「ウルトラ特撮 PERFECT MOOK vol.11 ウルトラマンタロウ (講談社シリーズMOOK) 」(講談社)

【画像】え…っ? もう会えない? これが最後はタロウと分離した天涯孤独のイケメン・東光太郎の姿です

天涯孤独の東光太郎がウルトラファミリーのなかでは一番のかまわれキャラに?

 1974年に『ウルトラマンタロウ』が最終回を迎えてから、50周年を迎えました。『タロウ』と言えばウルトラ兄弟の末っ子で、甘えん坊のイメージがあります。ところが、その最終回は、今までのイメージを覆すものでした。主人公がウルトラマンたちと別れて、自立する『ウルトラマンタロウ』の異色の最終回を振り返ります。

「ウルトラの父がいる、ウルトラの母がいる、そしてタロウがここにいる」と、主題歌にあるとおり、『タロウ』は最初からウルトラファミリーありきで設定されています。

『タロウ』からは「ウルトラの父」や兄弟に加え、新たに「ウルトラの母」まで登場して、手篤く「タロウ」をサポートし、ウルトラ兄弟のなかでも末っ子の甘えん坊というポジションがすっかり定着しました。

 第1話「ウルトラの母は太陽のように」で怪獣との戦いで炎に包まれたZAT隊員の東光太郎は、母や「ゾフィー」をはじめとするウルトラ5兄弟の立ち合いのもとに、「ウルトラマンタロウ」として復活します。

 その後も父、母、ウルトラ兄弟が客演し、頻繁にタロウを助けにきました。制作側もタロウのウルトラ兄弟への依存が強いと感じ取ったのか、第33話、第34話ではウルトラ兄弟は「末っ子の甘えん坊」であるタロウの独り立ちを促すために、ピンチになったタロウにあえて力を貸さずに、遠くから見守るエピソードが描かれました。

 そんなタロウは「ウルトラセブン」に似たフェイスにウルトラの父の角を加えたビジュアルや、ストリウム光線などの派手な光学合成の光線技、さらにブレスレットの力でさまざまな小道具が出現し、まさに「ウルトラマン」の能力の集大成です。

 もっともウルトラマンらしいウルトラマンであったはずのタロウですが、最終回、東光太郎はウルトラマンであることもやめてしまいます。

 任務中だった光太郎はタロウに変身できず、下宿先の主人である白鳥船長を怪獣サメクジラから守ることができませんでした。父の死を嘆きタロウを恨む白鳥健一に、光太郎はタロウであることを打ち明けます。

 光太郎はバッジを空中に放り投げてウルトラの母に返上し、サメクジラを操っていたバルキー星人に単身戦いを挑み、捨て身の作戦で倒しました。そして、戦いを終えた光太郎はZATも辞職し、あてもないひとり旅に向かいます。

 第2次ウルトラシリーズの最終回では、主人公はウルトラマンであることを周りの人に打ち明けて地球を去って行くのですが、光太郎だけは例外的にウルトラマンであることさえ捨て去りました。タロウはウルトラ兄弟の末っ子でしたが、光太郎自身は天涯孤独で、冒険心にあふれ世界中を旅している設定です。光太郎とタロウが分離するのは、必然だったのかもしれません。

 タロウと光太郎が最終回で分離したせいか、のちの「ウルトラ」シリーズでも、タロウが再登場することはあっても、光太郎の再登場はいまだに実現しなかったのでした。