同時にスポーツ通訳になるための明確な決まりや資格もないのです。
こうした現状を変えようと立ち上がったのが、「一般社団法人スポーツマネジメント通訳協会」です。
動き出したスポーツ通訳の資格「スポーツバイリンガル検定」
2024年3月下旬、東京・四ツ谷で「スポーツバイリンガル検定」という試験が開催されました。
通訳を目指す人を対象とした競技のルールや用語、専門的な知識の理解力と語学力を試す試験です。
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今回は、野球に特化した内容が出題されました。
配点としては筆記50点、リスニング50点満点で構成されています。
筆者も実際に試験を受けてきましたが、野球の専門用語やルールを問う筆記問題と野球用語を説明する聞き取り問題がありました。
約1時間の短時間かつ、野球好きなら楽しみながら受験ができるのではないでしょうか。
試験後、「一般社団法人スポーツマネジメント通訳協会」の事務局長と渉外本部長を兼務する篠田和徳(しのだ・かずのり)さんにお話を聞きました。
篠田さんは高校球児として、甲子園を目指して白球を追っていた野球経験者です。
「2023年4月、通訳や翻訳、外国語人材派遣サービスの『吉香』と世界的なスポーツ人材の育成と輩出を目指す『株式会社Athlete for Life』とで新しい事業を始めようとした時、ふとスポーツ通訳やそれらをまとめる団体があるのか?という疑問から始まりました」と、団体誕生のきっかけとなった1年前を振り返ります。
こうして両社の強みを生かすかつ、アスリートだけでなく、スポーツ通訳という仕事の選択肢を広げるために生まれたのが「一般社団法人スポーツマネジメント通訳協会」だったのです。
スポーツ通訳者を育成することが目的の同団体ですが、通訳だけではなくスポーツマネジメントという文字も入っています。
その理由として篠田さんは「通訳者はただ言語ができればよいというだけでは成功はできません。通訳者は選手個人だけではなく、選手の家族の支援やその他多くの業務も担うことになるので、マネジメント能力も必要になってきます。そのために団体の名前に『スポーツマネジメント通訳』と入れています」と力強く話しました。
「スポーツバイリンガル検定」のこれから
一般社会において、資格を得ることは就職や自己アピールのために大きな武器になります。
語学試験ではTOEICや英検などが有名です。
その他、外国語でも現地政府公認試験もありその種類も多種多様です。
新たに誕生した「スポーツバイリンガル検定」は、スポーツ通訳者になるための第一歩としての立ち位置です。
篠田さんは今後のスポーツ通訳資格の構想についても話しています。
「2025年以降は今回のスポーツバイリンガル検定に加えて、スポーツマネジメント通訳資格の試験も始める予定です」
スポーツバイリンガル検定で筆記40点以上、リスニング45点以上だった受験者は、2025年から開始予定の「スポーツマネジメント通訳」の受験資格を得ることができます。
そしてこの試験に合格すれば、晴れてスポーツチームで通訳者として活躍できる能力を証明することができ、履歴書にも記載が可能になるとのことです。
既にスポーツバイリンガル検定ができたことにより、現役通訳者からは「やっとこのような資格ができた」と喜びの声が挙がっているといいます。
そして後にスポーツマネジメント通訳資格を得た人々がチームスタッフに入ることで、通訳者としての信頼度を高めることも目指しています。
「今後はライセンスを得るという明確な目標ができたことで、スポーツ通訳者を目指す人が増えることを期待します。それがチームや選手を支えることにも繋がりますし、私たちとしても『スポーツマネジメント通訳』を国家資格にできるように頑張っていきます」と、目を輝かせながらこれからについて話していた篠田さん。
これからの動きとして、2024年5月からスポーツバイリンガル検定の毎月開催を目指します。
また、同検定の認知度アップと同時に2025年7月頃から始まるスポーツマネジメント通訳資格の試験開始に向けても準備していくとのこと。
最初は野球に特化した試験から始まったこの試験。
今後は回数を重ねていく中で、サッカーやバスケットボールなどの他競技に関わる人も受験できるように機会を広げる考えもあるそうです。
篠田さんはじめ「一般社団法人スポーツマネジメント通訳協会」の新しい挑戦が続きます。
それは「戦う通訳を、もっと日本に」というモットーを実現するために一丸となって前進します。