空自のブルドーザー部隊? 空飛ばない「航空施設隊」とは ミサイルきたら大忙し

航空自衛隊には、飛行機を飛ばしたり、レーダー画面を見続けたりする隊員だけでなく、飛行場やレーダーサイトの復旧を担う土木作業のプロたちも存在します。彼らの役割と、意外な任務について話を聞いてきました。

空自なのに緑色の重機がズラリ

 航空自衛隊には、飛行機やヘリコプターといった航空機を一切保有せず、ブルドーザーやホイールローダーといった重機がメイン装備という、ある意味「らしくない」部隊が存在します。それが航空施設隊です。

 役割は「基地機能を維持、復旧」すること。航空自衛隊は、たとえば領空侵犯のおそれがあれば戦闘機配備基地からF-15やF-2、といった戦闘機を緊急発進(スクランブル)させ、国籍不明機の動向に対処させます。このような対領空侵犯措置任務も、レーダーサイトや防空指令所、航空基地(飛行場)が機能しているからこそ滞りなく行えるわけですが、その維持や復旧が航空施設隊の仕事です。

 同様の部隊は陸上自衛隊にも編成されていますが、どのように違うのか、今回は入間基地に所在する中部航空施設隊を訪問し話を聞きました。

 そもそも、航空自衛隊は全国を4つのエリアに分け、北から北部、中部、西部、南西の各航空方面隊を配置しています。航空施設隊は、この4つある航空方面隊に1つずつ編成されており、なかでも首都圏を含む本州の中央部分、1都2府30県にまたがる広い範囲を担当する中部航空方面隊の隷下部隊として設けられているのが中部航空施設隊になります。

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あっという間に大穴が消えた!

 中部航空施設隊は、隊本部のほかに第1、第2、第3の3個作業隊からなり、隊本部と第1作業隊が入間基地(埼玉県)に、第2作業隊は小松基地(石川県)、第3作業隊は百里基地(茨城県)に所在します。

 陸上自衛隊の施設科部隊と何が違うのか聞いたところ、陸上自衛隊の施設科部隊は基本的に駐屯地の外に出て陣地構築や障害処理、架橋などといった施設作業を行うのに対して、航空自衛隊の施設隊は基地機能の維持管理が任務のため、基地の中にある施設の復旧や構築を担うそうです。簡単にいうと、駐屯地の外で作業するか、基地の中で作業するかの違いだということでした。

 今回、取材したのは、入間基地の一角に設けられた訓練場での被害復旧訓練の様子。爆弾の直撃を受け被害を受けた滑走路を復旧させるという想定で、事前に造られた大穴を、各種重機で埋め戻し、固めるということを行っていました。

 訓練場にはブルドーザーやホイールローダー、油圧ショベルのほか、モーターグレーダーやロードローラー、ダンプトラックの姿が。これらが同時並行で作業することで、あっという間に瓦礫を撤去し、穴を埋め、踏み固めてしまいました。

 なお本来は、ロードローラーで踏み固めた後、表面にアルミニウム合金製マットやグラスファイバー製マットを敷いて、航空機の離着陸に耐えられるようにするとのこと。今回はそこまでせず、ロードローラーで踏み固めて終了でしたが、大穴の周りをせわしなく各車両が行き交っているあいだに穴がなくなったといった感じでした。