舵手つきフォアは果たしてパリパラリンピック出場権のかかる大会に出場できるか、瀬戸際に立たされている。それでも健常者と共に乗艇して水を漕ぐ感覚を鍛え、さらには高いレベルの練習や大会出場ができるよう、両腕がある選手は全員両サイドを漕げるように取り組むなどして新たなメンバーを待っているという。
「きついけれど、水上でこれだけスピードを出せる競技はなかなかない。腕の障がい、足の障がい、視覚障がいといったいろんな障がいの選手が同じ艇に乗り、性別も年齢もバラバラの選手が一つになる楽しさも魅力です」と西岡そんななかでもパリパラリンピックに強い思いを持っているのは、視覚障がいの坂口宥太だ。今大会ではストロークを担当し、クルーのリズムをつくった。「フィジカルが課題」と語る坂口は昨年末、アスリート活動に専念できるように転職して練習量も増やした。「リズムもよくなり、出力も上がっている」と林コーチも評価する。東京大会代表の有安諒平とのポジション争いは、日本の舵手つきフォアのレベルを引き上げることだろう。
「このクルーで合わせる練習が足りておらず、かなり緊張感があった」と坂口。「アップで上達していく感覚があり、いい形でスタートできました」そんな国内のパラローイングを活性化させているのが、視覚障がい者がプレーするゴールボールでパラリンピックに3大会出場し、昨年からローイングを始めた若杉遥だ。舵手つきフォアで初のレースだったにもかかわらず、堂々とした漕ぎでチームに貢献した。
「楽しかったです。直近では世界選手権、アジアパラという目標があるので、そこにしっかり挑戦できるような選手になりたい。その先にパリパラパラリンピックがあると思うので、一歩一歩まずは目の前のことをやっていきたいです」
「始めて1年ちょっとで2000mのレースの楽しさを知った」という若杉。「1500m付近の苦しいところで粘れるようになりたいです」片腕でオールを漕ぐ高橋は、競技歴が浅く、伸びしろのある選手と言っていい。「今後はとにかく技術を磨いていかないと。今大会はすごく緊張したが、とにかく最後まで出し切ろうという気持ちで挑みました」。今大会の課題と収穫を持ち帰り、パワーアップして次のレースに臨むつもりだ。
「スタートは良かったと思う」と高橋。「練習したことを出すだけ」と気持ちをコントロールしてスタートした広告の後にも続きます
text by Asuka Senaga
photo by X-1