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審判も全国大会も無し!自主性を育むドイツのサッカー教育法

パラサポWEB

2022年のサッカーワールドカップカタール大会。日本代表は史上初のベスト8入りは逃したものの、優勝経験のある強豪国ドイツやスペインに勝ち、日本を大いに沸かせた。サッカーをしたいと思う子どもたちはますます増えたのではないだろうか。そんな子どもと親御さんや指導者に、ぜひご紹介したいのがドイツのジュニアサッカー。「控え選手も、全国大会もない」らしいが、それはいったいどういうことなのか? 日本からドイツに渡り、10年以上にわたって選手育成・指導を行っている中野吉之伴氏に、ドイツの子どもたちはどのようにサッカーを楽しんでいるのかについて伺った。

子どもたち全員に公式戦に出場できるチャンスがある

ドイツでの経験を活かし、日本に呼ばれて指導することも多い中野吉之伴氏

今の日本で子どもがサッカーをやりたいと思ったら、地域のクラブやスクールに通うか、学校にクラブがあれば入部することになるだろう。ただ、希望に燃えてクラブやスクールに入っても試合に出られず、いつの間にかサッカーをすることが楽しくなくなってしまう子どもたちは少なくないように思う。しかしドイツでは、高校生になるまで全国大会は行わず、誰でも1年中試合に出られるというのだ。

2016年の段階でDFB(ドイツサッカー協会)には、18歳以下の選手が224万1565人(全体は704万3964人)登録されています。ドイツ全土で育成チームは9万8066チームありますので、そのいずれかのクラブに所属していれば、それぞれのレベルに応じたリーグに参加することができます。
つまり、ドイツではサッカークラブに集まる200万人を超える子どもたち全員に、公式戦に出場できるチャンスがあるのです。

(中野吉之伴著『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』ナツメ社刊P29より)

この地域に根ざしたクラブの存在がドイツのサッカー事情に大きく影響を与えていると言える。

「ドイツでは、サッカーに限らずいろいろなスポーツのクラブがあって、地域のコミュニティを作る上で大事な存在になっています。学校はあくまでも勉強をする場所で、スポーツや音楽などの芸術は少しはやりますがあまり時間を取りません。部活動もありません。なので、そういったことに興味のある子どもたちは、それぞれクラブを探して入り、同じ目的を持つ子どもたちと繋がりながら成長し、コミュニティを形成していくという環境が整っています。日本と大きく違うのは、小学校、中学校、高校、大学などと進学にともなってキャリアがぶつ切りになるのではなく、子ども時代から大人になるまで、ずっとそのクラブに所属し続けようと思えば続けられる点です」

こう語るのは、ドイツ・フライブルクで20年以上選手の指導・育成に携わっている中野吉之伴氏。ドイツのスポーツ環境の充実ぶりに触れ、いろいろなことを学びたいと渡独。ドイツサッカー連盟公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)を取得し、元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16やU18の監督を務めた経験もある。

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「僕はずっと子どもの頃からサッカーをやっていたわけではなくて、小中時代は野球をやっていました。ただ、高校の野球部では、日本の部活動の旧態依然とした雰囲気に抵抗を感じて、ちょうどその頃Jリーグの始まる時期で興味を持ったのでサッカーを始めたんです。僕が通っていた高校のサッカー部にはそこまでの縦関係社会ではなかったというのもありました。とはいえ、公式戦にはなかなか出ることがなかったので不完全燃焼で終わってしまったのも事実です」(中野氏、以下同)

その後大学に入学して、近くの小学校のサッカー部のコーチの募集があり、サッカーを教えることになった。子どもたちを教えるのは楽しく、自分に合っていると思ったそうだ。

「日本のスポーツの現場は、どうしても勝った負けたとか、トーナメントでどれだけ勝ち続けたかとか、そういうことばかりで、自分が幼少期の頃と全く変わっていませんでした。そんな中で苦しんでいたり、面白くなさそうにしている子どもたちを見て、どうにかならないのかということは常に考えていました」

そして機会があってドイツに行った中野氏は、ドイツのサッカーに触れ、是非ここで学んでみたいと渡独を決意したのだ。

子どもたちに過度のプレッシャーを与える全国大会は行わない

ドイツの子どもたちは、自分たちで主体的に考え、大人がいないグラウンドで、思うがままにプレーする幸せを享受している

まず、先述の「ドイツでは高校生年代まで全国大会を行わない」というのは、いったいどういうことなのだろうか。

現在のドイツでは、日本で言う小・中学校生年代、いっさい全国大会が行われません。U17・U19になって初めて、全国1位を決める大会が行われます。その理由は子どもたちの成長を最優先に考え、過度なプレッシャーを与える全国大会をなくすためです。(中略)「勝つか負けるか」というプレッシャーは大人にとっても、非常に重たいものだからです。それをひたすら子どもに課し続ければ、子どもの身体と心には大きな負担がかかり、いずれ限界を超えてしまうでしょう。
(中野吉之伴著『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』ナツメ社刊P16より)

このような理由から、小・中学生年代においては全国大会がないばかりではなく、U13年代からは「負けたら終わり」のトーナメント戦もあるものの、あくまでも重要視されているのはリーグ戦。先に述べたように、どんな小さな村にある小規模なクラブでも2学年ごとに年代別のチームを持っていて、リーグ制を採っているため、負けても次がある。リーグ戦ではホーム&アウェーでシーズン2度対戦できる意味も大きい。負けた悔しい思いを切り替え、反省点を踏まえて次の試合、次回の対戦に向かうことができるのだという。

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