画像は画像はAndroid版『ファイナルファンタジーII』(スクウェア・エニックス)

【画像】ああ、涙腺が…! 『FFII』と『DQIV』の名シーンを振り返る(6枚)

ファミコン少年たちが涙したワケ

『ウィザードリィ』などの名作がコンピュータRPG(以下、RPG)の道を切り開き、国内では『ドラゴンクエスト』(以下、DQ)や『ファイナルファンタジー』(以下、FF)の存在が同ジャンルの普及に貢献しました。

 RPGを知らなかった当時のゲーム少年たちは、『DQ』や『FF』でその基本に触れ、魅了されます。そして、どちらのシリーズも作品数を重ねるごとに奥深さを増し、進化を遂げていきました。

 特にシナリオの進化は目覚ましく、物語に没頭するユーザーも続出。グラフィック表現に限界のあるファミコン時代ですら、作中のドラマに涙腺を刺激されたものです。

 思わず泣かされた作品はプレイヤーによってまちまちですが、ファミコン時代のRPGだと、特に『DQIV』と『FFII』に涙した方が多く、心を震わせた名作として知られています。いずれも親しい者の死を通して感情を揺さぶりますが、扱い方や切り口には大きな違いがあり、そのため「どちらがより泣ける作品なのか」とよく話題に上がったものです。

 この『DQIV』と『FFII』は、どのように涙腺を刺激したのか。名作の泣きポイントを、要点を押さえてお届けします。

背中で語る男たちの生き様に涙した『FFII』

 敵と戦うことが多いRPGは、死と隣り合わせにあります。しかし、ゲームなのでちゃんと遊べば勝てますし、仲間が死んでも魔法や施設などで復活可能です。

 こうしたRPGのルールになじみ始めたプレイヤーの心を撃ち抜いたのが、『FFII』です。本作では一般のキャラだけでなく、パーティメンバーですら回避できない「死」に見舞われます。仲間が死んで復活できない、という状況に慣れていなかった当時の少年少女は、思わぬ悲劇に幾度も涙を流しました。

 最初に命を落とした仲間は、素手で戦う「ヨーゼフ」。戦闘力はかなり高く、仲間入りした彼の頼もしさは格別でした。しかし、主人公たちを守るために転がる大岩をひとりで受け止め、その下敷きに……信頼にどこまでも応えてくれた彼が、まず帰らぬ人となります。

 序盤の一時期だけ仲間になった「ミンウ」は、まだ主人公たちが満足に育っていない頃、会得済みの白魔法で力強くサポートしてくれました。いつか彼のように白魔法を使いこなそうと、密かな目標にした方も多いはず。ですが、ミシディアの塔で再会した時、究極魔法の封印を解くため、ミンウは持てる力の全てを使い果たして絶命します。白魔法で、多くの命を救ったミンウ。そんな彼を救う白魔法だけは、どこにもなかったのです……。

 竜騎士の「リチャード」も、パーティ加入時点ですでに高い戦闘力を誇り、主人公らを大いに助けてくれます……その最後の瞬間まで。恐るべき皇帝との戦いの際、勝ち目がないことを悟った彼は、単身で強敵へと立ち向かいます。それは全て、主人公たちを逃がすため。竜騎士の気高さは、死を前にしても決して揺らぎませんでした。

 一般のキャラだけでなく、パーティメンバーですら命を落とした『FFII』。しかも命を落とした3人は、いずれも壮年の男性ばかり。言葉少なく、その背中で多くのことを語った彼らの生き様が、プレイヤーの頬を濡らしました。



画像は『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』(スクウェア・エニックス)

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主人公と宿敵は、誰よりも近しいふたりだった!?

『DQIV』のデスピサロに、憎しみ以外の感情が湧いたあの時

『DQIV』も大事な人の死を通して心を揺さぶりますが、その方向性は『FFII』とかなり異なっています。パーティメンバーの多くは誰かの死や悲しい出来事を経て、世界を救う戦いに身を投じました。その中でも特に顕著なのが、第5章の主人公です。

 とある事情から両親がいない主人公は、村人や幼なじみの「シンシア」に囲まれて暮らしていました。しかし、「勇者」を抹殺しに来たデスピサロにより、村は壊滅。シンシアも主人公の身代わりとなって命を落としますが、その犠牲のおかげで主人公は命を永らえます。

 主人公を通してこの体験を味わったプレイヤーは、当然デスピサロを憎み、敵討ちを誓ったことでしょう。しかしその純然なる怒りは、ある展開を経て、複雑なものへと変化します。

 魔族のデスピサロは、もともと人間と敵対する立場にありました。ですが、それが決定的となったのは、彼にとって大切な人物「ロザリー」が人間に殺されたため。彼女の死をきっかけに人間の根絶やしを決め、恐るべき化け物となる道へと踏み出しました。

 大事な誰かを踏みにじられた、怒りと悲しみ。あれほど憎かったデスピサロが、まさか同じ感情を抱いていたとは……当時のRPGはシンプルな勧善懲悪が多かったなか、主人公と敵を鏡合わせのように描写したシナリオ運びは秀逸の一言でした。

 悲しいのか、苦しいのか、許したいのか、救われたいのか。……複雑に入り組んだ感情に名前はなく、ただ目から涙が流れ落ちたあの日。デスピサロは敵でありながら、もうひとりの自分でもありました。

 命を通して、物語に深みを与えた『DQIV』と『FFII』。いずれも素晴らしい作品ですが、あなたにとってはどちらがより泣けた作品だったか、改めて思い出してみてはいかがでしょうか。