画像は『鬼滅の刃 柱稽古編』キービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

【画像】あれっ、いつのまに? これが柱の過酷な稽古をさらっとクリアした『鬼滅』キャラです(3枚)

リアルタイム視聴ならではの楽しさ

 今やアニメは、配信サイトでの視聴を基本としている人が多数派でしょう。(BSやCSがあるとはいえ)アニメが放送されていない地方在住者ならなおさらで、配信さえ始まれば自身の居場所に関わらず、好きなタイミングで、CMもなしに観られるとメリットばかりなのでそちらを選ぶのは当然のことかもしれません。レコーダーなどを使ったタイムシフト視聴も含めれば、その数はリアルタイム派と比べて圧倒的なはずです。

 それでも、アニメは最速放送をリアルタイムで観て、感動や興奮をいち早く味わいたい/SNSを通じて同好の士と共有したい気持ちが分かるアニメファンも多いでしょう。好きな作品はもちろんのこと、そうでない作品もチェックするようなマニアにとっては、多数の作品が続けて放送されている環境は「受動視聴」できて最高です。

 そんな人にとって困るのが異なるアニメの放送時間の「被り」で、特に2024年春クールは悩ましい時間帯が多いのです。そこで今回は、おもにTOKYO MXが映る首都圏での話となりますが、ふたつの困った時間帯を紹介します。

「死のグループ」と化す日曜23時以降

 長年、日曜の夜はTOKYO MXの(再放送を交えた)アニメリレーが21時台から25時ぎまで続いており、視聴の軸となっていました。そこに、フジテレビによる『鬼滅の刃』やNHKの『進撃の巨人』『キングダム』、そして25時以降と遅い時間帯にテレビ東京の新作がたまに絡むことがあった程度です。しかし2024年春の23時台からは、5月から始まる『鬼滅の刃』の新作を含めると以下のように困った事態になるのです(放送時間/局は首都圏基準です)。

23時00分~ 神之塔 -Tower of God-(再放送)(TOKYO MX)
23時15分~ 「鬼滅の刃」柱稽古編(フジテレビ)
23時30分~ ヴァンパイア男子寮(TOKYO MX)
23時30分~ 転生貴族、鑑定スキルで成り上がる(TBS)
23時45分~ ブルーアーカイブ The Animation(テレビ東京)
24時00分~ 無職転生 II ~異世界行ったら本気だす~ 第2クール(TOKYO MX)

 いくらなんでも被りすぎでしょう! しかも『鬼滅の刃』『ブルアカ』『無職転生』といったビッグタイトルに加え、ダークホース的な面白さの『ヴァンパイア男子寮』などもあり、どれを観るか非常に悩まされます。皆さんならどんな視聴リレーをするでしょうか?

 こんな風に4つの放送局のアニメが絡み合うのは、日曜夜には珍しい現象です。2023年秋に日本テレビが『葬送のフリーレン』で新たにアニメ枠が作られたのは多くの読者がご存知でしょう。それと同様に、今春からTBS系列のCBCによるアニメ枠「アガルアニメ」が新設され、その第1弾として『転生貴族、鑑定スキルで成り上がる』が放送されたのもその一因です。

 そしてテレビ東京も、従来なら新作アニメは25時台に編成されることが多かったのですが、『ブルアカ』は23時台に編成されました。編成されている作品の大きさ的にも、TV局は日曜の深夜をアニメ視聴者向けのゴールデンタイムと捉えているのかもしれません。



画像は『WIND BREAKER』第2弾キービジュアル (C)にいさとる・講談社/WIND BREAKER Project

(広告の後にも続きます)

「アニメイズム」の移動で木曜の夜も大混雑

 そのほかの週末の深夜も多数のアニメが放送されています。土曜は5局が絡む事態となっていますが、そこはこれまで通りなのでさておき、特に増加が顕著なのが木曜です。少し前までは22時台から始まるTOKYO MXのリレーにフジテレビが誇る「ノイタミナ」が絡むくらいでしたが、2023年夏の『呪術廻戦 懐玉・玉折』辺りからTBSが本格参戦となったのです。

 しかもTBSは2024年春に、それまで金曜にあった「スーパーアニメイズム」の枠を「スーパーアニメイズムTURBO」と名称を変えて木曜に移動し、『WIND BREAKER』の放送を開始しました。そのため、今期の24時前後から3局が入り乱れて以下のような渋滞を起こしています。

23時30分~ ゆるキャン△ SEASON3(TOKYO MX)※最速放送は30分前のAT-X
23時56分~ 花野井くんと恋の病(TBS)
24時00分~ Re:Monster(TOKYO MX)
24時26分~ WIND BREAKER(TBS)
24時30分~ 魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?(TOKYO MX)
24時55分~ うる星やつら(フジテレビ)
24時59分~ 五等分の花嫁∬(再放送)(TBS)
25時28分~ 変人のサラダボウル(TBS)

 TBS作品が中途半端な時間から始まるのもあって、かなり複雑な印象を覚えます。こうしてまとめると、どことも被っていない『変人のサラダボウル』が、内容も相まってありがたい存在に見えてきます。

夕方やゴールデンタイムの放送が増えると……

 アニメの本数が多いこと自体は選択肢が増えるので、もちろんうれしいことなのですが、観られなかったら本末転倒です。いや「諦めて素直に取捨選択しようよ」とか「観るアニメを減らせばいいじゃん」「配信サイトやレコーダー、BSなんかを使ったら?」と言われればそれまでなのですが、リアルタイムで観るからこその面白さがあるのは冒頭の記載通りでしょう。リアルタイムでできるだけいろいろな作品をチェックしたい視聴者にとって、これ以上の被りは死活問題です。

 ただしそんな現状の解消につながるかもしれない動きはあります。TBSは2023年秋から日曜夕方のアニメ枠を拡張しましたが、同様にほかのTV局も深夜とは別の時間帯、もしくは比較的新作アニメが空きがちな火曜に編成してくれるとちょうど良さそうです。もしくは今以上にアニメが重要視されるようになれば、昔のように19時などのプライムタイムに新作が放送される可能性も……と、それは高望みしすぎでしょうか。

 また、現在でも奇跡的にいい塩梅で編成されているタイミングがあるのも注目ポイントです。先述した日曜夜の「『鬼滅の刃』柱稽古編」(フジテレビ、23時15分~)と「ブルーアーカイブ The Animation」(テレ東、23時45分~)や、金曜夜の「アイドルマスター シャイニーカラーズ」(テレ東、25時28分~)と「HIGHSPEED Etoile」(TBS、25時53分~)のように、違う局同士ながらうまく続けて視聴できるケースもあるのです。

 もっとも前者はTOKYO MXの新番組と被っているのですが。これが偶然か、はたまた放送局をまたいでの調整や配慮があったのかは不明ですが、こんな具合に、業界全体でできるだけ被りが少なくなるよう調整いただけるとうれしいところです。