第1話で2度も殺される主人公!?

「さあ、これから新番組が始まるぞ!」とワクワクしながら第1話を見始めてみたら、いきなりメインキャラクターが死んでしまった!? そんな衝撃的な展開から始まる、2023年春アニメを3つご紹介します。

【画像】え、死んだの…? アニメ界でもっとも有名な「衝撃の死亡シーン」を見る

『デッドマウント・デスプレイ』



現代の新宿に転生したネクロマンサーが、裏社会の荒事に巻き込まれていく『デッドマウント・デスプレイ』 (C)成田良悟・藤本新太/SQUARE ENIX・「デッドマウント・デスプレイ」製作委員会

 第1話の冒頭は、異世界で死霊使い(ネクロマンサー)と、英雄の騎士が激突している戦闘シーンから始まります。英雄の一撃でネクロマンサーがトドメの一撃を食らう瞬間、周囲一帯が光につつまれ、舞台は現代の新宿へ移り変わります。ネクロマンサーは、首をかき斬られて殺されたばかりの少年「四乃山ポルカ(しのやま・ぽるか)」の身体に転生して復活してしまうのです。

 この物語は、主人公の魂と肉体が、ふたつの世界で殺されたところから始まる物語なのです。

 四乃山ポルカを殺害したのは、セーラー服を着た美少女の崎宮ミサキ(さきみや・ミサキ)です。見た目はただの女子高生ですが、人を殺すことにためらいがない「殺し屋殺し」と恐れられる暗殺者で、ミサキは復活したポルカをもう一度殺すために廃ビルに追い詰めます。ところが死霊の力を借りたポルカに腹部を貫かれて、返り討ちに遭ってしまいます。

 そう、メインヒロインも、のっけから死亡する物語なのです。

 第1話で主人公(の肉体)がメインヒロインに殺されて、殺し返すシーンから始まるのは、なんとも斬新なボーイ・ミーツ・ガールです。物語はここから超人や怪人、一筋縄ではいかない警察も介入してきて、セオリーとは違った先が読めない展開を見せます。本作は分割2クールがすでに発表されており、腰を据えて楽しみたい異能バトルモノです。

【推しの子】



秘密を抱えた双子の兄が、芸能界に潜り込んで復讐を誓うサスペンスドラマ『【推しの子】 』 (C)赤坂アカ×横槍メンゴ / 集英社・【推しの子】製作委員会

 地方都市で働く産婦人科医の雨宮吾郎(あまみや・ごろう)は、12歳の若さで亡くなった患者の少女に影響されて、アイドル・星野アイのファンになっていた。そんな吾郎のもとに、応援していた星野アイが双子を妊娠した状態で診察に現れる───。

「推していたアイドルが妊娠して目の前にやってきた」という強烈な出だしで、掴みはバッチリ。「僕が産ませる、安全に、元気な子供を」と吾郎は彼女の主治医として全面協力するのですが、アイの出産日に、吾郎はアイのストーカーに山道で突き落とされて殺されてしまうのです。吾郎とアイのストーリーかと思っていた視聴者は呆然。

 第1話の中盤では出産から数年後、子供を世間に隠したまま、芸能活動を邁進するアイの眩しい輝きが描かれていきます。「なるほど、【推しの子】はアイと双子の子供によるアイドル&子育てストーリーなのか」という認識で見ていると……アイもまた、ストーカーの刃物で腹部を刺されて、そのまま息を引き取ることになるのです。

 TVアニメの第1話としては異例ともいえる1時間半の放送時間で、メインキャラのふたりが殺されてしまう。この強烈な前フリで、SNSでも阿鼻叫喚の盛り上がりを見せました。吾郎もアイもプロローグにすぎず、本編は、双子の兄が母親のアイを殺害に追いやった犯人を探す復讐劇となっていきます。第2話からも、こうしたジェットコースターのような先の読めないサスペンス展開が見どころな一作です。

(広告の後にも続きます)

第1話で二度も死亡!?

『神無き世界のカミサマ活動』



信仰のないファンタジー世界で、宗教を作って国家に反抗する『神無き世界のカミサマ活動』 (C)2023 朱白あおい,半月板損傷/ヒーローズ/カミカツ製作委員会

 樽に入れられて頭だけ出ている「黒ひげ危機一発」状態の青年が、半裸のマッチョたちに担がれて、暴風雨の中、海岸に運ばれる……そんな強烈な冒頭シーンで注目を集めたアニメが『神無き世界のカミサマ活動』です。青年の父親=怪しい宗教の教祖の命令で、荒れ狂う海に「修行」と称して樽に入れられたまま沈められる主人公……第1話が開始されてからたった2分すぎで、主人公が溺死してしまいます。

 そんな主人公の卜部征人(うらべ・ゆきと)が、「神」や「宗教」の概念がない異世界に転生するところから本編が始まります。国家から隔離された村で、気のいい青年や酒場の看板娘の姉妹たちと仲良くなり、心の安寧を見つける征人でしたが……二度目の波乱が訪れます。

 皇国に目をつけられた美人姉妹の姉が首を吊られて絞首刑に、妹は背中からバッサリ斬りつけられて、征人も腹部を貫かれる形で全員死亡。征人は、第1話の中で2度も死んでしまうのです。

 ここから、現世で崇めていた神様の「ミタマ」が降臨して、征人たちを復活させてくれるのですが、「うわー、中身が出ちゃってるよ」と独り言をつぶやくミタマ様。征人の内臓、飛び出ちゃってるんですね……。

 異世界ファンタジーと思われた舞台の謎が、第5話で明らかになるSF要素のあるドンデン返しも。何やら秘密を抱えている、クセの強い村人役に緒方恵美さんを起用している点など、物語を盛り上げる仕掛けが、そこかしこに散りばめられていて飽きさせません。

* * *

 さらに2023年春アニメの一作『勇者が死んだ!』も、タイトルそのままに、頼りがいのある勇者が落とし穴に落ちて死んでしまうところから始まる冒険譚です。

 作中でキャラクターを死亡させることは、視聴者の感情を刺激して、ストーリーを盛り上げる強力なスパイスになります。そんなキャラクターの死を第1話目から描くことで、強い興味を引き、視聴を継続させるという作り手の意図が見えてきます。漫才や雑談、プレゼンに限らず、アニメでも「最初の掴みは大事」ということでしょう。