歴史と文化が息づく角館や、自然を満喫するアクティビティいっぱいの田沢湖、四季の移り変わりが美しい、魅力あふれる秋田県・仙北市。暖かい季節のイベントに注目が集まりがちですが、観光客が少ない雪景色のオフシーズンをねらうのもおすすめ。じっくり、のんびり、旅が楽しめます。

混雑を避けて、冬ならではの体験を。ローカルにも愛されている仙北市の隠れた人気スポットやスノーアクティビティを楽しむ、1泊2日の旅へ出かけましょう。

※価格は税込み表記です。

〈1日目 角館〉
「有頂天喫茶」で飴色の世界を堪能

秋田空港までのフライトは、羽田空港・札幌丘珠空港からはそれぞれ約1時間、伊丹空港(大阪国際空港)からは1時間半ほど。空港に到着したら、1時間ほど車を走らせ角館に向かいます。

到着したのは、「有頂天喫茶」。武家屋敷通りを少し外れた雑居ビルの中、廊下の突き当たりで、ひっそりと客人を迎えてくれます。

レコードから小さくジャズが流れる店内は、日常から切り離されたかのような落ち着く空間。店主の飯高三枝子さんが幼い頃に憧れた、どこか秘密めいた飴色の純喫茶をイメージしているそう。食器や調度品は実家に眠っていたものや古道具屋で揃え、古いものを大切に使い続けているのだとか。

一度食べるとやみつきになると評判の「ナポリタン」

名物の「ナポリタン」(700円)は、2.2mmの極太麺が、まったり濃厚なソースに絡んで食べ応え満点。「東京のいろいろな喫茶店を食べ歩いて、中毒性のある味に辿り着いた」と話す飯高さん。シンプルながらも、まろやかな甘みとコクを感じる複雑な味わいに仕上がっています。

「プリン」と「コーヒー」(各400円)

ブラジル産「ハニーショコラ」とガテマラ産「ステイゴールド」をブレンドした自家焙煎のコーヒーは、ネルドリップで1杯ずつ丁寧に抽出。プリンは120年前のレシピをアレンジしたもので、卵がたっぷり入っています。昔懐かしい固めでリッチな味わいが、深煎りのコーヒーにぴったりです。

店名の「有頂天」は、仏教の世界観のひとつ「欲もなく 色もなく 無の世界」を意味し、日常を忘れられる空間を願ってつけたとのこと。「だけど本当はね……」と本当の由来もこっそり教えてくれる、チャーミングな店主との会話も楽しめる喫茶店です。

有頂天喫茶

住所:秋田県仙北市角館町上新町3 しんまちビル1階電話:0187-42-8675営業時間:11:00~19:00定休日:木曜・金曜web:有頂天喫茶 公式サイト

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静寂に包まれた、雪の「武家屋敷通り」を散策

「有頂天喫茶」から車で1分ほどで見えてくる「武家屋敷通り」。町割400年、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された町並みが今に残されています。花見や紅葉の季節は観光客で混み合いますが、冬季は一転して静寂に包まれ厳かな雰囲気。江戸時代から変わらない黒板塀と真っ白な雪のコントラストを散策すれば、当時の生活に思いを馳せずにはいられません。

現在公開されている武家屋敷は6軒で、武士の階級によりその造りはさまざま。冬季は3軒が一般公開されています。その中でも多数の学者や事業家を輩出した河原田家(かわらだけ)は、角館武家住宅の典型的な造りとなっており見どころがいっぱいです。

来客の身分によって複数の玄関を使い分けた武家屋敷。正玄関はこの家の主人よりも身分の高い人を迎えるときや、冠婚葬祭など特別なときのみ使われました。

秋田の画人、三森山静によるコイの襖絵

出世を意味する蝶々や福を意味するコウモリをモチーフとした釘隠しや欄間など、縁起が良いものを好んだ武士たち。屋敷の随所に、ゲンを担いだモチーフがちりばめられています。

第17代当主の同級生である宮沢賢治から、結婚祝いとして送られたユリノキ

縁側に土縁を設け、外の冷気を遮断する北国ならではの工夫も。敷地内にはシダレザクラやカツラ、マツなどのほか、成長が早く縁起の良いモミの木もたくさん植えられており、雪景色の庭園が楽しめます。

案内人の佐川さん。各部屋を回りながら解説していただけます

解説を聞きながら、細部までじっくりと見学できるのがこの時期の魅力です。河原田家のゆかりの品や歴史的資料を展示した展示室も公開されています。

武家屋敷通りの飲食店で熱々の玉こんにゃくや甘酒を楽しみながらの散策も、寒い時期にだけ味わえる醍醐味です。

武家屋敷 河原田家

住所:秋田県仙北市角館町東勝楽丁9電話:0187-55-1500営業時間:9:00~17:00(入館16:30まで)、冬期:9:00~16:30(入館16:00まで)観覧料:大人(高校生以上)500円、小人(小中学生)300円、未就学児無料定休日:12月28日~1月4日web:武家屋敷 河原田家(田沢湖角館観光協会 公式サイト)