借金を背負い堕落した生活を送る伊藤カイジが、荒波に飲まれながら生きていくストーリーが話題を呼んでいる漫画『賭博黙示録カイジ』。東京ドームシティ ギャラリーアーモでは5月12日まで「逆境回顧録 大カイジ展」が開催されていたりと、現在でも高い人気を誇っている。

 そんなカイジは、作品中でギャンブラーならではの、人生を賭した極限の状態の中で数多の名言を残してきた。今回はその一部を紹介したい。

「苦しく難しい決断になると

投げちまってそれを他人に預ける

そうやって流され生きてきた

その弱さがこの土壇場で出た

この結果は言うなら必然

これまでのオレの人生のツケ」

 限定ジャンケンの際、船井から12連続あいこ作戦で生き残ることを持ちかけられ、応じたカイジ。結局裏切られて窮地に追い込まれると、「なぜ自分で考えなかったのか」と肩を落とす。

 その後、進学や就職でも自分で判断をしてこなかったことに気がついたカイジは「苦しく難しい決断になると投げちまって、それを他人に預ける。自分で決めない。そうやって流され流され生きてきた。その弱さがこの土壇場で出た。この結果は言うなら必然これまでのオレの人生のツケ」とつぶやくのである。

 カイジの「自分で決めることを避けて他人に預ける、自分で決めない」という嘆き。多くの読者が自身を重ね合わせ、共感したことであろう。

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「人は人を救わない…

なぜなら…人は人を救わなくても…

その心が痛まないからっ…!

なら… 期待するなっ…!

他人に…! 自分だっ…! 自分…!

自分を救うのは…自分だけ…!」

 落ちれば死ぬような高さの場所に設置された鉄骨を渡るレースを繰り広げ、その順位を金持ちが賭けるという悪趣味なゲーム「鉄骨渡り」。レースに参加させられる人間は「悪趣味だ」などと金持ちたちに抗議するが、カイジは冷静に「他人の悲惨さを見て手を貸さない、見殺しにしている点では、下と上の人間は変わらない」と分析する。

 そして「人は人を救わない… なぜなら…人は人を救わなくても… その心が痛まないからっ…! なら… 期待するなっ…! 他人に…! 自分だっ…! 自分…! 自分を救うのは…自分だけ…!」と悟ったのだった。

 人が人を救うケースもあるが、カイジが悟ったように自らの欲のためだけに動く人物がいる。彼の発言は、真理をついているのではないだろうか。