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堀田真由が担う“柱”としての役割 『アンチヒーロー 』の好演で次のフェーズへ

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『アンチヒーロー』©TBS

 放送中の日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS系)が好調である。

参考:堀田真由、2024年は「“努力の1年”にしたい」 デビュー10周年に向けての決意

 観る者の善悪の概念に揺さぶりをかけるテーマ設定、作劇、そしてそれらを支える俳優陣ーーこのすべてが高い次元で結びつき、質の高いエンターテインメント作品として成立しているからだろう。主演の長谷川博己を筆頭に、力のある俳優が並んでいるが、その中でもとくに目を引く人物がいる。メインキャストのひとり、そう、堀田真由だ。

 「殺人犯へ、あなたを無罪にして差し上げます。」がキャッチコピーとなっている本作が描くのは、弁護士である主人公・明墨正樹(長谷川博己)が暗躍するさま。依頼人が犯罪者である証拠が100パーセント揃っていたとしても、彼はさまざまな手を尽くして無罪を勝ち取る弁護士だ。まさに“アンチヒーロー”。そんな明墨の率いる明墨法律事務所に所属しているのが、堀田が演じる若手弁護士の紫ノ宮飛鳥である。
 
 ドラマは赤峰柊斗(北村匠海)が明墨法律事務所の新たな仲間としてやってくるところからはじまった。だから私たち視聴者は彼に寄り添った視点を通して、明墨がどのような弁護士であるのかを知り、明墨法律事務所の“勝ち方”を知っていくことになる。紫ノ宮もまた、赤峰の視点を介して描出される存在。ポーカーフェイスな彼女はいつだってクールで、弁護士仲間でありながら心の内がまったく読めない。が、それは最初のうちのこと。物語が進み、視点が赤峰に寄り添ったものから少しずつ離れていくと、個々のキャラクターのパーソナルな表情というものが見えてくるようになってきた。

 ときに紫ノ宮は明墨のやり方に動揺しているのが分かる。そこにはもうクールなポーカーフェイスの持ち主はおらず、善と悪のはざまで揺れながら、「弁護士とは何か?」という問いの答えを追い求めるひとりの女性の姿があるだけ。堀田はこのあたりの演じ分けが軽やかで巧い。赤峰視点では紫ノ宮のある一面だけを提示し、視点がよりマクロなものになると、彼女は私たちにまた別の一面を提示する。
 
 こういった差異の提示は演技者ならば難しいものではないだろう。むしろ、これくらいできなければ役者業など成立しない。重要なのは、それぞれの“一面”が同じ人物のものであることを示せるかどうか。堀田はセリフの調子を大きく変えたり、大仰な表情を作ったりすることなく、紫ノ宮というキャラクターを多面的に立ち上げている。 キャラクターの一貫性は、自身の演じる役の強固な軸を俳優が持っているからこそ。メインキャストが演じる役の軸がブレブレでは、ドラマそのものの強度にも間違いなく影響する。しかも本作の場合は、各エピソードごとに数多くのゲスト俳優が登場するのだ。彼らの入退場によって、作品の感触は変わってくる。柱となる長谷川、北村匠海、堀田たちが作品の中心にブレずに存在し続けているからこそ、この『アンチヒーロー』の手触りは絶えず変化しながらも、強度の高いドラマとして成立しているのではないだろうか。

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 そんな重役を担う堀田真由は、俳優としてのキャリアは10年近くあるものの、年齢的にはまだ若手俳優のひとりだ。ドラマだと『チア☆ダン』(2018年/TBS系)や『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(2019年/日本テレビ系)、映画では『虹色デイズ』(2018年)に『殺さない彼と死なない彼女』(2019年)、『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』シリーズ(2019年~2021年)などなど、“若手”がこぞって出演する作品には必ずといっていいほど彼女の姿があった。北村匠海と共演した『風間公親-教場0-』(2023年/フジテレビ系)での好演ぶりも記憶に新しい。
 
 『バカ塗りの娘』(2023年)をはじめ、すでにいくつもの主演作を得てはいるが、彼女はもっともっと評価されるべき俳優だと個人的に思っている。「日曜劇場」という大舞台で“柱”としての役割を最後までまっとうしたとき、彼女の俳優としての立ち位置は大きく変わるはずである。“若手のうちのひとり”から正式に脱け出すに違いない。
(文=折田侑駿)

 
   

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