その原因は下半身にある。
自身2度の甲子園を経験し、「ストレートが全国の舞台では通じなかった。わかっていても当たらないような勢いあるストレートを投げる」ことを、次への課題に掲げた。そのために下半身の使い方を見直してきた。
「（元監督の）渡辺（元智）さんにも指導してもらい、体重移動の時間を長くして、いかに体の開きを抑えられるか。ここを大事にしていました」
気持ちが先走ったことで、取り組んできた下半身をしっかり使えず、上半身に頼った力任せの投球をしてしまったことで、指先にかかった直球を投げ込むことができなかった。杉山本人も「指先のかかりが悪かった」と察することができるほど、力を加えることができていなかった。
ただ、リードをもらった6回以降からは「普段通りのストレートの感覚が戻ってきたので、ストレートでも押せるようになってきた」と、見直してきた下半身を使った投球で勢いが戻ってきたことで、直球主体の投球で慶應義塾打線を抑えることができた。
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後半は直球の勢いが違って、6回以降は被安打1。慶應義塾打線が差し込まれるなど打ちあぐねており、前半打ち込まれた杉山の姿はマウンドになかった。
特に8回の先頭で迎えた慶應義塾7番・清原 勝児内野手には、内角への直球で見逃し三振を奪った。清原も「手が出ませんでした」と、まさに杉山が目指していた勢いある直球の1つだったといっていい。
神奈川1位で関東大会へ挑む。センバツに向けて関東の猛者と戦うことになるが「今日のような投球では関東大会は勝てないので、序盤から自分の投球ができるように修正したい」と3週間後の関東大会に向けて、気を引き締めた。3度目の全国の舞台へ。最速140キロ左腕は優勝に浮かれることなく、足元を見直して関東大会に挑む。
強打・慶応義塾が誕生した秘策 強打者揃いで関東大会に挑む
タイムリーを放った慶応義塾2番・大村昊澄
＜神奈川県高校野球秋季県大会：横浜6－3慶応義塾＞◇27日◇決勝◇保土ヶ谷
慶應義塾は横浜を相手に、序盤こそ主導権を握ったものの、中盤から「欲張ってしまい、後半は繋がらなかった」と横浜・杉山 遙希投手（2年）の前に6回以降、打線はヒット1本に封じられた。前半5回までに11安打を記録して猛攻を見せたが、打ち崩すまでに至らなかった。
しかし今大会、4回戦から準決勝までホームランが1本ずつ飛び出すなど、県内ライバル相手に大会を勝ち上がるごとに好投手に猛打を発揮。横浜・杉山も「東海大相模のような打線で、長打だけではなく小技も使える打線だったので、手ごわかったです」とマウンド上から脅威を感じていた。
秘密は普段の練習にある。新チームは「打てない中で、どうやって点数を取るのか。粘り強くやってきたことで、大会で結果が出た」と最初から打線に破壊力があったわけではない。しかし、森林監督の発案で「全球打ち」というメニューを地区予選前から取り入れたことで変わってきた。
ルールはどこに投げられても、しっかりと強くスイングする。ストライクはもちろん、ボールゾーンに対しても強く振って、強い打球を打ち返す。徹底して強くバットを振り抜いたことで「態勢が崩れたり、エンドランで外されてもしっかりと強い打球を打てるようになったので、良い練習です」と話し、対応力向上に手ごたえを感じているようだった。
今年の慶應義塾は7番に座る清原 勝児内野手に注目が集まるが、「全球打ち」の成果もあってか、全体的にどの球に対しても強く、鋭いスイングができる強力な打者が揃っている。なかでも2番・大村昊澄内野手（2年）、3番・渡辺憩捕手（2年）は打線の核となる選手として関東大会でも注目したい。
主将でもある大村は、追い込まれたらノーステップで対応するなど、軸回転で打てるので、対応力が高い。かつ、5回には送りバントを決めたが、投手と一塁手の間に強く転がすプッシュ気味にバントを敢行するなど、視野の広さと器用さも兼ね備える。
3番・渡辺は、テークバックは取らないが、バットのヘッドを投手方向に倒した状態でトップを作り、鋭く振り抜く。うまく球の軌道にバットを合わせることができており、「線」で捉えられるようなスイングが特徴的。両チーム唯一の猛打賞を記録するのもうなずける打撃フォームで、捕手としてもイニング間の二塁送球は素早い握り替えでライナー性の送球を見せる。タイムも1.9秒前後の数字が出た。神奈川を代表する強打の捕手として見逃せない。
神奈川2位で関東大会に挑む。大村主将は「まずはセンバツが一番目標ですが、そこからは勝ち切って優勝です」と関東大会への意気込みを語った。激戦区・神奈川を勝ち抜くために磨かれた強打を引っ提げて、関東の好投手も攻略できるか。
（取材＝編集部）
