エマの肩に手を添えるヘンケンの笑顔が切ない「U.C.ガンダムBlu-rayライブラリーズ 機動戦士Zガンダム」(バンダイナムコアーツ)

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物議を醸した戦場での判断

 ガンダム作品には多種多様なキャラクターが登場し、多くの人物が戦場で散っていきました。華々しい最期を遂げるキャラもいれば、なかには晩節を汚したと言われるキャラもいます。後者の例でよく名前が挙がるのが、TVアニメ『機動戦士Zガンダム』に登場したヘンケン・ベッケナーです。

 アーガマの初代艦長だったヘンケンは、後任をブライトに譲り、自身は新造戦艦ラーディッシュの艦長になります。いかつい容姿をしたオジサンながら部下からは慕われ、男気あふれる愛されキャラでした。しかし、そんなヘンケン艦長が死に際にとった行動は、視聴者の間で物議を醸すことになります。

ヘンケン艦長の評価が一変?

 問題のシーンは『機動戦士Zガンダム』の終盤、第49話「生命(いのち)散って」の中にあります。グリプス2を巡る最終決戦の最中、ラーディッシュを含むエゥーゴ艦隊は、アクシズとティターンズの猛攻にさらされます。ラーディッシュのすぐそばにいた僚艦ルネが撃沈されるほどの危機的状況で、ヘンケンはアーガマからの援軍到着を待っていました。

 その時ラーディッシュのブリッジのモニタに、エマ・シーンの乗るガンダムMk-IIが被弾した姿が映し出されます。ガンダムMk-IIはヤザンのハンブラビの攻撃を受けており、撃墜されるのは時間の問題でした。そこでヘンケン艦長は危険を承知でラーディッシュをガンダムMk-IIのところまで進める決断を下し、結果的にラーディッシュはハンブラビの攻撃を食らって撃沈しました。

 そしてヘンケン艦長がエマに恋心を抱いていたこともあり、「私情を優先させてラーディッシュの乗組員を殺した艦長」との烙印を押されることになります。

最終局面における詳細な状況

 とはいえ、ヘンケンが愛しい人を優先して独断でエマの救出に向かったというのは少々語弊があります。最初にガンダムMk-IIの救出を提案したのはラーディッシュのブリッジにいたクルーでした。

 ヘンケンはその提案を即座に却下。エマを助けることが艦を危険に晒す行為だと認識していました。しかし、別のクルーからも「エマ中尉をこのまま見殺しにはできません」との声が上がると、ヘンケンは苦い表情を浮かべ、結局エマを助ける決断を下します。

 おそらくクルーの提案がなければ、大事な艦を預かる身としてエマのことは黙殺したはず。ラーディッシュのクルーは、そんなヘンケンの気持ちを察した上で背中を押したのかもしれません。

 ヘンケンが部下の提案を再度却下できなかった裏側には、本音では好きな女性を助けたいとの想いがあったことでしょう。しかし、その決断は裏目に出て、艦とともに多くの乗組員の命を失うことになります。

ヘンケン艦長の判断の是非

 それではヘンケンが部下の申し出を却下し、エマを見殺しにしていた場合はどうなったでしょうか。あの時の戦況を振り返ると、やはりラーディッシュは遅かれ早かれ撃沈されていた可能性が高そうです。

 なぜならラーディッシュは、近くにいた僚艦が撃沈されるほどの劣勢に置かれ、直掩のモビルスーツもいない絶望的な状況に置かれていました。ガンダムMk-IIを撃墜すれば、次は近くにいたラーディッシュがターゲットにされても不思議はありません。

 それを踏まえると、危険を冒してガンダムMk-IIを助け、「態勢を立て直したエマに時間稼ぎをしてもらう」、あるいは「戦艦ラーディッシュの艦砲射撃で時間を稼ぐ」という判断は、厳しくはあるもののあり得ない話ではなさそうです。

 それに結果論にはなりますが、ラーディッシュがハンブラビの攻撃を食らった直後にカミーユのZガンダムが戦場に到着しているため、タイミング次第ではガンダムMk-II、ラーディッシュともに助かる可能性もあったとも考えられます。

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 結果的にラーディッシュは撃沈され、多くの乗組員が戦死しました。艦長であるヘンケン、ブリッジにいたクルー、何も知らずに死んだ乗組員……それぞれの気持ちを思うと、いろいろと考えさせられるシーンです。

 一番の責任は最終的に決断を下したヘンケン艦長にあるのは間違いありませんが、それでも「相手がヤザンじゃなければ…」「被弾したのが艦橋じゃなければ…」など、いろんな“if”を探りたくなる、とてもやるせない場面でした。

 皆さんは『Zガンダム』でのヘンケン艦長の判断をどのように受けとめていますか。