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えんぷてい、5人編成後での初インタビュー!新作『TIME』と初東名阪ツアーへ向けて、一人ひとりに語ってもらった

DI:GA ONLINE

名古屋で結成された5人組・えんぷていが初の東名阪ワンマンツアーを開催する。昨年12月にドラムの神谷幸宏とベースの赤塚舜がメンバーとなり、初めて5人編成で制作されたニューアルバム『TIME』は独自の平熱感やサイケ感はそのままに、よりポップに、よりエモーショナルに、間口を広げた素晴らしい作品。流行り廃りのない普遍的な良さ、どの世代の人でも繰り返し再生して追体験したくなる「TIMELESS」=「時間」をコンセプトに、SF的なモチーフをちりばめた歌詞も、バンドの記名性を強めている。この日はメンバー5人での初取材ということで、『TIME』に込めた想いを一人ひとりに語ってもらった。

──まずは昨年末にメンバーになった2人との出会いと、加入に至る経緯を教えてください。
奥中康一郎 (Vo,Gt)ベースの舜は大学の軽音部で先輩後輩として出会って、僕がギターを弾いてるところを見て、軽音部に入ってくれたみたいで、コピーバンドを一緒にやったりとかして。そこから2019年の12月にえんぷていの一番最初期の形になる学内のバンドを結成したんですけど、そのときに(赤塚が)リードギターを担当していたんです。なので、「煙」っていう初期の曲とかは一緒にやってたよね。
赤塚舜(Ba)あれはギター弾いてましたね。
奥中その後、コロナ禍で学内での活動が規制されてしまったので、学校外に活動を広げようってなったタイミングで、高校生のときからの知り合いの石嶋くんを鍵盤に呼んで、新しくバンドを組み直したんですけど、舜は運転とか物販とか、活動のサポートをずっとしてくれてたんです。で、2021年にリズム隊のメンバーを公募したときに、それまでベースはあんまりやったことがなかったけど応募してきてくれて。えんぷていに入るために練習したんだよね?
赤塚そういうことですね。
奥中康一郎 赤塚舜
──奥中くんはもともと先輩だったし、えんぷていもずっと見てきたから、「ベースでもいいからこのバンドをやりたい」と思った?
赤塚そうですね。最初期はメンバーとしてやってたし、スタッフとしてもずっと関わってた中で、「メンバーを公募するらしい」っていうのを聞いて、あんまり他の人がベースをやってる印象が自分の中で湧かなかったので、ダメ元でやってみるかって思ったのが最初でした。
奥中そこからまずサポートをしてもらうようになって、僕らと一緒のタイミングで上京して。ファーストアルバムの東名阪ツアーを2023年4月にやって、そのときはもう一人サポートベースをやってくれる方がいたんですけど、名古屋と東京で舜がベースを弾いてくれて、それが終わってからメンバーとして加入することが正式に決まって。12月7日に発表という形だったので、メンバーとして入ることが確定しているのに半年以上ずっと隠してる感じでした(笑)。
──やっぱりバンドのことをずっと見てきたから、ベーシストとしては歴が浅くても、バンドの楽曲に対する理解力が高かったんでしょうね。
奥中ストーリーへの理解というか、やってきたことをほとんど見てるので、いろいろ乗り越えていく段階とか、精神的な変化があったときに、メンバーではなくともめちゃめちゃ関わっていて、関係性がすごく良かったんです。プレーヤーとしては、最初はどうしても初心者なので、まだ整ってない部分がありましたけど、それもツアーとかで急成長して、今はバンドのアンサンブルをすごく理解してくれる、必要なピースになってくれました。
──その一方で、神谷くんとの出会いは?
神谷幸宏(Dr)もともと顔見知りではなくて、2020年の11月末に突然奥中から「サポートドラムお願いしたいんですけど、やってくれませんか?」みたいなDMが来たのが事の発端ですね。それから曲を聴いて、よさそうだなと思って、2021年の1月からサポートをやりだした感じです。当初は別のバンドもやってたので、正規メンバー云々とかは全然考えてなかったですけど、ときが経つにつれて、えんぷていに対する熱意が自分の中でどんどん上がってるのは自覚していて。上京したときもまだ正規メンバーとしてやるのは決まってなかったですけど、いざ東京に来て、活動していくにつれて、やっぱりえんぷていを今後も末永くやっていきたいなっていう思い……でしかないなっていうのに気づいて、「正規メンバーになりたいです」と伝えました。さっき話に出た東名阪のツアーが終わって、今回の『TIME』に入ってる新曲ができ始めた頃、それに対する手応えも感じていたので、決意しました。
神谷幸宏
奥中神谷くんは年も近いし、共通の友達がいたりもして、人間的な波長が合うのかなっていうのは、最初に会ったときから思ってて。当時はThe Shiawaseっていう名古屋のバンドで活動してたんですけど、上京するタイミングでそのバンドは抜けて、それはドラマーとしてもっと成長したいっていうのが理由だったそうなので、もともとは僕らと一緒にやるためじゃなかったと思うけど……。
神谷いや、でもそれも理由のひとつではあったよ。当時はベースだけじゃなくてドラムも公募してたんですよ。で、何人か候補がいたけど……。
奥中すでに神谷くんが爪痕を残しすぎていたので、そこをカバーできるドラマーとはお会いできなかったんです(笑)。
──2人が加入したことによるバンドの変化について、比志島くんと石嶋くんはどう感じていますか?
比志島國和(Gt)プレイももちろんなんですけど、それより個人的により実感として強かったのは、ライブ後の物販でメンバーがお客さんとお話したりすると思うんですけど、神谷くんと赤塚くんがサポートとしての対応じゃなくて、正規メンバーとしての対応をしているんだと思ったときに、「えんぷていの人になってくれた」っていうのを一番強く感じました。
石嶋一貴(Key)この5人になってから、バンドとして本当に切り替わったよね。「これから本気でやっていくぞ」っていうムードがちゃんと出来上がった。もともとの3人はそれぞれ個性が強くて、その真ん中がえんぷていみたいな感じだったんですけど、この2人が入ったことによって、バランスが取れたっていうのもあるし、メンバーになってから客観的な意見も出してくれるようになったので、バンドとしても視野が広がったかなと。3人のときは、それぞれがやりたいことをやってるみたいな感じだったんですけど、バンドとしての結束力が高まって、同じ方向を向きやすくなりましたね。
比志島國和 石嶋一貴

初めて5人編成で制作されたニューアルバム『TIME』について

──『TIME』はこれまでも大事にしてきた平熱感はそのままに、曲によっては熱量高い部分もあるし、『コンクリートルーム』の頃のポップさも戻ってきていて。ファーストの『QUIET FRIENDS』で土台をしっかり築いた上で、グッと間口を広げたアルバムという印象がありました。
奥中『QUIET FRIENDS』はまさに土台を作るというか、まず名刺代わりになる作品が欲しかったんですよね。なおかつ、全体をコンセプトとして体験してもらいたくて、2022年頭からの状況をいろいろプランニングしながら作ったアルバムだったんです。最初に世に出る一歩目をあやふやなものにはしたくなかったので、1曲目から10曲目までちゃんとルートを作って、同じ言葉をいろんな曲に散りばめたりとかして、派手ではないけどバランスが整ったアルバムができたと思っていて。だから比較的狭い世界で、縛りをたくさん課して作ったのがファーストだったんですけど、セカンドではその縛りをちょっとずつ取っていって、内向きを表現した『QUIET FRIENDS』に対して、少し世界を広げるというか、内から外に向けるっていうイメージで作りました。「コンセプトアルバム」っていうガチガチの作り方はせずに、一曲一曲のクオリティを担保しながら、それをパッケージすることで、結果的に同じムードのアルバムになったらいいなと思っていたんです。
──アルバムタイトルの『TIME』はいつ決めたのでしょうか?
奥中作っていくうちに徐々に曲の共通項が見えてきて、その共通のテーマが時間の不可逆性とか時間感覚みたいなことで。みんな上京して、生活も変わって、よく一緒に遊んでいた友達とも家族とも会う頻度が減ってしまったり、そういう人間関係の変化がたくさんあって。そういう時間を失ってしまったことを考えながら曲を作っていたら、曲調が似ているわけじゃないんですけど、歌詞とか表現してることにはすごく共通項があって、後天的にコンセプトが生まれた感じですね。10曲目の「宇宙飛行士の恋人」とかは特にテーマ性が表れてるなと思って、もともとSF作品が好きなので、そこはこれまでを引き継いでいるというか、普通に好みが出ているという感じです。
奥中康一郎
──「宇宙飛行士の恋人」は何かモチーフとなったSF作品があったりするんですか?
奥中今まで見てきた全ての作品がモチーフというか、特定の何かではないんですけど、ジェイムズ・P・ホーガンの「星を継ぐもの」が好きで、シリーズ4部作ぐらいあるんですけど、昨年それをすごく読んでいたので、そのムードはあると思うし、あと映画だと『インターステラー』、『惑星ソラリス』、『2001年宇宙の旅』とかも影響はあると思います。『星を継ぐもの』も何千万年みたいな時間の中の話で、地球外にいると時間がずれたりするじゃないですか。そういう部分で生じる切なさがあるというか、例えば『インターステラー』だったら、しばらく宇宙に行かないといけなくて、帰ってきたら時間の進み方が違うから、地球にいる恋人は老けてしまってる。そのずれで生じる心境の変化みたいな部分にすごく目を向けて書いた曲ですね。
──せっかくメンバー5人いるのでそれぞれのプレイや音作りについても聞かせてください。今回ギターもすごく耳に残るフレーズが多かったんですけど、比志島くんはギターに関してどんなところを大事にしましたか?
比志島もともと自分の中では曲を邪魔せずに、その世界感をより深めるためのギターを大事にしてるんですけど、メロディーの裏でアルペジオを弾くことが多くて、アンサンブルに馴染ませつつ、それで曲に彩りを与えることは意識しました。
──「琥珀」は比志島くんの作曲ですね。
比志島「琥珀」はリフにこだわって、このリフができたときに「この曲は絶対いい曲になるから、大事に作ろう」と思いました。曲自体は結構シンプルで、ギターも基本的にずっとコードストロークしてるだけみたいなところが多くて、フレーズ的にこだわりを詰め込んだわけではないですけど、むしろシンプルさを突き詰めることで、このアルバムの中でもキャッチーさと疾走感が際立つ曲にしたいと思いました。
比志島國和
奥中「琥珀」はリファレンスがあったよね。
比志島タイのDOOR PLANTっていうバンドと対バンする機会がありまして、ライブで「Kor hai ter」っていう曲を聴いたときに、疾走感のある爽やかでキャッチーな曲なんですけど、そこにエキゾチックでアンニュイなムードが含まれてて、すごく湿度を感じて、それに心が動かされる感じがして。そのエキゾチックな部分をより日本的に解釈したら、すごくキャッチーでいい曲ができるはずだなと思って、それでできたのが「琥珀」なんです。もともとの曲にも夏っぽい感じがあって、夏に関連する切なさ、センチメンタルな感じ、夏の終わりの海みたいな感じもすごく意識しました。
──石嶋くんのキーボードはどうですか?
石嶋常に意識していることは、Aメロでは平熱感を意識しつつ、サビでポップさを引っ張り上げるような音使いをすることですね。半年前にシングル三部作で出した「秘密」と「TAPIR」と「PaleTalk」は喪失感とか、そういう共通したテーマがあったので、それをキーボードで表したいなと思って、サビで同じようなフレーズをわざとつけてみたりとかして。例えば、「Pale Talk」のサビで〈このやさしい霧は ふたりのための秘密〉っていう歌詞が出てくるんですけど、そこに「秘密」と同じようなフレーズをあえて入れたりしてます。あと1曲目の「Turn Over」は最後に作ったんですけど、「時間」というテーマを締めくくるようなコンセプトで作ろうと思って、アルバムの最後の曲の「宇宙飛行士の恋人」のデモのボーカル音源をサンプリングで使ってて。最初は何言ってるか聴き取れないんですけど、アルバムを聴いて、もう1回頭から聴いたときに理解できる。宇宙からの手紙が届いた、みたいなイメージですね。
石嶋一貴
奥中「Turn Over」は「ひっくり返す」っていう意味で、ジャケが砂時計なんですけど、10曲目と1曲目が繋がっているんですよ。
──なるほど!面白い。赤塚くんのベースはどうでしょうか?
赤塚僕は作品全体としてはもう地味に弾くみたいなことを意識した気がします。本当に土台のイメージで弾きましたし、そこに誇りみたいなものはあって、それができてることに喜びがある感じがします。
──「琥珀」の話にも近いかもしれないけど、あえてシンプルにすることで、よりポップさを引き立てたり、他の楽器を引き立てたり?
赤塚そうですね。ベース歴がまだ浅いので、またここから変わっていくとは思うんですけど、ベースという楽器はアンサンブルを最後にまとめる役割があると僕は思ってて、自分の色で曲の色を壊さないというか、そういうイメージで弾きました。
赤塚舜
──そこは奥中くんとも結構やり取りをしながら?
奥中一番一緒に楽器を触ってるかも。僕はその場の空気を支配するのがベースだと思っていて、舜が優しく弾けば優しく聴こえるし、逆にバキバキな音を出していれば、曲全体の雰囲気がそうなる。根幹でありながらも、一番味付けになるというか。舜はいい意味でまだ自分の色があんまりないので、曲ごとにそれぞれの自分で弾いてるような感覚というか……でも「斜陽」とかこだわりがあるんじゃない?
赤塚「斜陽」は個人的な心境とか思想にすごく近いものが表現されてる感じがして、思い入れがあります。「斜陽」は諦めの曲だと思ってて、悲しいことがあったときに、それを乗り越えるとかでもなく、ただ受け入れるみたいな、そういう心情を自分なりに読み取ったので、それに合うベースを弾いたつもりです。例えば、ガクってくるような外した音をサビで一音入れたりとか、音の長さも最初は4分で取ってるんですけど、ラスサビは倍の長さで取ることで、だんだん落ちていく感じを表現してみたりしました。
──まさに「斜陽」を音でも表してると。神谷くんのドラムはどうですか?
神谷赤塚くんはまだ自分の色がなくてフラット、みたいな話でしたけど、僕は何も縛りがないと、逆に色が出過ぎちゃうんですよ(笑)。手数王なんて言われたり、そんなことをやっちゃうような人間なので、それをいかに抑えるか、みたいな努力はめちゃめちゃしました。歌詞や歌を聴いてほしいから、それに伴ったドラムをつけたいっていう意識で全曲録ってたんですけど、その中でも自分の色が出てるのは「ハイウェイ」ですね。アルバムで僕が一番好きな曲なんですけど、この曲だけは……抑えてないです(笑)。ノリ感が大事な曲っていうか、ハイハットの刻みとかスネアのゴーストノートを入れて、踊れる曲に仕上がったかなとは思ってます。あと音的なこだわりでいうと、6曲目の「TAPIR」だけちょっと特殊なことをしてまして、ドラムセットを2回に分けて録ってるんです。要はキック、スネア、タムの太鼓類と、シンバル、ハイハットとかの金物を別で録って、太鼓類だけトリガーをかけて、エレクトロっぽい処理をして、逆にシンバルとか金物はそのままにすることで、特殊な感じに仕上げたというか、新しいものができたと思います。
神谷幸宏

4月18日から始まる東名阪のワンマンツアーについて

──メンバーそれぞれのこだわりも詰まった作品が完成して、4月18日から始まる東名阪のワンマンツアーはどんなものにしたいと考えていますか?
奥中もちろんアルバムのリリースツアーなので『TIME』の曲をやるんですけど、ファーストとかそれ以前の作品からもたくさん曲をやろうと思っていて。もちろん音源を作るときは全力で音源を作るんですけど、でもそれって何テイクか録ったうちの1個なんですよね。それは時間を切り取ってるってことで、時間が不可逆であると歌っているけど、それを録った瞬間だけは永遠に残る。それが音源のいいところだと思うんです。
──録音芸術というかね。
奥中逆にライブは生きている僕たちが常に楽曲をアップデートした結果だと思っていて。もちろん音源を再現する場面もありますけど、前作とか前々作の曲も再構築して、今の僕らが一番良いと思える状態にアレンジをしていて。これから先ずっとそうだと思うんですけど、今までやってきた曲を毎回アップデートして、音源がそのときの100%でできているとしたら、ツアーは120%にしたい。そのために気合の入ったツアーになっていて、全会場別のセトリで演奏する予定です。それぞれの会場にはそれぞれの会場の良さがあると思うから、繰り返しじゃないライブになったらいいなと思ってます。
奥中康一郎

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奥中康一郎 比志島國和 石嶋一貴 神谷幸宏 赤塚舜
 
   

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