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ラグビータウン熊谷市、日本全国からファン来訪。仕掛け人が語る成功の裏話

パラサポWEB

日本の最高気温を記録し、日本一暑いまちとして知られる埼玉県熊谷市は、ラグビーで熱いまちとしても知られている。そのラグビーのまちに2021年9月、日本全国からラグビーファンがやってくる「さくらオーバルフォート」が誕生した。地元の人々からも愛されるこの施設は、実は日本初の「行政×スポーツ」を軸とした官民連携事業として全国の自治体から注目を集めている。その魅力と成功の秘訣を、同施設の誕生に関わったパナソニック株式会社 エレクトリックワークス社の小谷野勝衛氏に伺った。

ラグビータウン熊谷市を象徴する新施設の誕生

ワイルドナイツの練習場を臨むホテル棟。宿泊客は客室から練習風景を見ることができる

「さくらオーバルフォート」があるのは、埼玉県営の熊谷スポーツ文化公園内。広大な敷地の中には、JAPAN RUGBY LEAGUE ONEに所属する埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下ワイルドナイツ)のホームグラウンド「熊谷ラグビー場」もある。「さくらオーバルフォート」は、このラグビー場に隣接し、同チームのクラブハウスや屋内運動場を中心にした、多機能スポーツ施設だ。敷地内にはワイルドナイツの練習風景を見学できるホテルやカフェレストランなども完備。チームのファンはもちろん、ラグビー好きが全国から見学に訪れるほか、練習がない時には子ども向けのラグビー教室などのイベントなどが開催され、近隣の住民に身近な存在として愛されている。
こうした自治体が所有する土地の活用にはさまざまな制限があるため、民間の施設を建設して運営していくのは簡単な話ではないと思われてきた。しかし、様々な課題をクリアし、官民の壁を越えた連携事業のスキームを作り出したのが、パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社(以下、パナソニックエレクトリックワークス)の小谷野勝衛氏だった。

税金をかけて改修したラグビー場のその後

2019年のラグビーワールドカップを機に改修された熊谷ラグビー場

1991年に建設された熊谷ラグビー場は、秩父宮や花園と並ぶラグビーの聖地として知られていた。さらに2019年のラグビーワールドカップの招致に成功し、熊谷市は名実ともにラグビータウンとして知られるようになった。

「当時埼玉県は熊谷ラグビー場を大規模改修し、2万4000人も収容できるようにしてワールドカップを誘致しました。大会は盛り上がったのですが、その後、埼玉県の県会議員や熊谷市の市議会議員、市民のオンブズマンなどから、県の税金を無駄遣いして、何をやっているんだという意見も多くいただいたそうなんです」(小谷野氏 以下同)

こうした話は熊谷市に限ったことではなく、一般的に自治体が大きな箱物を作った場合、建設費だけでなく、その後の維持費が負担となっているという話はよく聞く。

パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社スポーツビジネス推進部の小谷野勝衛氏

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「この素晴らしいラグビースタジアムをどう活用したらいいのかということを議論する際に、私が以前から知っていた現在の埼玉県サッカー協会の会長がトータルアドバイザーに就任され、民間の力を借りようということで、私を推薦いただきました」

そこで、小谷野氏は、スポーツチームを巻き込んだスキームを構築。それまで群馬県太田市に本拠地と練習場を構えていたワイルドナイツを熊谷市に誘致しようと動き出したのだ。

「ワイルドナイツを誘致する際には、さまざまなハードルがありました。たとえば民間企業が直接県の土地を使用することはできないため、埼玉県ラグビーフットボール協会に協力してもらい、総額約35億円の借金をして施設のオーナーになっていただきました。その上で、ワイルドナイツをはじめ、ホテルやレストランなど7つの会社が家賃を払って、借金を返していくという仕組みです」

日本全国から人を呼び寄せる持続可能なスキームとは?

管理棟1階のカフェレストラン。ここからも練習風景を見ることができる

ワイルドナイツは、笑わない男の異名を持つ稲垣啓太選手やドレッドヘアがトレードマークの堀江翔太選手など、2023年のラグビーワールドカップフランス大会の日本代表選手を11人も輩出している強豪チーム。ファンは日本全国にいるため、チームを誘致すれば2万4000人も収容できるラグビー場をいっぱいにすることができるというわけだ。また誘致されるワイルドナイツも人気の高まりに伴い、より多くのファンを収容できるホームグラウンドや、よりよい練習場などの環境整備を検討していたため、移転することでこの課題を解決。さらに埼玉県ラグビーフットボール協会は、賃借料と相殺すればそれなりの利益が出る。こうして、関係各所すべてにメリットのある持続可能なスキームを考案し、埼玉県と熊谷市、パナソニック株式会社(ワイルドナイツ)は、2019年にラグビーを通じた地域振興等に関する「三者協定書」を締結するに至ったのだ。

地域を活性化させる新たなスキーム

パナソニックエレクトリックワークスが照明を手がけた北海道日本ハムファイターズの新球場「ES CON FIELD HOKKAIDO」

しかし、このように「官」が「民」の力を借りる場合、そのパートナーの選定や関係各所の要望の取りまとめなどはコンサルティング会社に委託するケースが少なくない。なぜ「さくらオーバルフォート」に関してはパナソニックエレクトリックワークスの小谷野氏が関わることになったのだろうか。

「コンサルティング会社の仕事は、案件をまとめることで成果報酬が発生します。しかし今回の案件で、弊社はコンサル料はもらっていません。あくまでもこれは私の仕事の営業の一環なんです」

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