GAINAXはPC-98向けに「プリンセスメーカー」シリーズを発売していた。画像はガイドブック「プリンセスメーカー2 子育てファイル」(新紀元社)(筆者撮影)

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PC-98で特に名作が多いシミュレーションゲームたち

 1980年代から90年代にかけて、NECが発売したPC-9801シリーズ(以下、PC-98)向けに膨大な数のPCゲームが発売され、ユーザーを楽しませました。あまりにも数が多くすべては紹介しきれないため、その一部を振り返ります。

 PC-98のゲームを語るとき、絶対に外せないのが日本ファルコムと光栄(現:コーエーテクモゲームズ)でしょう。PC-98の前身であるPC-8801の時代から『イース』や『ドラゴンスレイヤー』『ザナドゥ』『ソーサリアン』など数々の名作を送り出していた日本ファルコムは、1991年から本格的にPC-98専用タイトルの製作へと移行。リアルタイムシミュレーションゲームの『ロードモナーク』や、マウスですべてを操作するアクションゲーム『ブランディッシュ』など、当時最先端のゲームを次々と発売しています。筆者個人として最も遊んだタイトルは、PC-88/98で発売された『ダイナソア』で、まるで『ベルセルク』のような暗く硬派な作風が印象に残っています。

 光栄のタイトルも、ことごとくが名作ぞろいです。「三国志」シリーズのなかでは『III』から『V』までがPC-98用に開発されていますが、初期のタイトルも移植されており、なかでも『II』は出色の出来だった印象があります。また私事ながら、初代『三国志』を遊んでいた時に火計で起こった火に巻かれ、関羽が焼け死んだときのことは忘れられません。

「信長の野望」シリーズは初代『信長の野望』から第4作『武将風雲録』までが移植され、第5作『覇王伝』と第6作『天翔記』がPC-98用に発売されています。当時、いったいどれだけの時間を溶かしたのか記憶にありません。

 後にアニメで有名となったGAINAXも、PCゲームを発売していました。特に赤井孝美氏が監督・脚本・キャラクターデザインを務めた「プリンセスメーカー」シリーズは新たに「美少女シミュレーション」というジャンルを確立し、後のさまざまなゲームに大きな影響を与えています。

 また、木村明広氏のデザインが印象的な『エメラルドドラゴン』のグラフィックも決して忘れることができません。PC-98以外にも多数のPCで発売された名作です。



日本ファルコムのアクションRPG『ソーサリアン』は、のちにメガドライブなどさまざまな機種に移植された。画像は「ソーサリアンのすべて 復刻版」(筆者撮影)

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アダルトジャンルで才能を開花させたクリエイターも

 そしてPC-98といえば、アダルトジャンルを外すことはできません。参入が容易だったため現在活躍しているクリエイターのなかにもアダルトから経歴を始めた方も多く、現在の日本のアニメやゲームにとって無くてはならない人材の供給源ともなりました。

 まずトップバッターとして挙げるべきは、やはりelfでしょう。多数のタイトルを世に送り出しましたが、中でも竹井正樹氏の名を世に知らしめた『同級生』の登場はアダルトゲームの世界を一段上に押し上げるインパクトを持っていました。また、続編となる『2』ではフロッピーディスクの枚数が11枚と2ケタに達しており、入れ替えがあまりにも面倒なため筆者がハードディスクの購入に踏み切るきっかけともなりました。おそらく同じ経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

 ほかにも『ドラゴンナイト4』の衝撃的な展開も忘れられません。間違いなく、当時のelfは最先端を走っていたメーカーでした。

「ランス」シリーズでお馴染みのアリスソフトも、やはりこの時代には膨大な数の個性的なタイトルを発売しています。さまざまなゲームやアニメのパロディ要素を織り込んだ『Only You 世紀末のジュリエットたち』や『ぷろすちゅーでんとG』、やり込み系RPGの『DALK』など、遊びごたえのあるタイトルが続々と登場したのもPC-98の時期でした。

 当時アーケードを中心に大流行していた対戦格闘ゲームでも、劇画の『ヴァリアブル・ジオ』やフォレストの『人形使い』など傑作が発売されています。アーケードと比較してグラフィック機能に劣るPC-98で遊べる対戦格闘ゲームを発売した開発者たちの技量と情熱には頭が下がる思いです。

 しかし筆者が最も大きな衝撃を受けたタイトルといえば、leafの『雫』になるでしょう。
水無月徹氏がデザインした個性的なヒロインたちと、髙橋龍也氏が紡ぎあげた狂気に満ちたストーリーは、「ビジュアルノベル」の名前を世に知らしめました。続いて発売された『痕』『To Heart』も大傑作で、当時の筆者はこの3作品にどっぷりつかっていました。

 なお、現在もおふたりはクリエイターとして活動中で、特に高橋氏はアニメの脚本家及び脚本家を統括するシリーズ構成という役職で大活躍中です。当時leaf作品を楽しんでいた方も、気づかないうちに高橋氏が手掛けたアニメを見ているかもしれません。