第1部『グラップラー刃牙』で範馬勇次郎相手に目も当てられない敗北を喫した超軍人ガイアが表紙の第3部『範馬刃牙 新装版』13巻 (秋田書店)

【画像】え…っ? 「どっちも可愛い」「まさか過ぎるスピンオフ」 これが今は一緒に暮らしている「ガイアとシコルスキー」の姿です(5枚)

一体どんな負け方だった?

 数々の激戦が繰り広げられるバトルマンガでは、そのたびに勝者と敗者が生まれます。勝利はもちろん、敗北もまた、そのキャラの見せ場です。しかし、時に展開や演出の都合で敗北シーンがカットされることもありました。

 それがお気に入りのキャラであれば、もちろん読者は、どのような戦いが展開されたのかを知りたくなるでしょう。今回は、そんな読者がたびたび思い出してしまう、気の毒なキャラを振り返ります。

※この記事では『チェンソーマン』のまだアニメ化されていない範囲のネタバレを含みます。

ムクロ『幽☆遊☆白書』

 90年代に人気を博したバトルマンガ『幽☆遊☆白書』では、主人公の浦飯幽助を始め、飛影や蔵馬など、現在でも人気のあるキャラが多く誕生しています。そんな同作の物語終盤で行われた魔界統一トーナメントでは、それまでのストーリーで活躍したキャラに加え、戦い方すら未知数の新キャラが多数登場し、多くの魅力的な戦いが繰り広げられる予定でした。

 しかし、いざ始まるとトーナメントは途中でカットされ、ほとんどの戦いは、後に幽助の口から結果が伝えられるのみとなります。この魔界統一トーナメントのカットに関しては、大きな期待があっただけに残念に思う読者が多かったようです。そんな魔界統一トーナメントで描かれなかったバトルのなかで、特に気になるのが、魔界の三大妖怪と呼ばれる存在で優勝候補だったムクロ(機種依存文字のためカタカナ表記)の戦いです。

 ムクロは半身が焼けただれて機械化しているものの残った部分は美女と言う独創的な見た目や、元奴隷出身でありながら魔界三大妖怪まで上り詰めた経歴、メインキャラである飛影との関係性など、魅力的な要素の詰まったキャラでした。

 アニメではムクロと飛影の戦いは描かれましたが、原作では彼女の戦闘自体が一度も描かれることなく連載が終了しています。特に、魔界統一トーナメントでは、「飛影に勝って煙鬼に敗れた」と言う情報しかなく、作者の冨樫先生の頭のなかで、ムクロがどんな戦い方をしていたのかは不明のままです。

ガイア『刃牙』シリーズ

 人気格闘マンガ『刃牙』シリーズでは、第1部『グラップラー刃牙』の「幼年編」で、作中最強の範馬勇次郎に匹敵すると言われていた「超軍人」ガイアが敗北シーンもカットされる不憫な負け方をしています。

 当時13歳の刃牙は強くなって父の勇次郎と戦うため、北海道にて自衛隊の最強精鋭部隊との実戦に挑みました。多重人格者で、その精鋭部隊のなかでも飛び抜けた実力を持つガイアは、周囲にあるものを武器として利用する「環境利用闘法」を駆使して、刃牙を一時は心肺停止に追い込むほどの強さを見せます。最終的に、ガイアは刃牙に敗れますが、戦いのなかでふたりは友情を結びました。

 そして、ついに刃牙は勇次郎との決戦の日を迎えます。それまで刃牙が戦ってきた強敵たちも、刃牙のために集まりましたが、そのなかにガイアの姿はありませんでした。そして、決戦の場所に到着した勇次郎が乗るヘリから、包帯を巻かれ顔も傷やアザだらけのガイアが降りてきて、勇次郎に跪いたのです。

 その際に、ガイアの部下は彼が「先に行ってな オレはヤボ用をすませてから行く」と言っていたことを思い出していました。おそらくガイアと戦った勇次郎は全く傷を負っておらず、かなり一方的なバトルだったことがうかがえます。「当時は勇次郎の強さ表現として衝撃だった」「殺されてもいないところが余計みじめ」「戦闘中にノムラ(ガイアの別人格)に戻ってしまったんじゃないか」など、同情や憶測も飛び交う衝撃シーンとなりました。

 その後の最大トーナメントにも出なかったガイアでしたが、第2部『バキ』で再登場して最凶死刑囚のひとり・シコルスキーを圧倒、本編にもコンスタントに登場し、さらにスピンオフ『バキ外伝 ガイアとシコルスキー ~ときどきノムラ 二人だけど三人暮らし~』が連載されるなど、活躍を見せています。

早川アキ『チェンソーマン』

 現在、第2部が連載中の人気バトルマンガ『チェンソーマン』の第1部では、メインキャラのひとりである早川アキが不憫な負け方をしています。

 早川アキは、未来の悪魔の予言「最悪の死に方」を回避するため、上司のマキマに「どんな悪魔と、どんな契約でもするから力を貸してくれ」と頼みました。しかし、マキマの正体は「支配の悪魔」で、契約によってアキは彼女に絶対服従になったのです。

 そしてアキは「銃の悪魔」に体を奪わられて銃の魔人になり、デンジと戦います。人としての意識のないアキは、幼少期の雪遊びをしている幻覚を見ながら街を破壊し、最終的にはチェンソーマンになったデンジの手で殺されました。

 アキは家族の仇である銃の悪魔に体を奪われ、友人のデンジに殺されるという、まさに「最悪の死に方」で敗れています。そのうえ、銃の悪魔に殺された際の描写はひとコマだけで、死亡者一覧にアキの名前が載っているのみという、メインキャラとしてはあまりにも不遇な最期でした。

 その後、銃の魔人にされたことやデンジに殺されたこと、デンジと友人関係になったことすらも、マキマの策略だったということが明かされ、アキの死はどこまでも救いのないものになっています。ただし、呪いの悪魔が能力を使用した際に、アキの寿命は「あと2年」と言われていたため、第2部での復活にも期待が集まっているようです。