マンガ「障がい者手帳」のカット(はんどあんどふっとさん提供)

【マンガ】障がい者手帳を所得した娘  さっそく、夜に手帳を使おうとするけど? 本編を読む

娘が思いついた手帳の使い方が「最強」の訳

 娘が障がい者手帳を取得したときの出来事について描いたマンガ「障がい者手帳」が、Instagramで400以上のいいねを集めて話題となっています。

 生まれつき右手の指が3本の「裂手(れっしゅ)症」の娘。本人の希望で障がい者手帳を取得したのですが、その使い方が何やら間違っていて……?! 読者からは「かわいい!」「斬新すぎる使い方(笑)」などの声があがっています。

 このマンガを投稿したのは、NPO法人Hand&Footの代表理事を務める、はんどあんどふっとさんです。春日たろうさんの作画で、娘(りっちゃん)についてのマンガをInstagramで発表しています。はんどあんどふっとさんに、作品についてのお話を聞きました。

ーーマンガを描き始めたのは、いつ頃からでしょうか?

 現在小学校5年生の娘(りっちゃん)は、「裂手(れっしゅ)症」と呼ばれる手の形で生まれてきました。りっちゃんの右手の指は2本欠損していて、関節もひとつありません。この手の形は、約2万人にひとりの割合で生まれると言われています。

 りっちゃんが生まれたことをきっかけに、手や足の形が多様であることを学び、ほかにもたくさんの子供たちが多くの人とは違う手足の形で生まれてくることを知りました。手足の違いについての情報を広めることで、出会ったときの「びっくり」を少しでも減らしたいという思いから、2017年からマンガでの発信をすることにしました。最初はTwitterで連載をスタートし、2018年からはInstagramでも発信を始めました。

ーー今回のマンガを描いたきっかけを教えて下さい。

 りっちゃんは1歳と3歳のときの2度、手を使いやすくするための手術をしています。術後の経過がある程度落ち着いた頃、主治医から「障がい者手帳を取得できる見込みなので、申請しますか?」と聞かれました。ただ、その頃のりっちゃんはリコーダーの授業や鉄棒など、苦手なことはたしかにありましたが、なんでも工夫しながらこなすことができたので、日常生活で困っている様子はありませんでした。

 次の手術の予定もなく、すぐには障がい者手帳を取得する必要性を感じなかったので、「りっちゃんと相談して、将来必要になったら申請しよう」ということになりました。手術した病院には年に1度、経過診察で通院していたので、そのたびに手帳の必要性については話し合ってきました。

 10歳のある日、「りっちゃん、障がい者手帳が欲しい」と本人が言いました。それをきっかけに障がい者手帳を取得するべく、病院で診断書を書いていただいたり、証明写真を撮ったり、市役所へ通ったりと準備を進め、実際の発行までは数か月の時間を要しました。りっちゃんはその間ずっと、「まだかな~」と障がい者手帳の到着を心待ちにしている様子でした。

 やっと手元に届いたとき「これで、りっちゃんは”しょうがいしゃ”なの?」と聞かれ、どのように返答したら良いか悩んでしまうこともありましたが、自分だけの証明書に喜んでいる様子がかわいかったのと、初めての障がい者手帳の使い方が、思わずずっこけてしまうようなものだったので、明るくマンガにしてみようと思いました。

ーーその後、娘さんは、手帳を大切にされていますか?

 自分のお財布に入れて、いつも大切に持ち歩いています。

ーーこのマンガのエピソードのあと、娘さんにドライヤーをかけてあげたのですか?

 ドライヤーは自分でかけてもらいました(笑)。疲れていたり、体調が悪かったりするとき以外は「ドライヤーは自分でかけてね」と、普段から話しています。また、「障がい者手帳はドライヤーをしてほしいときに使うものではないんだよ」と教えました(笑)。

ーー今回のエピソード以外にも、娘さんがしてきた「かわいらしい手帳の使い方」はありますか?

 普段りっちゃんとケンカすることが多い長女に、障がい者手帳を見せて「もっと優しくして!」と言っている場面を見たことはあります。ただ、長女はまったく取り合っていませんでした。りっちゃんも、数日で手帳の提示に飽きていました(笑)。

ーー最近、りっちゃんを特に「かわいい!」と感じたのは、どのようなときですか?

 先日の母の日、自分のお裁縫セットで作った「手作りのペンポーチと手紙」をくれました。手紙には「本当にいつもいつもありがとう。困ったときは助けてね。ままも手伝ってほしいときとか、相談にのってほしいときはりっちゃんに言ってね」と書かれており、かわいいのはもちろんですが、感動して涙が出てしまいました。

ーー作品について、どのような意見が寄せられていますか?

「斬新すぎる使い方」「4コマ目に爆笑」など、りっちゃんの障がい者手帳の使い方を面白がってくださるコメントや、「ママに甘えたいとき使えるとか最強」「私も今度使ってみよう」など、りっちゃんなりの使い方をほめてくださるコメントもいただきました。

ーー創作活動で今後、取り組んでいきたいことを教えて下さい。

 りっちゃんの日常生活を見ていただくことで、手足の違いはもちろんですが、「指がないってなんだかかわいそう」「できないことが多そう」「不便そう」などのマイナスイメージを、少しでも変えていければと思っています。また、りっちゃんの困難は「じろじろと見られるのが嫌だ」というような、主に「見た目」の問題に多いです。

 マンガを通じて、多くの方に手足の形の多様性を知っていただくことで、いつかどこかでりっちゃんに出会ったときの「びっくり」を少しでも減らせたらいいなと願いつつ、これからも発信を続けていきたいと思います。