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なとり「Overdose」TikTokチャート好調 一度聴けば耳に残るリズミカルかつ大胆なボーカルアプローチ

Real Sound

なとり「Overdose」

参照:https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok&year=2022&month=10&day=03

 Billboard JAPANの「TikTok Weekly Top 20」は、TikTokにおける視聴数のみならず、楽曲がどのように使われて視聴されているのかを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの9月28日付のTOP10は以下の通り。

1位:THE SUPER FRUIT「チグハグ」
2位:なとり「Overdose」
3位:GLAY「Only One,Only You」
4位:Repezen Foxx「XOXO (feat. SPRITE)」
5位:Da-iCE「スターマイン」
6位:TENSONG「有難う」
7位:TVT「KISS FT SUPENATURAL VER1 – REMIX」
8位:Ado「新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」
9位:ねぐせ。「グッドな音楽を」
10位:ののちゃん(村方乃々佳)「とけいのうた」

 今回はTikTokウィークリーチャートで2位にランクインしている、なとり「Overdose」をピックアップする。

(関連:なとり、耳に残る大胆なボーカルアプローチ

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 なとりは19歳のシンガーソングライター。TikTokで「Overdose」に合わせたダンス動画が多数投稿されてヒットにつながったパターンだが、これまでと違うのはTikTokをオリジナル楽曲発表の媒体にしているところだ。具体例と一緒に検証してみたい。

 なとりのTikTok初投稿は2021年5月。以降、TikTokをメインに、YouTubeでも同時にハイペースでオリジナル曲を発表してきた。2022年10月初旬現在、TikTok内ですでに15曲以上のオリジナル曲を発表しているが、まずは映像の演出がうまい。例えば、初投稿の「ターミナル」では、動画の冒頭に「作曲1ヶ月目の私が音楽作ってみた」というテロップが入る。ほとんどの動画の尺を30秒から1分前後、長くても1分30秒程度にしているのは、TikTokのメリットを殺さないためだろうと考察する。加えて、2022年の5月に投稿した「模倣犯」まで本人が登場せず、各楽曲をコンセプチュアルな映像とともに配信してきた流れには、クリエイターとしての才能も感じる。また、動画題材のチョイスも独特だ。人気漫画のアニメーションを合わせたり、ホラー風な浮世絵、活動写真のようなモノクロの映像、古いアメリカ映画、昨今のTikTokのモードをおさえた青春Vlog風と、実に幅が広い。だが、それよりも注目するべき部分は、TikTokで流し見していても、指が止まるほどに楽曲が耳に残ることだ。

 9月7日にデジタルリリースされた「Overdose」は、なとり初の配信楽曲で、バウンシーなミディアムアップチューン。9月21日付のTikTokウィークリーチャートで初登場5位にランクインし、9月28日付の同チャートで2位になった。9月27日付のLINE MUSICウィークリーチャートでは1位を獲得している。9月下旬でストリーミングの総再生回数は1000万回を突破。本人を想像させるイラストを用いたMVは、公開から約1カ月ですでに600万回再生を超える勢いである(※1)。

 「Overdose」はサウンドオブジェクトの集合体のような1曲。多様なリズムと独特の抑揚あるメロディが並行しながら進行し、途中でひとつになり、また離れていく。緻密に散りばめられたリズムの上を軽く跳ねるように言葉を置くボーカルのピッチもお見事。ゆえに、ただのループとは一味違った立体的なグルーヴ感こそ、なとりの楽曲の最大の魅力で前例なき個性だ。

 リズムをメインに置いた短いフレーズを繰り返すメロディながら、歌ものとしての印象を強く残すのは、なとりのボーカルアプローチによるところが大きい。短いトーンの中でも一音だけビブラートをかけたり、「ん」をほとんど発音しないで抜いたり、同じメロディラインを繰り返すところで一音だけファルセットしたり、一瞬の隙間にフェイクを入れたりと、ニュアンスが豊富で抜群にうまい。個人的には、本曲をサンプリングしリミックスしたような大胆なイントロに度肝を抜かれた。
 
 TikTokでは顔こそ出していないものの、マイクで歌う姿やギターを弾く姿も頻繁に投稿されるようになったなとりだが、リズムの取り方などパフォーマンスにスケール感があり、ライブへの期待も募る。正体が明かされるのはいつなのか。その時が今、最も待たれるアーティストの一人である。(伊藤亜希)

※1:https://www.thefirsttimes.jp/news/0000188295/

 
   

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