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2つのゴールを目指す画期的なスポーツ指導法。「勝利がすべて」は百害あって一利なし!

パラサポWEB

せっかくスポーツに取り組んだにもかかわらず、コーチをはじめとする指導者の心ない一言や指導によって挫折し、スポーツが嫌いになってしまう子どもが少なくない。そんな若い世代のスポーツにおけるコーチングとして注目を集めているのが“ダブル・ゴール・コーチ”。それはいったいどういうことなのか、コーチングの教科書として絶賛されている書籍『ダブル・ゴール・コーチ 勝利と豊かな人生を手に入れるための指導法』(鈴木佑依子訳・東洋館出版社刊)から紹介しよう。

勝利がすべてという考えは、百害あって一利なし

ユーススポーツの盛んなアメリカでは、育成年代のコーチングのメソッドについて様々な提唱がなされている。中でもスポーツによって、ポジティブな人格を形成する環境を整える取り組みを行っているPCA(ポジティブ・コーチング・アライアンス)の活動は評価が高い。ここで紹介するのはそのPCAの創始者であり、リーダーシップやコーチングの研究者であるジム・トンプソンが生み出した“ダブル・ゴール・コーチ”という指導法。詳細に記した前述の著書は翻訳されて日本でも多くの読者を得ている。

まず、この“ダブル・ゴール・コーチ”とはいったいどういうことなのか。なぜそれが若いアスリートの指導法として高い支持を得ているのか。それは、スポーツをすることのゴールをただ“勝つ”というひとつのゴールのみにしないこと。ゴールを2つ(ダブル)設定することによって、アスリートがより人間的に成長できるというのが理由だ。

まず最初に変えなければならないのは、監督や保護者の行動を決定する「勝利がすべて」というメンタルモデルである。
「勝利がすべて」は、百害あって一利なしだが、単純に排除することは困難である。私たちが望むような結果を出すためには、それを排除しようとするのではなく、よりよいモノに置き換える方が有効だ。勝利至上主義の代わりになるモデルとして、PCAは、勝つことを目指しつつ(一番目のゴール)、スポーツを通じて人生の教訓や健やかな人格形成のために必要なことを教える(二番目のゴール。ただし一番目のゴールより重要)「ダブル・ゴール・コーチ」のモデルを考案した。
(ジム・トンプソン・著/鈴木佑依子・訳『ダブル・ゴール・コーチ 勝利と豊かな人生を手に入れるための指導法』東洋館出版社より)

スポーツに取り組むからには、もちろん勝ちたいし、パフォーマンスをアップしたいのは当然だ。しかし、目的がそれだけになると、コーチは失敗したり良い成績が出せないアスリートを叱責する。度が過ぎれば、そのアスリートの人生さえ否定しかねない言葉が飛び出す。それは、ユーススポーツのゴールではない。

「ユーススポーツの真の価値は、グラウンドで頑張ることを通じて、人格形成に資することを子供たちが経験することである。その経験は将来、仕事・価値観・市民としての責任・家庭生活などにおいて活きてくる」とジム・トンプソンは主張する。

だから、ユーススポーツに取り組む目的は

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第一の目的:勝つこと
第二の目的:人生の教訓

とふたつに設定する必要があるのだという。

これは、少し考えれば至って正しいことがわかる。スポーツが大好きという若者は多く、中にはプロになって活躍したいという希望をもつ子も少なくないだろう。しかし残念ながらプロになれる確率は必ずしも高くはない。さらに、一流と言えるような成績を残す確率となれば言わずもがなだ。だとすれば、勝つことだけを目標にスポーツに打ち込むことは、その後の人生の意味を失うことに繋がりかねない。そうならないためにも、第二の目標が必要なのだ。

勝者とは何か?

スポーツをする際に、常に2つの目的を意識すること。それを提唱したジム・トンプソンによるコーチモデルの原則は3つある。そのひとつはまず「勝者」とはどういうものか、「勝者になるというのはどういうことか」を再定義することである。“ダブル・ゴール・コーチ”では、単純にスコアボード上で勝った人だけを勝者とはしていない。もうひとつ「熟達の勝者」という定義を提唱している。

得点指向性では他者との比較、試合結果、失敗の回避が重視される一方、熟達というコンセプトでは努力、学習、改善、そして失敗にどのように対処するかが重視される。熟達の重要な要素を監督、保護者、そして選手の皆さんに覚えていただくために、次の合い言葉を考案した。熟達の木はELMツリー(楡[にれ]の木)。EはEffort(努力)、LはLearning(学習)、そしてMはMistake(ミス、失敗)をしたときにどのように対処するか、である。
(ジム・トンプソン・著/鈴木佑依子・訳『ダブル・ゴール・コーチ 勝利と豊かな人生を手に入れるための指導法』東洋館出版社より)

このELMツリーだが、楡の木を英語でELM(エルム)と言うため、コーチがアスリートを指導する際には、熟達の木に登ること=Effort(努力)、Learning(学習)、そしてMistake(ミス、失敗)をしたときにどのように対処するかを意識することとして丁寧に説明するようにと、ジム・トンプソンは語っている。

「熟達」の勝者になることを目標にすると、アスリートは不安感が減少し自信が増すことが多いという。努力や学習は、自分の力でどうにでもなる。たとえミスをしたとしても、どう対処するかを考えることが重視されるからだ。不安感が減少すると、以前よりも競技が楽しいとアスリートは感じるようになるとジム・トンプソンは語っている。実際に、熟達することに集中していると、スコアボードの数字を気にしている場合と比べ、選手たちはより早く上達するという研究結果も出ているそうだ。

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