「弘前ねぷたまつり」が、2022年に300年目という節目を迎えます。そんな記念すべき今年は「弘前ねぷた300年祭」が開催される予定。祭りにかかわりの深い方へのインタビューを通して、その魅力に迫ります。この機会に、知っているようで知らない「ねぷた」についての理解を深め、ぜひ現地で体験してください。

【概要】300年の節目! 弘前ねぷたまつりに津軽の魂を感じて

今年300年の節目となる「弘前ねぷたまつり」。毎年8月1日~7日に開催され、三国志や水滸伝などの武者絵などを題材とした大小約80台の勇壮華麗なねぷた(山車)が、城下町であった弘前市を練り歩く夏まつりです。

2022年 弘前ねぷたまつり

開催期間:2022年8月1日(月)~8月7日(日)
8月1~4日:土手町コース 19:00~
8月5~6日:駅前コース 19:00~
8月7日:土手町コース 10:00~(午前中のみ)web:https://www.hirosaki-kanko.or.jp/edit.html?id=cat02_summer_neputa

弘前ねぷた300年祭

開催期間:2022年8月27日(土)~28日(日)
27日(土):夜運行
28日(日):昼運行web:https://www.hirosaki-kanko.or.jp/edit.html?id=neputa300

ねぷたの種類は巨大な扇型の「扇ねぷた」と、立体的な人形の形をした「組ねぷた」の2種類。中には最大9メートルに及ぶ大型のねぷたもあります。正面の「鏡絵」に描かれるのは勇壮な武者絵、背面の「見送り絵」は妖艶な美女の絵となっており、表裏の対比も魅力のひとつです。

初めて「ねぷた」についての記録が記されたのは今からちょうど300年前の1722年。津軽五代藩主・津軽信寿(つがる のぶひさ)がねぷたを高覧したという記述が弘前藩庁御国日記に残されています。

「ねぷた」の起源については諸説ありますが、その昔、夏の農作業が眠気でおろそかにならないようにと農民が行った、眠気を灯篭と一緒に流す行事「ねぶり流し」が元になったというのが一説です。

「ねぷた」の呼称は津軽弁の「ねぷて(眠たい)」からきているとされ、青森市で「ねぶた」と呼ぶのは訛りの違いだといわれています。

津軽は江戸時代に弘前藩が治めていた場所で、今の弘前市、五所川原市、青森市を含む広大な所領でした。藩のお膝元でその居城があった弘前の文化は津軽文化のルーツといわれています。

津軽の気候は、夏は短く冬は長いのが特徴。ねぷたを心の支えに長く厳しい冬を耐える、そういう感情が今もなお津軽の人の心にあるからこそ「ねぷた」にかける思いも強いのです。

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【インタビュー】弘前ねぷたまつりの魅力

弘前ねぷたまつりの魅力は、津軽人の熱い心意気に触れてこそ伝わるもの。そこで、まつりに対して並々ならぬ想い入れがあるお二人に、話を聞きました。

弘前ねぷたと津軽の文化を次世代につなぐために
檜山和大さんインタビュー

津軽藩ねぷた村 助役・檜山和大さん
高校卒業時、大好きなねぷたを仕事にしたいという強い思いを持ち「津軽藩ねぷた村」へ就職。以来31年、現在も精力的にねぷたの楽しさや文化を多くの人に伝えている。青森県伝統工芸士。弘前マイスター認定者。

檜山さん「今回は実に3年ぶりの開催なので、多くの人たちに見てほしいです。弘前ねぷたをもっと楽しむために、まつりの前にぜひ当館を見学してください!」

檜山さんが勤める「津軽藩ねぷた村」は、ねぷた囃子や津軽三味線の生演奏、金魚ねぷたの絵付けなどの民芸品体験ができるほか、津軽地方独特の作庭法で作られた日本庭園や300年前の藩の米蔵を利用した施設があるなど、津軽の魅力をまるごと体験できる場所です。

檜山さん「当館はただ展示物を見てもらうだけの施設ではなく、スタッフによるねぷたの解説や、お囃子の演奏などを通して、お客さまにまつりの雰囲気を楽しんでもらいながら、ねぷたの歴史・文化を知ってもらうという目的があります」

まつりを盛り上げる要素のひとつが、太鼓。ずっと同じ調子で叩かれる太鼓の音に「ヤーヤドー」の掛け声が混ざり合い、迫力ある瞬間を生み出します。

檜山さん「ねぷた村ではお囃子の実演の後に太鼓叩きが体験できるんです。長いバチで大きな太鼓を鳴らす感動と、囃子(演奏者)になった気分を味わえますよ」

檜山さん「300年の節目の年に立ち会えることは私たち自身も運がいいと思っていますし、この300年祭を次の400年につなげていくため、弘前の文化や歴史を残していくことの責任を感じています。この機会に弘前へ遊びに来ていただいて、ねぷたとそのルーツを感じ取ってもらえればうれしいです」

ねぷたが好きだからずっと関わりたいという思いで同館に就職された檜山さん。ねぷたはもちろん、津軽文化への情熱もひとしお。現在は、金魚ねぷたの青森県伝統工芸士という肩書きも持っています。津軽の文化を紡ぐ一員として、次世代へ文化をつないでいきたいという思いの強さを感じました。

渾身の組みねぷたは、ねぷた馬鹿の心意気!
川嶋史隆さんインタビュー

弘前ねぷた 盟友會 会長 川嶋史隆さん
幼少の頃に初めてねぷたまつりに参加してから、ねぷたが身近にあることが当たり前の生活を送る。以来、さまざまなねぷた団体で経験を積み22年前、自身のねぷた団体である「盟友會」を立ち上げる。弘前ねぷた参加団体協議会理事。

川嶋さん「ねぷたまつりの見どころはずばり『隊列』です。灯篭、ねぷた本体、お囃子隊などから構成される隊列は、実は団体ごとに少しずつ違っているんです。よく聞くと太鼓のリズムにも違いがあります。そういう部分に注目すれば飽きることなくまつりを楽しめますよ」

ねぷた団体「盟友會」の川嶋さん。現在、ねぷた団体は80ほどあり、古い所だと40年続けられている団体もあるそうです。盟友會は今年結成22年目を迎えます。「ねぷたを愛する“ねぷた馬鹿”たちと夏を迎えるのが何より楽しい」と語ってくれました。

川嶋さん「300年祭の年でもあるので、初心に返って、昔よく題材として選ばれていた平維茂(たいらの これもち)が鬼女・紅葉(もみじ)と戦い討ち取る「紅葉伝説」を題材に選びました」

扇ねぷたが主流になった今、盟友会は組ねぷた(人形型)にこだわっています。体のパーツやその動作、顔の表情など、一つひとつ試行錯誤をしながら作り上げているそうです。

川嶋さん「扇ねぷたが多くなると、まつりの様子が『金太郎飴』みたいだと形容されることがありますが、人形型の山車はまた一味違う見ごたえがありますよ! ぜひご覧いただきたいですね!」

川嶋さん「青森にはさまざまな夏まつりがありますが、弘前のねぷたは武士が静かに出陣するようなイメージがあって、他とは趣の異なる情緒が味わえます。色とりどりの山車が、それぞれの隊列で流れてくる様子は、ただ見ているだけでも感動できると思います」

「ねぷたは私の人生そのもの」と語る川嶋さん。そのねぷた愛とこだわりが惜しみなく注がれた盟友會の組ねぷたにもぜひ注目ください。