どんな父親であろうと、事情があろうとも、その死を悼まないとは人としていかがなものでしょうか。
そんな夫に愛想を尽かした藤原繁子(山田キヌヲ)は、娘の藤原尊子(愛由)と共に出て行ってしまいました。
※合わせて読みたい:
広告の後にも続きます
その後、繁子は正暦3年(992年)ごろに平惟仲(佐古井隆之)と再婚。藤原詮子(吉田羊)や道長の庇護を受けます。
寛弘2年(1005年)に惟仲が世を去ると好明寺に隠棲するも、道長からは大切にされたそうです。
歳をとっても若い者から大切にされるなんて、とても羨ましい……そう思ったのか、清少納言は『枕草子』に彼女を「うらやましげなるもの(羨ましいもの)」として取り上げました。
……内、春宮(とうぐう)の御乳母(おんめのと)。上の女房の、御方々いづこもおぼつかなからず、まゐりかよふ。……
【意訳】内裏や春宮の乳母・繁子。彼女はどこにでも御目通りが許されていて、参上できる。
また、娘の尊子は一条天皇(柊木陽太)に入内し、暗戸屋女御(くらどやのにょうご)などと呼ばれました。
藤原実資の後妻・婉子女王
桐子(源惟正女/中島亜里沙)に先立たれてしまった藤原実資(秋山竜次)の妻・婉子女王(えんし/つやこ。真凛)。
彼女は為平親王の娘で、源明子(瀧内久美)らの姪に当たります。
元は花山天皇(本郷奏多)の女御でしたが、寵愛はかなく疎まれてしまい、花山天皇の出家後は実資と再婚していました。
ちなみに、彼女は長徳4年(998年)に亡くなってしまうため、今の内に仲睦まじい夫婦仲を堪能しておきたいですね。
なお、実資の妻には源頼定乳姉妹(よりさだのめのとご。乳母の娘)が確認されており、晩年に最愛の娘・藤原千古(ちふる/かずこ)を授かります(諸説あり)。
これからも愚痴を日記に書き連ね、夫婦のかけ合いを楽しませてくれることでしょう。
「この張り具合♪」
「腹をつかむな!」
……実際の実資はどうだったのか、気になりますね。
和歌の会で披露された一首
秋風の 打ち吹くごとに 高砂の
尾上の鹿の 鳴かぬ日ぞなき
高階貴子(板谷由夏)が、愛する我が子・藤原伊周(三浦翔平)の妻探しを目的に開いた和歌の会。かつて男性陣が漢詩の会を開いたのと対照的ですね。
さて、劇中で披露されたこの和歌は平安中期の勅撰集『拾遺和歌集』に収録されています(詠み人知らず)。
意味するところは「秋風が吹くたびに、高砂の峰にいる鹿が鳴かない日はない」。転じて「あなたを恋しく思い、泣かない日はない」と読めるでしょう。
賑やかしの審査員?コメンテーター?として呼ばれた出すぎ者二人(もちろん、まひろとききょう)。既婚者のききょうはともかく、まだ結婚していないまひろとしては、気が気ではありません。
この中に意中の女性がいたのかどうか、藤原伊周の妻は見つかったのでしょうか。顔がアップになったあの女性が今後も登場するのか、注目したいところです。
ききょう(清少納言)の離婚
内裏に女房として出仕したい意欲を見せる”ききょう”。夫も息子も捨て、自分のために生きたいという彼女に刺激を受けるまひろでしたが、一面その自由ぶりを羨んでいる節も見受けられました。
今後、ききょうの活躍はたくさん見られるでしょうから、今回は捨てられた?夫・橘則光(たちばなの のりみつ)について軽く触れておきましょう。
橘則光は康保2年(965年)、橘敏政(としまさ)と右近尼(うこんのあま)の間に生まれました。
母は花山天皇の乳母であったため、自身も乳兄弟として相応に扱われたものと考えられます。
しかし寛和2年(986年)に花山天皇が突如出家してしまったこと(寛和の変)から一転冷遇されたことでしょう。
長徳元年(995年)に六位蔵人として政界デビューを果たすと、のちに修理亮(すりのすけ)や左衛門尉(さゑもんのじょう)などを歴任します。
盗賊の襲撃を受けるも返り討ちにするなど武勇と胆力にすぐれた則光でしたが、風流に関することは苦手だったそうです。
気の利いたことが言えないあまり、口にワカメを詰め込んで難を逃れたエピソードが伝わっています。
才知に富んだ清少納言がそんな夫に満足できるはずもなく、一子・橘則長(のりなが)を授かるも離婚してしまったのでした。
ただし互いの交流は続いていたようで、藤原斉信(金田哲)の家司を務めるなどしていることから、今後登場するチャンスがあるかも知れませんね。
第15回放送「おごれる者たち」
兼家の死によって幕を開けた道隆の独裁政治。天皇陛下さえ「よし」とすれば、閣僚の議論は一切くつがえすことができる悪しき前例が生まれてしまいました。
果たしてこの流れに、道長はどう立ち向かっていくのでしょうか。そして苦境のまひろはも、自分の進むべき道を信じることができるのでしょうか。
第15回放送は「おごれる者たち」、久しからずとは知りながらも、しばし苦難の季節が続くようです。
過酷な現実に立ち向かうまひろや道長たちに、今後も注目していきましょう。
トップ画像:「光る君へ」公式サイトより