遂に四皇の一角にまでのし上がったルフィ。もうすぐ夢に手が届く!?画像は「ONE PIECE Log Collection  “SKYPIEA” [DVD]」(エイベックス・ピクチャーズ)

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ルフィが掲げるあまりにも大きなゴール

 2023年で連載開始から26年目を迎える『ONE PIECE(ワンピース)』も、いよいよ物語が佳境に近づいてきました。世界の真の支配者と見られているイム様も動き出し、「歴史の真実」と「自由」をめぐる物語から目が離せません。そこで改めて気になるのがルフィの「夢の果て」です。ルフィは海賊王になったあと、何をしようとしているのでしょうか?

※この記事は『ONE PIECE』の単行本未収録、未アニメ化の内容を含みます。ご了承の上お読みください。

『ONE PIECE』は現実を模倣した物語

 すでに多くの読者が気付いているように『ONE PIECE』は極めてテーマ性の高い作品です。海賊たちが「悪魔の実」や覇気で熱いバトルを繰り広げるエンタメの裏には、一貫して戦争や支配、科学の濫用、人体実験、大量殺戮、麻薬、貧困、洗脳、差別などの巨大な構図が描かれてきました。

 憎しみの継承を批判的に描いた「魚人島編」や国家的洗脳の「ドレスローザ編」、敗戦と反逆の「ワノ国編」など、それぞれについて語りだせば紙幅(しふく)が足りません。ルフィは世界をより良い方向へ導いていくヒーローなのです。

ルフィにとっての海賊王

 作中ではあまり深く物事を考えていないかのように見えるルフィですが、彼は常にシンプルに物事の本質を捕らえ、その行動は「海賊王になる」点で一貫しています。「ドレスローザ編」のラストで「麦わら大船団」が結成された際、ルフィは迷惑そうにしていました。そのため、彼は世界中の海賊を支配したいわけではないことは確かです。

 ルフィにとって、海賊王とは「この海でもっとも自由な存在」のことです。そしてそれこそがルフィの「夢の果て」と大きく関わっているのは間違いないでしょう。



海賊王が掲げた夢とルフィが掲げた夢は同じだった。ルフィはロジャーの志を継ぐのか?画像は「ONE PIECE Log Collection  “ROCKET MAN” [DVD]」(エイベックス・ピクチャーズ)

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ルフィが子供時代に語った夢とは?

 幼少期、ルフィはエースやサボとそれぞれの夢を語り合っています。ロジャーの血を引くため世界中から疎まれるエースは「大海賊になって世間を見返す」名声を、窮屈な家に生まれたサボは「広い世界を見て、それを伝える本を書く」ことを望みました。ルフィがなんと言ったかはカットされていて分かりません。しかし、ふたりが笑ってあきれてしまうような内容だったことは明らかです。子供なのできっとシンプルな内容でしょう。

 そして、ルフィの夢は海賊王と呼ばれるロジャーの夢と同じものだったことが、シャンクスやヤマトの口から語られています。ロジャーと面識のないヤマトは「おでんの航海日誌」から知ったようです。

 ルフィがサボとエースに夢を語った時のコマ割りが、ロジャーがおでんと白髭に夢を語った時とまったく同じだったことも、意図して描かれている証拠ではないでしょうか。

物語の終着点とルフィの夢は同じ

 もしかしたら幼少期のルフィは深く考えずシンプルに「世界中の人と宴会をしたい」もしくは「世界中の人と自由に楽しく遊びたい」などと言ったのかもしれません。いかにも大食いで宴会好きのルフィが言いそうな子供じみた夢だと思いませんか?

 しかし何の力もない子供が「世界中の人と宴会をしたい」と言うのと、世界を揺るがす四皇の一角が「世界中の人と宴会をしたい」と言うのでは、言葉が持っている意味がまったく違います。

 それは「この世界から支配や差別や貧困をなくす」と宣言したのと同じことです。

 そのスケールを察したからこそ、みんな笑って驚き感動したのです。105巻でルフィの夢を知ったウソップは「お前な!そんなこと出来るわけがねェだろ!」と言った後「おい、いやいやお前…!」と言葉の重さを悟って驚愕していました。

 世界でもっとも自由な存在である海賊王になり、「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」を手に入れ、あらゆる人種が幸せに暮らせる世界を作る、宴会は融和と自由のシンボルです。

 このルフィの夢の実現こそが『ONE PIECE』の物語が目指しているエンディングではないでしょうか。もしかしたら、最終回では世界中のさまざまな種族が一堂に集まって超大宴会を開き、自由な新時代の始まりを祝うのかもしれません。