ーー夏の大会から、やや、すり足気味でタイミングを取っているのは、どういう意図があるのでしょうか?
イヒネ:夏の大会から開き気味で、自分にとって振りやすい形なんですよね。(腰を旋回する動作を見せる)
ーーあとはインコースの捌きが上手いのは鍛えていったものなのでしょうか?
イヒネ:もともとインコースが好きというのがあります。だからインコースに強いと思ってもらえるのかなと思います。
ーー肘の使い方が印象的ですが自然にできたものでしょうか
イヒネ:自然にできたものだと思っています。インサイドアウトのスイングを心掛けた結果、肘の捌き方も良くなったと思っています。
ーーその結果、初戦でホームランとなりました
イヒネ:あの場面で必要なのは強いスイングで1点でも取るというふうに思って打席に立った、強いスイングをしたらホームランになりました。
ーー敗れはしましたが、西尾東戦でも長打もあり、4打数3安打3打点の活躍でした
イヒネ:強いスイングをずっと心掛けて打席に立ってたら、ああいった結果になったので、良かったです。チームとして、甲子園に行きたかったですし、3回戦敗退となって、もう終わったかと思います。
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木製バットへの順応のために練習を重ねているが、どちらかというと木製バットの方が遠くへ飛ばせる感覚があるという。
「とにかく強く振ることを意識しました。個人的にはそんなに苦労したというのはなく、同じメカニズムで打っていて、強く振ることを意識したら、だいぶ良くなったと思います」
守備では基本を見直してきたという。
イヒネ本人も驚いた「1位指名公表」。メディア取材も殺到し、たい焼き好きも地元から知られるようにイヒネ イツア(誉)
野球ファンを驚かせたイヒネの1位指名公表。これはもちろんイヒネ本人も同じ気持ちだった。
「驚いたというのが正直な気持ちです」
ソフトバンク側から1位指名するという連絡をもらった矢幡監督も当時についてこう振り返る。
「公表となった30分前から連絡があり、『イヒネくんを1位で入札します』と連絡をいただき、最初、入札を聞いてピンとこなかったのですが、お話をしている間に『1位』ということに気づいて、えぇ!という感じですよね」
この発表からイヒネのもとに多く連絡がきたという。
それから、イヒネのもとへ、メディアから取材が殺到した。1位指名公表からドラフト本番まで、ほとんど毎日のように、野球部のグラウンドに報道陣がいたという。
イヒネは「たくさん取材をしていただきましたし、グランドに来るたびに取材の方たちがいたので、今までにない経験をさせていただいているんだなと思っています」
こうした取材を通して、イヒネの「たい焼き好き」が知れ渡り、たい焼きを食べる姿が映し出されたが、「指名挨拶やメディア取材以外でもたい焼きをもらってます」と笑う。学校近所のファンからもらうことがあるという。
ドラフト当日、ソフトバンクが事前通り1位指名し、また競合することなく、単独で1位指名が決まった。
「これからソフトバンクで頑張っていこうという気持ちと、ずっと思っていた夢が叶った瞬間でもあったので、嬉しかったです。ソフトバンクは育成からでも、すごい選手がたくさん出ているので、他にはない特別な球団だと思います」
自分を大きく成長させた誉の3年間については、こう振り返る。
「きついことがたくさんありましたが、今となってはいい経験をさせてもらって、いい環境にいさせてもらったので、誉で3年間過ごせて良かったです」
また、中学時代、東山クラブのチームメートでオリックスから2位指名を受けた内藤 鵬内野手(日本航空石川)とは連絡を取り合っているという。
「結構話しますね。ドラフト前も話はしました。
お互い活躍できるのがベストだと思うので、お互い頑張ろうと話しました」
今では自主トレへ向けて、じっくりと練習に励む。キャッチボールでは投手として140キロを超える強肩を披露し、木製バットでは長打性の打球を飛ばしている。
プロに向けては、こう意気込みを語った。
「トリプルスリーという目標を持っていますし、ゴールデングラブ賞も取りたいと思っています。欠点のない、非の打ち所がないプロ野球選手を目指してやっていきたいです。」
イヒネの完成形とは、どんな選手なのだろうか。大きく成長できれば、多くの野球少年が憧れるようなスケールを持った選手になることは間違いない。
取材談話
久しぶりの取材となったイヒネ。「わざわざ東京から取材にきていただき、ありがとうございます」と嬉しい一言をいただく。6月、ドラフト後の取材通して、イヒネから感じられるのは礼儀正しいところだ。何より笑顔がよく、明るいキャラクターであること。こうした人柄は母から受け継がれたものだと矢幡監督は説明する。
「イヒネのお母様からは、節目、節目のタイミングで必ず連絡をいただき、感謝の言葉をいただきます」
取材が終わると「また来てください。福岡でもぜひ」と声をかけてくれた。また、節目のタイミングで取材したいと思っている。
プロの世界ではチームメート、首脳陣、ホークスに関わるメディアの人々から愛される選手になってほしい。
(取材:河嶋 宗一)