「このあらいを作ったのは誰だ」

  美食倶楽部の板前で、雄山からその力を高く評価されていた岡星良三。中川の取り計らいもあり、気に入られると出世が見込めるという雄山の夕食作りを任された。

良三は緊張感に耐えることができず、店の外で1本タバコを吸う。すると落ち着きを取り戻し、「あらい」を作った。中川や同僚から仕事ぶりを褒められていた良三だが、しばらくすると「ドスドス」と足音を立てて雄山が調理場に登場。「このあらいをつくったのは誰だ(アニメでは刺身)」と絶叫し、良三が「私です」と名乗り出ると「貴様はクビだ」とクビにしてしまった。

  労働形態は不明だが、正規雇用の料理人を「タバコを吸った」という理由でクビにすることは、現代でいう「ブラック企業」と言われても致し方ない。しかし雄山は最終的に良三を許し、美食倶楽部に戻している。「単なる暴君」では、ないといえよう。

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「見ろ!手が汚れてしまった!」

  美食倶楽部の料理人でありながら、ハンバーガーショップを始めた宇田。雄山は実力を認めており、考え直すよう説得するが意思は変わらず。結局「味覚音痴のアメリカ人の食べるあの忌まわしいハンバーガーを」「失せろっ 愚か者に興味はない」「二度と私の前に姿をさらすな」と追い出した。

  そんな雄山だったが、実は気にかけており、宇田が作ったハンバーガーショップに足を運び、味を確認。「どうやって食えば良いんだ?私はこんな下卑たものの食い方はわからん」と言いながらも味わい、宇田のハンバーガーを酷評した。

  その後、山岡の協力を得て美味しいハンバーガーを作り上げた宇田。中川が雄山に食べてもらうと味について言及せず「見ろ!! 手が汚れてしまった。2度とこんな物を私の食卓に出すな。アメリカ人好みの浅ましい食べ物だ。宇田の愚か者めが」と罵倒し続けた。

宇田を罵倒した雄山だったが、「こんなものはいらない、もっていけ」と中川にハンバーガーと相性の良い宇田のつけたピクルスを託し、贈っている。雄山のツンデレが爆発した回だった。

  暴君極まりない雄山の行動だったが、その後雄山は葉山の料亭に自身が作った器を贈っている。「単なる暴君」ではなく、必ず後で心優しき気づかいをしているのが、雄山の真の姿である。刺激的な発言ばかりがクローズアップされる雄山だが、その根底には心優しい気持ちが隠れている。それが、「海原雄山という男」なのだ。