建物燃やし放題!? カロリーの高すぎる「邪道」魔法少女アニメ

 あなたは、「オープニングで金閣寺を燃やす魔法少女アニメ」をご存じでしょうか。近年の魔法少女アニメにおいては、『魔法少女まどか☆マギカ』『魔法少女育成計画』など、鬱寄りの作品が目立ちます。しかし2000年代には、金閣寺を燃やしたりバットで想い人を撲殺したりと、また趣向の違う「邪道魔法少女」シリーズが制作されていたのです。

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 この記事では、「邪道魔法少女」シリーズを、3作品ご紹介します。SNSでも「終始カオス」「今見るときわどい描写」と評判です。

『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』(2002年8月~発表)



『ナースウィッチ 小麦ちゃんマジカルて』DVD第1巻(パイオニア)

 中原小麦(なかはら・こむぎ/CV:桃井はるこ)は、17歳のコスプレアイドル。弱小芸能プロダクションのもとで活動していた小麦は、ある日ノリと勢いで魔法少女「まじかるナース」になります。そして、人間界を騒がすウイルスの親玉「あんぐら~」を捕らえるため、活躍することに。

 ある日、女優を目指す小麦は「AKIBA博」に出演しますが、その衣装はコスプレというよりも着ぐるみ。怒る小麦ですが、その一方で会場には、しばらく出現していなかったウイルスが登場。まじかるナースに変身し、ウイルスに立ち向かおうとする小麦でしたが――?

『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』は、アニメ『The Soul Taker~魂狩~』 のスピンオフ作品にあたる、オリジナルビデオアニメです。「新感覚魔法少女ギャグアニメ」と銘打たれた本作は、タツノコプロが制作。自社の過去作品はもちろん、さまざまなパロディを盛り込んだ、何でもありの邪道ぶりを見せた作品です。

『科学忍者隊ガッチャマン』や匿名掲示板「2ちゃんねる」(現:5ちゃんねる)、各種ドラマ作品など、懐かしいパロディが満載の本作。90年代の面影を残した秋葉原の景観やコミックマーケットの様子も描かれており、当時のオタクカルチャーを彷彿とさせます。

「スタッフの遊び心満載」という触れ込み通り、ストーリーも破天荒です。小麦が幽霊になったり、プロレスの試合を始めたりと、何でもありの展開を見せます。特に終盤は各方面に怒られそうな、大変な展開に……。小麦本人が「どうせあたし邪道らしいし」と言及するこのカオスぶりを、ぜひ本編でご覧ください。この作品は、「dアニメストア」「Amazonプライム・ビデオ」「U-NEXT」などで見ることができます。

『撲殺天使ドクロちゃん』(2005年3月~放送)



「Blu-ray & CDセットだよ!撲殺天使ドクロちゃん」(NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)

 14歳の中学生・草壁桜(くさかべ・さくら/CV:高木礼子)は、聖ゲルニカ学園に通う普通の男の子。そんな桜のもとに、天使のドクロちゃん(CV:千葉紗子)が未来からやってきて、なぜか家に住みつくことに。

 一見かわいらしいドクロちゃんですが、その手には真っ黒でトゲトゲのついたバット「エスカリボルグ」をちらつかせています。ある日桜が学校から帰ると、ドクロちゃんはなぜか桜の部屋で着替え中。その場にはちあわせてしまった桜は、一瞬でドクロちゃんに撲殺されて――?

『撲殺天使ドクロちゃん』は、同名ライトノベル(著:おかゆまさき、イラスト:とりしも/メディアワークス)を原作としたオリジナルビデオアニメです。第1話の開始1分半で桜が撲殺されるという、「邪道魔法少女」シリーズ第2作目にふさわしい(?)本作。かわいくも暴走気味なドクロちゃんに、桜はいつも振り回され、どの回でも撲殺されます。

 オープニング映像から、「踏んで縛って叩いて」「刺して晒して垂らして」と、穏やかではない歌詞とともに、桜(?)を痛めつけるドクロちゃん。かわいいドクロちゃんと血しぶきの対比が衝撃的なこのオープニングを、覚えている方もいるのではないでしょうか。

「蚊がとまっていたから」レベルの理由で桜を撲殺してしまうドクロちゃんですが、その後は魔法の擬音「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~♪」を使って、すぐ生き返らせます。ただし、ドクロちゃんが使える魔法らしきものは、この擬音しかなさそうです。このことも、本作の「邪道」っぷりに拍車をかけています。

 なお、オープニング曲のメロディは、北朝鮮の楽曲「攻撃戦だ(コンギョ)」とかなり似たものとなっています。気になった方は、聴き比べてみてはいかがでしょうか。この作品は、「dアニメストア」「Amazonプライム・ビデオ」「U-NEXT」などで見ることができます。

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魔法少女なのに「関節技」で戦う?

『大魔法峠』(2006年4月~発表)



『大魔法峠』DVD(ジェネオン・ユニバーサル) (C)大和田秀樹・角川書店/「大魔法峠」製作委員会

 田中ぷにえ(CV:佐藤利奈)は、聖魔法王国のプリンセス。女王になるための試練として、地上の学校に転校してきました。かわいらしい見た目のぷにえに、男子たちは大盛り上がり。ぷにえは魔法を使って、次々と襲ってくる困難を乗り越えます。

 しかし、学園祭で国鉄子(こく・てつこ/CV:下屋則子)のカレー店を助けたぷにえは、学校を仕切るスケバンの姉御(CV:川澄綾子)たちに目をつけられてしまいます。魔法を封じられてしまったぷにえは、「ならば、肉体言語にて語るまで!」と目つきを変え、華麗な関節技を繰り出して――?

『大魔法峠』は、同名マンガ(作:大和田秀樹/角川書店)を原作としたオリジナルビデオアニメです。ぷにえは魔法を使えるにもかかわらず、主に関節技で数々の危機を乗り越えます。さらにオープニング映像では、金閣寺や国会議事堂、五重塔など、さまざまな建築物が文字通り炎上。東京と思われるビル街も火の海となり、ぷにえはその上を笑顔で飛ぶのでした。

「邪道魔法少女」シリーズ第3作目となる本作の主人公は、一見とても魔法少女らしいぷにえです。しかし彼女が魔法を使う時の呪文は、「リリカル・トカレフ(拳銃の種類)・キルゼムオール(Kill them all=皆殺し)」と、なんとも物騒。さらに「サブミッション(関節技)こそ王者の技よ」と、なぜか魔法を使わず関節技でピンチを乗り切ることも。まさに「邪道」です。

 さらに、金閣寺が燃えるオープニング映像については、特に何の説明もありません。燃える世界遺産やその他建築物をバックに、ぷにえが笑顔でかわいく踊るという、なんともシュールな映像となっています。令和の今では許してもらえそうにない、いろいろな意味でギリギリの作品を見たい方はぜひ。この作品は、「dアニメストア」「Amazonプライム・ビデオ」「U-NEXT」などで見ることができます。

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 近年の鬱系魔法少女アニメとは違う、ブラックさとぶっ飛び加減が魅力な「邪道魔法少女」シリーズ。約20年前の作品揃いであるため、2023年現在ではなかなか見られない、きわどい表現にも注目です。そのハチャメチャ具合に、見ると日々のモヤモヤも吹き飛ぶかもしれません。

※配信状況は記事掲載時点のものです。