効率や扱いやすさの対極にあるものほど、趣味は楽しい

ポルシェ911Sタルガ(左・901型)・ポルシェ911ターボ3.0(右・930型)

長い歴史を誇るクルマ特有のドラマはさておき、新しくなるほど大排気量でパワフル、熱問題は厳しいですし、ドライサンプ方式で空冷というより油冷といった方がいいほど大量に使い、しかも消耗していくエンジンオイルはやたら漏れます。

930以前ならパワステもオートマもなく、車内は狭いですし、ドアの開け閉めひとつとっても重厚感はあるものの愛想はない…こんなクルマの何がいいの?と思う人は少なくないでしょうし、それは間違いでもありません。

しかし、同じ目線に立つのは失礼かもしれませんが、機械式キャブレターにポイント式点火のSOHC2バルブエンジンを搭載した、550cc旧々規格の軽自動車に乗る筆者には、空冷ポルシェの心地よさ、魅力が少しわかるような気もします。

「人間に運転させる」のではなく、「人間が運転しなければならない」自動車は本質的に異なるという意味で、空冷ポルシェ911も、古い軽自動車も何ら変わりはないと思うからです。

要するにクルマとの対話を、あるいはクルマを通した路面や空気との対話を楽しむクルマであり、未だ存在が許されることに感謝しつつ乗るという、実用車というより芸術品、工芸品に接するような気持ちが、このテのクルマにはあります。

そういう意味で、「強制空冷エンジンだから」という点にはそう深い意味はなく、仮に911が初代901型から水冷だったとしても、きっと同じような気持ちを抱いたことでしょう。

だから、「空冷の何がいいんだ」という先入観を先に抱いてしまうと、その先で見えてくるはずの大事な事を見落とすかもしれません。

要するに「趣味とは無駄が多いほど楽しい」ものであり、空冷911はその楽しさを存分に味あわせてくれるクルマなのだ、ということなのです。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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