主人公アムロをとりまく人物たちが描かれる、「機動戦士ガンダム III めぐりあい宇宙編」劇場版DVD(バンダイビジュアル)

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無能から一転有能なキャラクターに

『機動戦士ガンダム』を大人になってから観返すと、子供のころに観たときと印象がまるで異なるキャラクターがいることがあります。そのなかでも代表的なキャラクターを3人紹介します。

ゴップ

 機動戦士ガンダム第29話『ジャブローに散る!』に登場したゴップ大将は、視聴者が大人になって初めて、その価値に気付くという意味で典型的なキャラクターでしょう。地球連邦軍の拠点であるジャブローから出てこないため「ジャブローのモグラ」と揶揄(やゆ)されていましたが、将軍級の軍人は数が少なく育つのに数十年はかかるので、簡単に補充もできません。戦場で打ち取られた場合のダメージが非常に大きいため、むしろ最前線で指揮を執っていたレビル将軍の方が邪道といえます。

 また、子供のころは理解できませんでしたが、軍隊を動かすためには資金と物資の確保が非常に重要となります。コロニーを堕とされ穀倉地帯であるオーストラリアに大きな打撃を受けたうえ、落下による衝撃により津波が発生しており、世界各地の港湾施設及び船舶も多くが失われているはずです。

 このような困難な状況下で物資を整えて軍を再編し、反抗作戦の準備を整えるのは無能な人物には不可能です。また、ジャブローが攻撃を受けた際にも攻勢規模から狙いがホワイトベースであることを看破するなど、ゴップが極めて優秀な軍人/軍政家である事を疑う余地はないでしょう。

コンスコン

 第33話「コンスコン強襲」に登場したコンスコン少将も、かつてはジオン軍の提督たちのなかでは無能扱いされていましたが、後に評価が高まったキャラクターのひとりです。シャアを意識した言動が少々幼稚なために評価が落ちていることは否めませんが、ホワイトベース1隻とモビルスーツ3機およびGファイター2機(劇場版ではコア・ブースター)に対して、チベ級重巡洋艦1隻とムサイ級2隻およびリック・ドム12機をぶつけており、本来ならば圧倒的な勝利をつかめる戦力を保っていました。

 その計算を覆したのがアムロ・レイとガンダムです。このときのアムロはニュータイプとして目覚めていたため圧倒的な戦闘力を発揮し、12機中9機のリック・ドムを撃墜しています。他の3機もカイやセイラたちに撃墜され、コンスコンは撤退を余儀なくされました。続く第34話で6機のリック・ドムとパイロットを補充されたコンスコンは再戦を挑みますが、これまたアムロにせん滅され、乗艦のチベ級も撃沈されて、あえない最期を遂げました。もしこのときアムロがいなければ、ガンダムがなければ、コンスコンが勝利した可能性は高いはずです。



母親のカマリア・レイをはじめ、主人公アムロをとりまく人物たちの違った側面も描かれる、小説『機動戦士ガンダムI』(KADOKAWA)

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子供の頃に気づけなかった「大人の身勝手さ」

カマリア・レイ

 アムロの母親であるカマリアも、やはり子供のころに観たときと大人になってからでは見方が変わるキャラクターです。

 アムロとの再会直後は互いに喜び合い、カマリアもジオン兵からアムロを隠そうとするなど母親らしいところを見せていましたが、アムロがやむを得ずジオン兵を撃ったことにショックを受け、一転してアムロをなじったことに、子供心にも理不尽さを感じたものです。撃たなければ、もしかしたらアムロが撃ち殺されていたかもしれないのですから。

 ただ、子供のころは気づきませんでしたが、別れのシーンでカマリアの後ろにバイクを止めている男性が存在しています。後に富野由悠季監督が明かしたところによると、この男はカマリアの愛人とのこと。カマリアは夫であるテム・レイとは離婚しておらず、連邦軍の技術士官であるテムの地球居住特権を使い、地球に残っていると設定されています。

 アニメ版ではいつ愛人を作ったのかは不明ですが、小説版『機動戦士ガンダム』ではアムロの幼少期から関係を持っていた描写が存在しており、性的には奔放な人物であることには間違いなさそうです。

 恋愛は「個人の自由」と言ってしまえばそれまでですが、作中でも状況を理解しないセリフが多く、かなり身勝手な性格をしていると思われます。子供のころはよくわかっていませんでしたが、大人になってさまざまな設定を知ると、よくアムロのことをなじれたものだと呆れてしまうようなキャラクターだったことが理解できます。