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ヒゲダン 藤原聡、BUCK-TICK 櫻井敦司、Nulbarich JQ……ドラマーから転身した類稀なボーカリスト

Real Sound

Official髭男dism 公式YouTubeより

 バンドにとってボーカリストは、いわば“顔”であり、歌声がそのままバンドのシンボルになることも多い。例えば、コンビニや街中で流れてくる楽曲に対して、ボーカルの歌声で「あぁ、あのアーティストだ」と認識する人も多いのではないだろうか。

 ボーカリストの中には、他のパートから転身して歌うようになったというアーティストもいる。「他に歌う人がいなかったから」「歌ってみたら“声がいいから歌え”と言われた」など、その経緯は様々だ。本稿では、意外と知られていない“もともとはドラマーだったボーカリスト”をピックアップし、そのリズム感や歌声について掘り下げていきたい。

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Official髭男dism 藤原聡

 まずは、今や曲を出せば必ずチャート上位にランクインする日本屈指のバンドとなったOfficial髭男dismの藤原聡(Vo/Pf)。2012年にOfficial髭男dismを結成する前から在籍していたバンド ぼすとん茶の湯会でドラムを担当していたことは、ファンの間では有名な話だ。ぼすとん茶の湯会は、『COLLEGE ROCK FESTIVAL 2011 全国大会』や『第6回 V-air あまばん2011』でグランプリを受賞するなど実力派として注目され、ローカルのテレビ番組にも出演している。藤原はこのバンドでシンプルかつ包容力あるドラムアプローチを見せ、歌を支えるドラミングを披露。音源のマスタリング具合も大きいと思うが、スネアやタムなどの一音一音が丸味を帯びているように感じられる音色選びも特徴だろう。2012年~2014年まで同バンドとOfficial髭男dismを掛け持ちし、2014年からOfficial髭男dismに専念。2018年に『ノーダウト』でメジャーデビューを果たした後の大活躍は万人が知るところだろう。

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 藤原の声の持ち味は、多彩なボーカリゼーションにある。伸びやかでクリアなハイトーンを筆頭に、声量を活かしたエネルギッシュなロングトーン、ソウルのニュアンスも感じさせる母音の抜き方、滑舌のよさと子音の刻みで聴かせるジャジーなビートに対する抜群のリズム感、決してブレない音程……など、その魅力は語るに尽きない。ただ、元ドラマーということを前提に改めて彼のボーカルを聴いてみると、リズムが鳴っていない部分でも、しっかりとバックビートを捉えていることが聴こえてくるのだ。

 例えば「Subtitle」のイントロから最初のAメロ。ピアノの弾き語りで幕を開けるが、藤原はピアノの和音でリズムの一部を刻むことで、バックビートを表現しているように思え、サビでダイナミックなバンドサウンドが展開した後でも、時にはそれらと絡み合いながら、別のリズムとして進行していく部分もある。そうして幾多のリズムが重なる曲の中で、最初から最後までボーカルのバックビートをキープできるのは、ドラマー由来の類稀なるリズム感を持っているからだと思う。

BUCK-TICK 櫻井敦司

 次に2023年10月19日に急逝したBUCK-TICKの櫻井敦司(Vo)について触れたい。1984年にBUCK-TICKの前身となるバンド(非難GO-GO)を結成した当初は、当時の日本のアンダーグラウンドシーンに影響された前衛的なパンクバンドで、櫻井はドラムを担当していた。しかし、音楽性の違いにより当時のボーカリストが脱退した際、自らボーカルになりたいと手を挙げたのが櫻井だった。BUCK-TICKがデビュー以降も音楽性の変遷を続け、2020年代に至るまで現役であり続けられた理由のひとつが、ここで見えてくる。アルバムごとに異なる音楽性に変化し、いつもサウンドに対してフレキシブルでいられたのは、作曲のキーパーソンとなる今井寿(Gt)や星野英彦(Gt)の曲作りの才能ももちろんあるが、その世界観をしっかりと表現できる櫻井敦司というボーカリストの存在が大きい。

 ゴシックでダークな世界観、パンキッシュで攻めたサウンド、そして櫻井の圧倒的な存在感で、BUCK-TICKはデビュー前から音楽シーンで注目されるバンドとなり、1987年にリリースされたインディーズ盤『HURRY UP MODE』は、当時持っていたら自慢できるほどにプレミア化した。同年9月にメジャーデビューし、1989年に発売されたアルバム『TABOO』が初のチャート1位を獲得すると、櫻井のカリスマ性は全国に知れ渡った。

 ボーカリストとしての櫻井敦司の真骨頂は、その声質やリズム感であり、80年代ポストパンクやニューウェイヴに通ずる、ある種淡々としたタイトなメロディのループを、艶っぽい中低音で聴かせてしまうところだ。子音を強く発音していないのに、培われたリズム感で、言葉をビートに変換したように感じられる。日本語をひと言ずつはっきり歌うのも、改めて聴き返してみると特徴的である。また、ミディアムナンバーやバラードなどのロングトーンでは、バンド初期は言葉をふわっと置くように歌うか、すぐフェードアウトするニュアンスのものが多かったが、キャリアを重ねるごとにそのアプローチがどんどん増えている。例えば近年のこぶしとも捉えられるようなニュアンスの歌唱は、初期の櫻井では考えられなかったアプローチだ。長いバンド活動の中、己のカリスマ性を維持しながら、音楽性の変遷に真っ向から挑み続けたのが、櫻井敦司というボーカリストだったのではなかろうか。

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