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Saucy Dog、自身最大規模のアリーナツアー!2DAYS完売の横浜・Kアリーナ、セミファイナルをレポート

DI:GA ONLINE

Saucy Dog It Re:ARENA TOUR
2024年3月30日(土)31日(日) Kアリーナ横浜

2023年11月18日(土)長野ビッグハットを皮切りに、大阪・広島・宮城・愛知・福岡・徳島・北海道を回った、Saucy Dogの7作目のミニアルバム『バットリアリー』のリリースを携えて、ツアー『Saucy Dog It Re:ARENA TOUR』が、2024年3月30日(土)・31日(日)、Kアリーナ横浜2デイズでファイナルを迎えた。以下、その30日の方のレポをお送りする。

仕事帰りに会社のみんなと飲みに行った若い女性が、渋谷の東急プラザの裏あたりの居酒屋を出る──というところから、ドラマ仕立てのオープニング映像が始まる。
なお、開演前のBGMの代わりに、飲み屋の店内のようなザワザワした物音が流れていたのだが、それがこの映像と地続きになっていたことが、始まると同時にわかる、という仕掛けである。
店を出た彼女は、会社のみんなと別れ、渋谷駅の歩行者デッキを歩き、電車に乗り、最寄り駅で下りる。家へ向かう途中でエアポッズを耳に入れ、音楽を聴き始める。途中、彼氏からかかってきた電話に出て話したりしながら、部屋に帰り着き、ドアをバタンと閉めると同時に、1曲目の「魔法にかけられて」のイントロが鳴る──という始まり方だった。

『バットリアリー』収録曲は、全7曲のうち「紫苑」を除く6曲が演奏された。
ツアー中の2月28日に配信リリースされた、新曲「この長い旅の中で」は、アンコールの1曲目で披露される。映画『52ヘルツのクジラたち』の主題歌として書き下ろされた曲であり、そのストーリーに添った歌詞になっている曲だが、ほぼ半年、年をまたいで全国9ヵ所・15公演を回った、このアリーナ・ツアーのことを表しているようにも思える。
4曲目「優しさに溢れた世界で」の曲中で、「学校がんばってる人! 家事育児がんばってる人! 仕事がんばってる人! 生きるのがんばってる人!」と叫んだ石原慎也に応えるように湧き上がったオーディエンスのシンガロングは、その後、14曲目の「現在を生きるのだ。」や、16曲目の「雷に打たれて」などで、何度も響いた。
逆に、「シンデレラボーイ」「コンタクトケース」「魔法が解けたら」と、バラード寄りの楽曲が並んだ7〜9曲目のブロックは、20000人が声を発することなく、じっと歌に耳を傾けていた。

石原慎也 秋澤和貴

中盤のアコースティック・コーナーは、せとゆいかがピアノを弾きつつ歌う「へっぽこまん」、せとゆいかのボーカルに石原慎也がハモリをつける「星になっても」(『バットリアリー』のCDのみで聴けるボーナストラック曲。せとゆいか、「今いちばん大事にしている曲」と紹介)、石原慎也が歌い、せとゆいかがカホンを叩いた「届かない」の3曲(10〜12曲目)。
そして、石原慎也とせとゆいかのツインボーカル曲「リスポーン」から、通常のバンド編成に戻る。

せとゆいか 石原慎也

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秋澤和貴のベース・ソロから始まった16曲目「雷に打たれて」では、雲の中で光ったり、夜空を縦横無尽に走ったりする、リアルな雷の映像が巨大画面に広がった。
自分たちの音楽が、あなたにとってどういうものでありたいかを伝えた、石原慎也のMCを経て始まった本編ラストの「怪物たちよ」は、歌詞のひとつひとつが、まさにその言葉を裏付けるように、真摯に、かつエモーショナルに響いた。

秋澤和貴 石原慎也 せとゆいか

アンコールでは、4月5日に配信リリースされた新曲「poi」(NHKアニメ『烏は主を選ばない』オープニングテーマ)を、咄嗟にワンコーラスだけやってみせる、というサプライズもあり。
最後の曲である「グッバイ」は、オーディエンスによる、この日最大のシンガロングで終わった。
石原慎也は、「めちゃめちゃ楽しかった!」と叫び、「楽しかった人ー!!」と、オーディエンスに問いかけた。そして「夢見るスーパーマン」が流れる中、3人で丁寧にオーディエンスに挨拶し、感謝を伝えてから、ステージを下りた。

過去のSaucy Dogのアリーナや大ホールでのライブは、8人のストリングスが加わったり、4人のストリングスとキーボードがサポートしたり、というスペシャルな編成で演奏される楽曲があったが、今回は中盤から後半にかけて、サポート・ギタリストの作田泰地が加わったのみ。それも、登場以降の全曲ではなく、曲によって、参加したりしなかったりする。

背景はビル街と空(夜景になったり夕刻になったりする)→曲によって後方の壁フルサイズの巨大画面に切り替わる、というステージセットも、VJ的な効果映像や照明などの演出も、とても効果的に作られていたが、これまでのSaucy Dogの大会場ライブと比較すると、やや抑えめにプランニングされているように感じた。

もちろん、ステージ上の3人の姿を、ステージ左右と後方の大画面に大映しにする曲も、何曲もあったし、画面いっぱいに星空が広がって流れ星も見えるという演出もあったが、逆にまったく画面を使わない曲もある。

そういえばオープニング映像も、以前のツアーでは、CGを駆使した幻想的な内容だったりしたが、今回は前述のように、リアルで日常的なものだった。
普通の生活を送る普通の人の日常にSaucy Dogの音楽が存在している、つまり、今ここに集まっている20000人と同じ人が主人公である、という。
そんな演出のしかたや、ライブのやりかたも含めて、今回のツアーは、自分たちの出発点を確認するようなものだったのかもしれない。

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