『機動戦士ガンダム』のヒロイン、セイラ・マスを立体化した「エクセレントモデル RAHDXシリーズ G.A.NEO 機動戦士ガンダム セイラ・マス」(メガハウス)

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冷静に見えて直情的な性格

『機動戦士ガンダム』の主要女性キャラとして登場したセイラ・マスは、その美貌やカリスマ性、パイロットから医療までこなす万能性、そしてシャアの妹であり本来はジオン側の人間であるという意外な設定など、多くの要素を兼ね備えたキャラクターとして高い人気を獲得していました。

 初代『ガンダム』主人公のアムロから「セイラさん」と呼ばれていた彼女は、最も多くの役割を果たしたキャラクターではありますが、最も困難な立場に立たされていたことも疑いようがありません。

 ジオン共和国の初代首相であるジオン・ズム・ダイクンの娘アルテイシアとして生まれたものの、父親の急死によりザビ家の迫害から逃れるためにマス家の幼女となり改名、兄であるシャア・アズナブルとともに地球で過ごしたのちに「サイド7」へと移住しています。17歳にして波乱の人生を送っているのです。

 作中での初登場は2話「ガンダム破壊命令」となります。初登場シーンでは逃げ遅れた人間を探しに行こうとした際に、駆け込んできたカイが怯えている様子を見て「軟弱者!」と叫びながら平手打ちをお見舞いするほど、気の強いところを見せています。その後もひとりで避難民を探しに行き、潜入してきたシャアと運命の再会を果たしており、ストーリー面で極めて重要な役割を持つことも、かなり早い段階で示されています。

 3話「敵の補給艦を叩け!」以降はホワイトベースで通信オペレーターを務めており、慣れない状況に苛立ち、険悪となっていたブライトとアムロの間で緩衝材の役割を果たしていました。5話「大気圏突入」では大気圏ギリギリの出撃を不安視するアムロを「あなたならできるわ」と励ましています。

 もしブライトとアムロが直接通信を行っていた場合、アムロのストレスは非常に高い状態になったはずで、ギリギリの戦いを生き抜くのは難しかったかもしれません。セイラさんは初期の戦いを切り抜けるための重要なポジションにいたといえるでしょう。



シャアとアムロにならんでセイラが描かれた「機動戦士ガンダムDVD-BOX 1」(バンダイビジュアル)

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「一年戦争」後は投資家に

 その後も、セイラは機銃座についてマゼラ・アタックを撃破するなどさまざまな貢献を果たしてきましたが、16話「セイラ出撃」ではシャアの情報を求めるあまりに無断でガンダムに搭乗し、ジオン兵との接触を試みています。オペレーターの時は冷静に見えるのですが、実際の性格は直情的であることがよくわかるシーンです。

 20話「死闘! ホワイトベース」ではランバ・ラルと再会し、本名が判明。24話「迫撃! トリプル・ドム」以降はGファイターのパイロットを務め、最初こそ不慣れだったものの撃墜を積み重ね、エースパイロットに匹敵する戦績を挙げています。ただしアムロとシャア、ララァの戦いに割り込もうとした際にはシャアにあっさりと撃墜されそうになっており、最上級のパイロットたちからすると、腕前は一枚落ちるようです。

 最終話「脱出」ではア・バオア・クーに不時着し、アムロとシャアの決闘を止めることに(結果的には)成功します。アムロの導きでホワイトベース隊と合流して脱出を果たし、無事に生き残りました。
 続編である『機動戦士Zガンダム』では、37話「ダカールの日」に1カットだけ登場しますが、せりふはありません。担当声優を務めていた故・井上瑤さんはこのとき長期の海外旅行に出かけており、連絡が取れなかったとのこと(当時は携帯電話などが一般に普及していない時代でした)。『機動戦士ガンダムZZ』では最終話「戦士、再び」にせりふ付きで登場し、行方不明となっていたリィナ・アーシタを保護していたことが判明。一年戦争後は投資家として生計を立てていたことも明かされました。

 近年になっても新作フィギュアが発売されるなど、高い人気を保ち続けているセイラさんですが、『機動戦士ガンダム 劇場版III「めぐりあい宇宙編」』では、なんとセイラのシャワーシーンが新規作画で追加されており、このときのファンの熱狂ぶりはすさまじいものがありました。

 当時は映画館にカメラを持ち込み、このシーンを撮影していたマニアが多数いたといいます。その熱意には脱帽するほかありません。当時のファンが、どれだけセイラさんに夢中になっていたのかうかがえるエピソードです。筆者も多分、このシーンは死ぬまで忘れられない気がします。