ラインハルトの親友であり、彼の補佐役として行動をともにする、ジークフリード・キルヒアイス。画像は『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』 (C)田中芳樹/松竹・Production I.G

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もし生きていたら歴史はどう変わる?

※この記事の本文には、ネタバレになる要素が含まれていますのでご注意ください。

 累計発行部数1500万部、アニメ・マンガ・ゲームなどの題材にもなったベストセラーSF小説『銀河英雄伝説』。主人公であるラインハルトを支える多くの将官たちのなかでも、半身と言うべき、ジークフリード・キルヒアイスの存在感は大きなものでしょう。

 キルヒアイスはラインハルトの幼なじみ。ラインハルトの願いである「銀河帝国の後宮に入れられた姉・アンネローゼを取り戻し、帝国を打倒すること」を支え続けました。

 ラインハルト陣営において、常にナンバー2の地位にありますが、その優れた能力は「ラインハルトに匹敵する」と敵側の名将であるヤンも認めるほどでした。

 しかし、ブラウンシュヴァイク公爵が起こした「ヴェスターラントの虐殺」に対して、これを人道的観点から止めようとするキルヒアイスと、「政治的に利用して批判した方が早く戦争が終わる」と考えるオーベルシュタインが対立します。

 ラインハルトはオーベルシュタインの意見を採用し、かつキルヒアイスが「ラインハルトに取って代われるナンバー2」にならないよう、盟友ではなく、臣下として扱うべきだというオーベルシュタインの進言も取り入れます。

 公的な場での武器携帯も禁じられたキルヒアイスは、ラインハルトを暗殺しようとするアンスバッハの凶弾に気づくも、防ぐ方法がなく、主君を庇(かば)って亡くなるのです。

 もし、キルヒアイスが生きていたら、どうなったでしょうか。仮定として「ヴェスターラントの虐殺」で、キルヒアイスの意見を採用した場合を考えてみます。この場合、オーベルシュタインは左遷されることになるので、ナンバー2のままとなります。

 この場合、門閥貴族軍との戦争はやや長引くでしょうが、キフォイザー星域会戦で門閥貴族軍は大打撃を受けており、かつ将官の能力もラインハルト軍が上なので、それほど長引かずに戦争は終結したと考えられます。

 彼が生きていた場合、ラインハルトの負担はかなり軽減されます。ラインハルトは政治家としての側面と、軍人としての側面を持ちますが、キルヒアイスはどちらかを代行できたでしょう。

 なお、キルヒアイスは軍人としてもヤンが「付け入る隙がない」と認めるほどの人物ですから、ラインハルトがプライドで戦闘を続けようとしてヤンの詭計に陥ることもなく、自由惑星同盟軍側の見せ場はあまりなかったと考えられます。

 同盟征服後は、劇中ではロイエンタールが反乱を起こした「新領土総督」の地位に就き、かつ問題なくそれを成し遂げたでしょう。

 ここまで特に問題もなく、銀河統一を果たしますので、小説としての盛り上がりには著しく欠けると考えられますが、ひとつだけ不安要因があるとしたら、ヴェスターラントの虐殺がないので、ラインハルトはヒルダを妻にするきっかけがありません。女性に関心がないラインハルトですから、後継ぎがいない可能性すらあると思われます。

 その前提の上で、ラインハルトが何らかの理由でもし、早死にした場合は、銀河を手にしたものの、新銀河帝国が分裂する展開も想定できます。キルヒアイス自身が、アンネローゼを妻として(この場合、子どもがローエングラム王朝の血筋となりますから、正当性の観点からも、それ以外の選択肢はないでしょう)「銀河帝国2代目皇帝」に即位するなど、亡き親友の改革を継承する未来もあったかもしれません。