バカにできないぞ戦闘機版「軽自動車」 ポーランド“爆買い”韓国製FA-50の実力 食われる“小型”戦闘機

ポーランドが韓国から“爆買い”したFA-50戦闘機が初飛行。もともと練習機ベースの「軽」戦闘機ですが、装備が充実した「軽」が「小型」戦闘機を食う――日本の自動車市場に似たことが世界の戦闘機市場で起こっています。

韓国製FA-50初飛行 まだまだ強くなる?

 2023年8月15日、韓国のKAI(Korea Aerospace Industrie)からポーランドへ輸出されたFA-50軽戦闘機の初号機と2号機が、ポーランド国内での初飛行を行いました。ポーランドによる韓国兵器の“爆買い”ともいえる大型の調達契約から、1年をまたずヨーロッパの空に飛びました。

 FA-50は韓国のKAIがロッキード・マーチンから技術支援を受けて開発した超音速練習機T-50の「軽」戦闘/攻撃機型です。ポーランド政府は2022年7月に48機のFA-50調達を決定。KAIは同年9月19日にポーランド政府との間で輸出契約を締結しています。なお、ポーランドはFA-50とともに、K2戦車およそ1000両、K9自走榴弾砲およそ650両も韓国から調達します。

 今回ポーランド国内で初飛行を行ったFA-50は、韓国空軍などが運用しているFA-50とほぼ同じ仕様で、「FA-50GF」という名称が与えられています。ポーランドが導入する48機のFA-50のうち12機はFA-50GFで、この12機は2023年中の納入が予定されています。

 2028年までに納入される予定の残る36機は、2021年にソウル近郊の城南市で開催された防衛装備展示会「ADEX2021」で開発計画が明らかにされた「FA-50ブロック20」にポーランド空軍の要求を反映した改良を加えた「FA-50PL」として納入される予定となっています。

 そのベースとなるFA-50ブロック20は、容量300ガロンのコンフォーマルタンク、新型の多機能火器管制レーダー、電子戦システム、ヘルメット内蔵式表示・照準装置、新型の戦術データリンクシステムの追加といった改良が盛り込まれています。

 また、発射後に自機のレーダー波を使用する誘導を必要としない中射程空対空ミサイルや中距離空対地ミサイル、目標追跡・照準ポッド「スナイパー」の統合などの改良も計画されています。

 FA-50ブロック20は飛行性能や航続距離こそおよびませんが、搭載を予定している電子装置の能力や使用できる兵装の種類の多さでは、本格的な戦闘機に引けを取らないレベルに達しています。

(広告の後にも続きます)

「あれもこれも付けられますよ!」だから評価される「軽」

 戦闘機において核となる中射程空対空ミサイルと高性能レーダーの組み合わせという点でも、FA-50ブロック20はさらに進化することが見込まれています。

 韓国企業のLIGネクスワンはFA-50ブロック20への搭載を想定した、探知距離が長く多くの目標に対応できるAESAレーダー(アクティブフェーズドアレイレーダー)の開発を進めていますが、アメリカ政府は2022年9月にレイセオン・テクノロジーズが開発した小型AESAレーダー「ファントム・ストライク」のFA-50ブロック20への統合を承認しています。

 同社はファントム・ストライクの性能について、F-16戦闘機の最新仕様F-16Vに搭載されているAPG-83に匹敵し、価格は半分以下に抑えられるとの見通しを示しています。

 またアメリカ政府は同時に自由主義陣営諸国の戦闘機に搭載される標準的な中射程空対空ミサイルAIM-120C「AMRAAM」の最新仕様であるAIM-120C7のFA-50ブロック20への統合も許可しています。

 こうして、性能と信頼性で評価が高いアメリカ製のAESAレーダーと中射程空対空ミサイルの統合が可能となったことで、FA-50ブロック20の市場での評価は高騰しました。

 前に述べたようにFA-50PLのベース機に採用されたほか、2023年2月にはマレーシアにもFA-50Mとして18機が採用されています。FA-50PLとFA-50Mは装備する電子装置や統合される兵装に若干差異が生じるものと思われますが、ポーランド、マレーシア両空軍の要求により空中給油の受油装置が追加されます。