盲目の姫様を嫁にもらった赤鬼(早神あたかさん提供)

【マンガ本編】赤鬼のもとへ嫁いだ目が見えない姫 隠された真実にに「泣いた」

見えないものを見通す盲目のお姫様の「涙」

 恐ろしい容姿の赤鬼は、森で道に迷ったお殿様と出会います。赤鬼の強さを気に入ったお殿様は、戦で成果を上げたら娘のひとりを嫁にやると約束します。赤鬼は見事に戦を勝利に導き、嫁をもらえることになりました。しかし、赤鬼の醜い容姿を理由に、娘たちはみな嫁入りを拒んでしまいます。

 唯一、赤鬼との結婚を快諾したのは、目の見えない一番末のお姫様でした。多くの人を殺し、悪人にも命を狙われいる赤鬼ですが、盲目の姫様には、赤鬼の本当の姿が見えているようで……?

 早神あたかさん(@yaminome)による創作マンガ『目の見えないお姫様が赤鬼に嫁ぐ話』がX(旧:Twitter)上で公開されました。いいね数は3.2万を超えており、読者からは「赤鬼じゃなくて俺が泣いた」「気持ち良くだまされました。とても良かったです」「姫の設定を利用した仕掛けがバッチリ決まっていて、感動しました」などの声があがっています。
 
 早神あたかさんは漫画家として活動しており、世間に悪名とどろく「クズ王子」ファイの活躍を描いた作品『前世は剣帝。今生クズ王子』(アルファポリス)が発売中です。

 作者の早神あたかさんにお話を聞きました。

ーー今作『目の見えないお姫様が赤鬼に嫁ぐ話』が生まれたきっかけや、理由を教えて下さい。

 よく覚えていません(笑)。マンガを描いたのは2年前なのですが、マンガの元になるプロット(脚本)は作成時の日付が6年前の2018年になっていました。頑張ったのですが、さすがに思い出せませんでした。当時、オリジナル短編マンガを描こうと、いろいろとプロットを書いたなかのひとつだと思うのですが……どこから構想を得たとか投稿する気だったのか、同人誌にしようとしたのかはさっぱりです。

 2年前、コミカライズ連載に手いっぱいで、2年ほどオリジナルマンガが描けてないな、描きたいなと思ったことがありました。そういえば、うまくまとまったけどマンガ作成にまで至らなかったプロットがあったなと思い出し、プロットからネームを作成しました。

 プロットに手を入れずにネームができたので、ストーリーもセリフも6年前にほとんど完成していた……ということになります。ただ、覚えてなくてもわかるのは、プロットを書いたとき、感動的な話を描こう! という心持ちはなく、読者に対して挑戦的というか、いじわるしてやろうという心持ちだっただろうということです。

ーー今作を描くうえで工夫したポイントや、お気に入りのシーンなどはありますか?

 作画を24時間以内に終わらせるのを目標にしていたので、とにかく時短になるように努力しました(実際は35時間ほどかかりました)。努力しつつも、お姫様の着物や髪型はいつものキャラデザより盛り気味だったので、限られた時間のなかで、なんでこんな面倒なのにしちゃったんだろうと思いながら作画していた思い出があります。ふたりのギャップが見えるシーンは楽しく描けました。



赤鬼の本当の姿を見通す盲目の姫様(早神あたかさん提供)

ーー盲目のお姫様と赤鬼がとても魅力的でした。このキャラクター制作でこだわった点はありますか?

 ただの優しいお姫様と恐ろしい鬼では、よくある昔話になってしまうので、キャラにギャップがあるようにしたいと考えていたんだと思います。お姫様は目が見えないにも関わらず、お茶をひっかけるほどしたたかでチャレンジャー。赤鬼は恐ろしい姿のわりに心配性の世話焼き……みたいな感じで。

ーー「目の見えないお姫様」によって、赤鬼の正体や過去が明かされる展開が読者の方から評判です。どのようにして、このストーリー構成のアイディアは浮かびましたか?

 前述のとおり、詳しいことは覚えてないのですが、とにかく、読者をだましてやろうみたいな意地悪な心があったのは覚えています。竜騎士07先生の『うみねこのなく頃に』が大好きで……その作品を読んで、書いてある文章に疑いを持たず、そのまま信じると痛い目を見ると学びました。

 作者がそう描写していても、そこにいる登場人物たちに本当にそう見えているわけじゃない。そういう表現もあるんだな……と。作者が読者を欺こうとしているのであって、登場人物どうしはだまそうとか欺こうとかしているわけではない(赤鬼は若干欺こうとしていますが)。読者は作者に邪魔されて見えないけど、登場人物には真実がちゃんと見えている。そんな作品にしたかったんだと思います。

ーーそのほかにも、たくさんの感想が寄せられています。特にうれしかった感想の声、印象に残った読者の声について、教えて下さい。

 たくさん感想が寄せられたこと自体うれしいのですが、感動したという感想のなかに、ミステリーを読んだようだという感想も含まれていたので、それをいただいたときはうれしかったです。本懐達成という感じで。

 あと、現在アルファポリスで『前世は剣帝。今生クズ王子』(原作:アルト、キャラクター原案:山椒魚)という作品のコミカライズを連載しているのですが、「剣帝の人だー」と気付いてくれる人が多かったのもうれしかったです。

ーー今後、X(旧:Twitter)で発表される作品については、どのように活動していきたいとお考えでしょうか?

 去年1年、水面下で準備していたものが今年は実を結びそうなので、当分はX(旧:Twitter)で新しくオリジナルマンガを発表することはないと思います。ただ、6年前書いた大量のプロットのなかには、まだマンガにしたい作品がいくつかあるので、機会があれば……何年か後に新しいオリジナル作品を発表するということもあるかもしれません。