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『東京タワー』透の全身から細胞レベルで溢れる詩史への想い あまりに雄弁な永瀬廉の視線

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オシドラサタデー『東京タワー』©︎テレビ朝日

 透(永瀬廉/King & Prince)の全身から、細胞レベルで詩史(板谷由夏)への想いがダダ漏れの『東京タワー』(テレビ朝日系)第3話。

参考:松田元太、『東京タワー』で“落ちる”視聴者続出!? 永瀬廉演じる透との対比が生む面白さ

 詩史の建築賞受賞を知ると居ても立ってもいられず、プレゼントを買いに行き、彼女が開封する様子を見守る間、透の口元は緩み自然と笑みが溢れる。プレゼントを贈ったはずの透が、詩史からギフトを受け取ったかのような無垢な笑顔が光る。パーティー会場で詩史を探す透の視線にははっきりと“好き”が絡みついており、そりゃあ母親の陽子(YOU)にだって詩史の夫・英雄(甲本雅裕)にだって否応なしにただならぬ雰囲気は伝わってしまうだろう。その変化は透に好意を寄せる同級生・楓(永瀬莉子)にも察知されるほどだ。

 許されざる恋ゆえに、普段から口数の多くない透はさらにたくさんの言葉を飲み込み、胸にしまっている。それでも隠しきれず溢れ出す感情に、こちらの胸も締め付けられそうになり引き込まれるのだ。視線やちょっとした表情、声色、心の声だけでその気持ちの変化を丁寧に紡ぐ必要があるが、透役の永瀬廉の視線はここでもあまりに雄弁だ。

 彼女へのプレゼントを買いに行けば店員から悪気なく20代女性向けのギフトを勧められ、受賞パーティーでは詩史の耳元に自分が贈ったピアスが光っていなくても。英雄に「話し相手」であることを感謝されたり「退屈でしょ、こんな場所」と子供扱いされたって。

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 「相手が人妻じゃあさ、彼女にはなんないっしょ?」と耕二(松田元太)から無邪気な質問をぶつけられても。受賞パーティー会場で英雄にエスコートされながら多くの見知らぬ大人に囲まれている“自分の知らない”詩史を目の当たりにしたって。「人や車に踏まれてどんどん灰色になっていく都会の雪」のようにずっとずっと気持ちを踏みにじられ、傷つけられ続けたって、詫びしい思いがしようとも。それでもたった一言、彼女から「私はあなたといる時の私が一番好きよ」という心からの言葉があれば、それが透にとっては“世界の全て”で、その他の全部が帳消しにされる。自分とのデートに彼女がプレゼントしたピアスをつけてきてくれたならば、一瞬にして幸福にさせられる。自分ではない誰かと彼女が見たであろう軽井沢の雪景色のように、誰にも汚されることなく真っ白でフワフワした美しいものとして記憶に刻まれるのだ。

 ただし一瞬で幸福にさせられるということは、同じく一瞬で地獄にも突き落とされるということだ。透が柄にもなく子どものように大雪で通行止めになることを願うほどに、この時間がもっと続けばいいと焦がれる詩史とのひとときは、英雄からの一本の電話で呆気なく終わる。詩史は後ろ髪引かれることもなく英雄の元へ帰っていくように見える。彼女には1人ではなく英雄と囲む食卓があり、日常があることをまざまざと思い知らされる。自分は耕二と楓の前でも「彼女がいる」と宣言したのに、詩史にとっての自分は2人でいる時にしか存在しないかのように思えることも切ないのだろう。

 さて、耕二と家庭教師先の母親・喜美子(MEGUMI)の関係も一時の気の迷い、火遊びでは終わらなさそうな様相を見せ始めた。耕二もただただ好奇心旺盛な軽薄なだけの男かと思いきや、喜美子を「飛び方を忘れた鳥」で「家という狭い籠に入れられた哀れな鳥」だとし、「人妻は楽しんじゃいけないの? 一生この家で家事だけして死んでくの?」と、彼女の中での漠とした不安を見事に言い当てていた。ここから楓や由利(なえなの)がどう存在感を増してくるのか。

 透の涙に滲む東京タワーの光はぼんやりと生温く残酷で、だから美しい。

(文=佳香(かこ))

 
   

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