1984年に登場した国産初のミッドシップスポーツ、初代MR2

高価なスーパーカーのものだと思われていたミッドシップ・スポーツがFF大衆車のパワートレーン流用で実現可能となり、1984年に国産車で初登場となったのが初代MR2

スポーツカーを好むクルマ好きにとっての後輪駆動、とりわけエンジンを前後輪間の重心近くに置いた「ミッドシップ」車は特別な存在です。

フロントエンジン車に比べ、実用性を制約してでもスポーツ性を優先したエンジン配置と、リアエンジン車ほどではないにせよトラクション性能に優れ、重量物を前後重心近くに集めたため旋回性能に優れたミッドシップ・スポーツは、一度は乗ってみたい存在でしょう。

MOBY編集部がAIに聞いた、「30~50代のクルマ好きが興味を持つ名車」にも当然ノミネートされる1台、1984年に発売された国産初のミッドシップスポーツ、トヨタAW10/11型・初代「MR2」を今回は紹介します。

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大衆車のFF化が可能にした「安価なミッドシップスポーツ」

1983年の東京モーターショーに展示された初代MR2の先行試作的なコンセプトカー、SV-3

F1などレーシングカーでは1950年代から本格的に普及し、1960年代にはルネ・ボネ ジェットの登場で市販車でも採用され始めた、エンジンのミッドシップ配置。

後輪駆動車のトラクションと操縦安定性、旋回性能などのバランスが取れてレーシングカーには最適ではあったものの、本来なら人間や荷物を載せるのに最適な場所をエンジンが占めるため量産乗用車には採用しにくく、高価なスポーツカーに限られていました。

しかし大衆車の多くがフロントエンジン・前輪駆動のFFレイアウトを採用し始めると状況は変わり、コンパクトにまとめられたフロントアクスルをドライバー後方へそのまま移設するという手法で、安価にミッドシップスポーツを実現可能になったのです。

小型大衆車がベースなので必然的にコンパクトな2シータースポーツとなり、実用性で劣ることは変わらないものの、パワートレーンを含む多くの部品を安価で収められましたから、庶民でも休日を楽しむセカンドカーや、安価な若者向けスポーツカーとして歓迎されます。

その先駆けとなったのが1972年に登場したフィアット X1/9であり、国産車で初となったのが1984年に発売された、トヨタの初代MR2でした。

「MR2」のMRはミッドシップ・レーシングではなく、あまり派手な車名やキャッチコピーでは運輸省の認可にも差し支えが出る時代でしたから、「ミッドシップ・ランナバウト(小型2シータースポーツ)」の略です。