おそらく最後のフラッグシップ…だからこそ忘れてはいけない

1989年の発売時には高い評価を受け、全体的な佇まいはよくバランスが取れていたアプローズ(画像は1992年にマイナーチェンジした中期型)
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名車というほどでもないけど、忘れてはいけないクルマがある…そんなクルマの中から今回は「プレイバック90’」として、ダイハツの「アプローズ」を紹介しましょう。

一見4ドアセダン、実はリアウィンドウ周りごとトランクリッドが大きく開く5ドアハッチバックセダンというユニークなクルマで、1969年に「コンパーノ ベルリーナ」の生産を終えたダイハツが20年ぶりに発売した、自社オリジナルのフラッグシップ・セダンでした。

そして、トヨタの完全子会社としてトヨタグループの軽自動車とそれをベースにしたコンパクトカー、新興国向け低価格車部門となったダイハツにとっては、おそらく最後のフラッグシップ・セダンでもあります。

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カローラの仕立て直しじゃない!20年ぶり、念願のオリジナル

発売当初の初期型はこんなフロントマスクで、1.6リッター級セダンとして非常に個性的、意識高い系とさえ感じられた
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1989年7月、既にトヨタ傘下となって久しく、軽自動車メーカーとしてすっかり定着したダイハツ工業から、1台の新型セダン「アプローズ」が発売されました。

かつて1960年代には独自開発の小型車「コンパーノ」で四輪乗用車市場へ参入し、ライトバンやピックアップトラックといった商用モデルばかりでなく、セダンの「ベルリーナ」、オープンスポーツの「スパイダー」もラインナップしていたのです。

しかしダイハツの本業は戦前からオート三輪の名門メーカーとして鳴らした商用車であり、旧態依然として重量もかさむラダーフレーム構造の乗用車は期待通りに売れたとは言えません。

1967年には軽自動車の将来性や下請け工場としての生産能力を期待したトヨタの傘下入りし、1969年にコンパーノの生産を終えて以降は、2代目パブリカ/パブリカスターレットのダイハツ版「コンソルテ」が後継車となります。

1977年には画期的なFFリッターカー「シャレード」も発売しますが、ダイハツにはまず軽自動車やリッターカーで足場を作ってもらいたいトヨタの意向もあり、フラッグシップセダンはカローラをベースにオリジナルボディを載せた「シャルマン」が限度でした。

しかしコンパーノ生産終了から20年を経て、ようやくプラットフォームからエンジンなど全てダイハツオリジナルのフラッグシップセダンを発売できたのです…ダイハツとしてはまさに「念願が叶った!」と歓喜した瞬間だったでしょう。

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