2024年NHK大河ドラマ「光る君へ」の主人公で、吉高由里子さん演じる紫式部が書いた「源氏物語」。2000年以上、多くの人々に読み継がれ、さまざまな人が独自の解釈をして映画・ドラマ・小説・漫画などでいろいろな作品で表現してきました。
日本最古の長編小説『源氏物語』ですが、煩悩の産物でけしからん!といわれ、それを生み出した紫式部は「架空の話で人々を惑わせた罪で地獄に堕ちた」……という考えが生まれたのです。
想像から生まれた物語は嘘と同じという考え
【前編】では、平安時代は「嘘はいけない」という仏教の教えがあり、想像の世界から生み出された文学は「嘘」として解釈されたため、「源氏物語」は煩悩から生み出された想像の産物で、虚構の物語を紡ぎ人々を夢中にさせた紫式部は堕落した人間で地獄に堕ちたという考えが生まれた……ということをご紹介しました。
前編の記事はこちら:
平安末期の仏教説話集『宝物集(ほうぶつしゅう)』、鎌倉時代中期の説話集『今物語』にもそのような記述が残っているそうです。
『今物語』には「作り物語の行方」という章があり、ある人の発言で「源氏物語は事実ではなく、あだめいた(なまめかしい)ことを書いているので、紫式部はあの世で灼熱地獄に堕ちて苦しんでいる」とし「紫式部の供養をしたい」と述べる……とあります。
源氏物語と紫式部を供養する「源氏供養」
壮大なスケールの作り話である「源氏物語」は罪深く、それを書いた紫式部もけしからんので、地獄で苦しんでいるに違いない……そんな背景から生まれたのが「源氏供養」でした。