクル)」のディーゼルモデルが、エンジンの認証試験での不正発覚により一時出荷停止となりました。
 
 ランクルは世界中で人気があり、日本においても長い納車待ちが続きますが、国産メーカーのラインアップにはそれに代わるモデルがなく、今も市場を独占中です。
 
 しかし日産は同クラスの本格四駆を海外向けに販売しており、国内で対抗することも可能なはずですが、日本に導入されることはないのでしょうか。

 サファリは、いまから70年以上もまえの1951年、警察予備隊に三菱ジープが採用された際に競争入札に加わっていた「パトロール」に端を発します。

 この入札にはランクル(当時は「ジープBJ型」と呼ばれていた)も加わっており、どちらも入札に敗れた後、民間用として販売された経緯をもっています。

 1980年に登場した3代目パトロールは、堅牢なラダーフレームとパートタイム式4WDを装備した本格オフローダーの世界戦略車として大きく進化を遂げ、ランクルと共に世界で人気を獲得していきます。

 その際、日本向けモデルには「サファリ」のネーミングが与えられ、イメージも一新させました。

 日本市場で販売していたのは1997年に登場した5代目(サファリとしては3代目)まで。クロスオーバータイプのSUVへとトレンドが移り変わったことで販売が低迷し、2007年に国内販売が終了となりました。

 しかし海外ではパトロールの名で中東を中心に販売を継続しており、現地では今でもランクルとライバル関係にあります。

 2010年に発表された現行型(6代目)パトロールは、最大8人乗り・3列シートレイアウトの本格クロカンSUVとして、オフロード性能や耐久性能が高く追求されたモデルです。

 全長5メートルを越え、全幅も2メートル弱、大排気量の5.6リットルV型8気筒自然吸気エンジンを搭載しています。

 この6代目パトロールは、2016年から北米で「アルマーダ」としても販売されており、さらに日産の高級ブランドであるインフィニティの「QX80」とも兄弟車となります。

 パトロールは、2020年にビッグマイナーチェンジが実施されており、ボクシーなボディシェイプはそのままに、ヘッドライトやグリルといったディテールを刷新し、新世代の日産デザインが取り入れられました。

 2021年3月には日産の中東法人が「パトロールNISMO 2021年モデル」をデジタルワールドプレミア。スポーティな仕立てに「かっこいい」と日本でも話題となりました。

 冒頭でも触れたように、今回のランクルの出荷停止は、長い納車待ちをしている人たちにとっては辛いこと。この状況下にもし、ランクルとライバルだった日産「サファリ」が日本復活となれば「飛ぶように売れる」のではとも考えられます。

 しかもパトロールは現在、世界向けのモデルを全て日産の九州工場のみで製造しています。

 であれば「日本でもちょっとくらい販売しても良いのでは」と思えますが、実際にはなかなか難しいようです。

 なぜでしょうか。

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海外向け「ニッサン本格四駆」を国内に再導入しない2つの理由とは

 日産がパトロール(サファリ)を再導入しない理由は、大きく分けて2つ考えられます。

 ひとつは、このような本格的な大型クロカンは、日本ではビジネスにならないこと。

 国内におけるランクルの人気は、海外からの需要が大いに関係しており、自動車メーカーとしてビジネスが成立させることができるほどの市場規模ではないようです。

 輸出事情にも詳しい中古車買い取り店の担当者は、次のように話します。

「海外向けのランクルは、日本にあるような高級グレードが販売されていなかったり、価格も現地で新車を買おうとすると異常に高く、そしてそもそも新モデルが導入されるのが遅かったりします。

 そこで中東などのクルマ好きな富豪たちは、自国で手に入らないクルマを、お金をいくらでもつぎ込んで海外から求めます。

 こうした動きが新車、中古車問わず需要を底上げし、日本でのランクルの異常な人気ぶりにつながっているのです」

 日産が本格四輪駆動車を導入しないもうひとつの理由は、パワートレインの問題です。

 昨今の日産の新型車は、ほとんどがBEV(バッテリーEV:電気自動車)、もしくはハイブリッド車「e-POWER」搭載モデルです。

 今の日産の企業方針を考えると、前時代的な大排気量のガソリン車で、しかもリッターあたり6kmから7kmという「極悪燃費」の現行型パトロールを日本市場へ「ポン」と出すことは、残念ながらまず考えられません。

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 しかし、ミッドクラスSUV「エクストレイル」に搭載されている「VCターボ+e-POWER」などのハイブリッドユニットを搭載できれば、日産が目指す電動化戦略にも沿うと考えられ、日本市場復活となる可能性もなくはないと思われます。

 現在、日産の国内SUVラインアップは、エクストレイルとコンパクトクラスの「キックス」のみという寂しい状況。

 大型のフラッグシップSUVとしてサファリを復活させ、市場を独占するランクルに一矢報いるという「チャレンジ」も見てみたいところです。