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風間トオル、デビューから42年ーー。「現場、現場で、人としてどう生きるのか教わってきた」

SmartFLASH

 20歳のころにはじめてステーキを食べたんですが、こんなに噛まなきゃいけないのかと思って、しばらく肉は食べていなかったんです。その後、焼き肉を食べたら、薄いからあまり噛まなくていいし、とても美味しい。それから肉が大好きです。子供のころはあまり食べられなかったので」

 

 風間は早くに両親と別れ、祖父母のもとで育った。

 

「骨を強くして丈夫にしようと思ってくれたようで、毎日焼いた魚の骨を食べさせられていて……よく喉に骨がつっかえて痛くて、しばらくトラウマになっていました」

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 高校2年生のときにはアパートを借り、一人暮らしをはじめて、生活費から学費まで自分で稼いで暮らすようになった。アルバイトをいくつもかけ持ちし、睡眠時間は2時間ぐらいだった。

 

「早く自分で稼いで好きなものを食べたい、早く大人になりたいと思っていました。まかないが付くので飲食店のアルバイトや、あとは住んでいた川崎は日雇いの仕事が多かったんです。当時は年齢確認も厳しくなかったので、港でワインを箱詰めする作業などをやっていました。学校や、移動中に寝ていましたね」

 

 そんな風間に、ある日、転機が訪れる。バイトをしていた表参道の飲食店で雑誌「ファイン」の撮影がおこなわれ、厨房でトロピカルドリンクを準備していた彼は「モデルをやりませんか?」と編集者からスカウトされた。

 

「モデルなんてわからないし、怪しい気がした(笑)。でも、その女性編集者の方が沖縄出身の方で、しゃべり方が人懐っこくて非常に優しかった。それでこの人なら大丈夫かなと、バイト感覚でモデルの仕事をはじめることにしました」

 

 当時、サーフィンに興じていた風間は、自分のボードを持参してロケバスで撮影場所の海に連れて行ってもらったという。

 

「モデルという意識はなかったです。昼食を出してもらってお金ももらえるし、帰りは海で降ろしてもらって、波乗りを楽しんでから帰る。

 

 こんな美味しい話があるんだなって思いました」

 

風間トオル

 

 そして1986年に雑誌「メンズノンノ」が創刊されると、専属モデルとなった風間は阿部寛とともに一躍、人気モデルとなる。

 

「渋谷の駅前にダーンと大きなポスターが貼られているのを見たときは『あっ、俺だ』と思ってびっくりしましたね。『メンズノンノ』の影響は大きかったです。仕事も増えましたし、ファンレターもいただくようになりました。あと、知らない間に僕の電気代とガス代をファンの人が1年ぐらい払ってくれたことがありました。郵便受けから抜いて払ってくれていたみたいなんですけど、今考えると怖いですね(笑)。有名になると、こんなこともあるんだと驚いていました」

 

 風間は阿部と二人で、雑誌の対談ページを持つことになり、あるとき浅野ゆう子がゲストに登場した。

 

「ゆう子さんに『今度、主演ドラマがあるのだけれど、出てみませんか?』と言われて。役者なんてやったことがないから、お断わりしたんです。

 

 でも、この対談がきっかけでゆう子さんとテニスをご一緒するようになって、お会いするたびに『ドラマやってみない?』と誘ってくださって。何度もお声がけいただけるのはありがたいことなので『ちょっとやってみます』とお返事して出演したのが『ハートに火をつけて!』なんです」

 

 浅野の熱烈なスカウトで、風間は役者の道へ進むことになる。だが、演技の経験がなく、あまりの仕事の多忙さでレッスンに通う時間もない彼にとって、芝居はどうやればいいのかわからない。 “先生” は現場の先輩たちだった。

 

「その現場、現場で覚えるという感じでした。一緒の現場が多かったゆう子さんの立ち居振る舞いを見せていただいたり、『大誘拐 RAINBOW KIDS』(1991年)という映画でご一緒した緒形拳さん、樹木希林さん、北林谷栄さんと共演できたことも大きかった。1カ月ほどご一緒させていただいて、人としてどう生きるかということを教えていただきました」

 

 その後も多くの作品に出演し、化学担当の宇佐見役を演じるドラマ『科捜研の女』は、8月16日スタートの第23シーズンで、出演13年めを迎える。

 

「出演者はやっちゃん(沢口靖子)を中心としたファミリーみたいな感じ。撮影は京都でおこなわれるので、京都に入ると気持ちがリセットされて集中できます。台詞を自分で録音して、音楽のように耳から聴いて覚えるんです。体を動かすのが好きなので、台詞を聴いてブツブツしゃべりながら、朝の鴨川をランニングしています」

 

 8月19日で61歳になったばかり。変わらないスタイルを維持しているが、「年は感じます」と笑う。

 

「『科捜研の女』の撮影と並行して、舞台『最高のオバハン 中島ハルコ』の稽古をしています。ダブルキャストで謎のマジシャンを演じていて、大地真央さんとダンスを踊るシーンが多いんです。同じ役を20歳ほど年下の渡辺大輔くんが演じているので、ダンスのキレが違うんですよ(笑)。俺も同じキレで踊らないと真央さんにご迷惑がかかるので必死です」

 

 今後やってみたい仕事を聞いてみた。

 

「まだミュージカルをやったことがないので、この経験を生かして挑戦してみたいですね。『科捜研の女』のようなシリーズ作品に出演させていただくことが多いんです。役は同じでも、年を重ねていくことで違った演じ方ができると思う。これからもそんな自分を楽しみながら演じていきたいですね」

 

 現場を糧に新たな芝居で魅せる。

 

かざまとおる
1962年8月19日生まれ 神奈川県出身 1981年にモデルとしてデビュー後、「メンズノンノ」などで一躍人気に。1989年ドラマ『ハートに火をつけて!』(フジテレビ)で俳優デビュー。トレンディドラマに数多く出演するほか、『はみだし刑事情熱系』シリーズ(テレビ朝日、1996年〜2004年)などにも出演。8月16日スタートの『科捜研の女』(テレビ朝日系)最新シリーズ、舞台『最高のオバハン 中島ハルコ』の高松、大阪、長野、盛岡、山形公演に出演

 

【焼肉レストラン 喜福世】
住所/東京都渋谷区恵比寿南1-16-11 ABC.WACOビル3階
営業時間/平日12:00〜14:30(L.O.14:00)、17:00〜22:30(L.O.22:00)、土曜、日曜、祝日17:00〜22:30(L.O.22:00)
定休日/不定休

 

写真・野澤亘伸
ヘアメイク・岩本郁美

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