今、ガザ地区最南端ラファ地区に100万人を超えるガザ民間人が避難している。塀を挟んで真隣のエジプトが、ガザ地区での今後の事態推移の鍵を握る(写真:EPA=時事)
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!
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――ガザでの紛争開始から半年の月日が過ぎようとしています。イスラエルのネタニヤフ首相の考えているこの戦いのゴールとは一体何なのでしょう?
佐藤 ハマスの中立化です。それが実現すれば、ガザ紛争は一応終わることになります。ただし、の後、オスロ合意の実現は無理になったという現実を踏まえた”ゲームの転換”が起こります。
――どうなるのですか?
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佐藤 おそらく、パレスチナ解放機構(以下、PLO)の各派も腐敗していて、実力の無いファタハではガザを治められません。なので、まずはPLOの再編が起きると思います。そうなると、鍵を握るのはエジプトです。
――エジプトが……。
佐藤 エジプトが武力を大幅に弱体化されたイスラム聖戦やハマスの残党を入れた形で新しいPLOを作ります。イスラエルもパレスチナも、パレスチナ地域での合法国家は自分たちだけだと主張するようになります。
そして、「あそこは自分たちの土地だ」と主張して、「実態として二国が共存するにもかかわらずお互いにその存在を認めない」という構図になる可能性は十分にあります。
――それはまさにゲームの転換です。
佐藤 ポイントはエジプトです。これは簡単な話ではありません。力の空白が出てきたら、その地域の中で力が一番ある国家が出て来るわけです。