『姫ちゃんのリボン』DVD BOX 2(スーパー・ビジョン)

【画像】「懐かしい!」アニメ化された少女マンガ(7枚)

今なお根強い人気を誇る、名作少女マンガが与えた影響とは?

 30年前の1992年10月2日、TVアニメ『姫ちゃんのリボン』が放送開始されました。原作は3大小中学生向け少女マンガ雑誌のひとつである「りぼん」に連載されていた、水沢めぐみ先生が連載していた同名のマンガです。

 自分にそっくりな魔法の国の王女・エリカから、誰にでも変身できる「魔法のリボン」を貸してもらうことになった中学1年生の野々原姫子。そのリボンをつけることで、ぬいぐるみのポコ太が喋って動けるようになります。そして、姫子とポコ太は魔法のことを秘密にしながら、さまざまな出来事を経験していく……という、いわゆる魔法少女のカテゴリーに入るファンタジー色の強い物語でした。

 当時、掲載誌「りぼん」での人気はアニメ化される前から高く、看板作品のひとつだったと言われています。この『姫ちゃんのリボン』が連載されていた頃から「りぼん」の黄金期が始まり、それまでよりも低年齢層にアピールするタイプのマンガが連載されるようになりました。

「りぼん」が少女マンガ誌では史上最高部数の255万部を記録したのは1994年2月号。『姫ちゃんのリボン』の連載終了が、その前号の1994年1月号でした。ほぼピーク時まで連載されていたと考えると、『姫ちゃんのリボン』がどれだけ「りぼん」に貢献していたか分かるというものです。

 この当時、ライバル誌「なかよし」は大ヒットした『美少女戦士セーラームーン』が大ブームの真っただなかでした。それを抑えて少女マンガ誌1位の座をつかんだのですから、当時の「りぼん」の勢いは、少女マンガの王道だった『姫ちゃんのリボン』と、国民的人気アニメの道を歩み始めた『ちびまる子ちゃん』という両輪の力が大きかったと思います。

 ちなみに前述したように「りぼん」と「なかよし」共に、この時代から低年齢層へのアピールで部数を上げたと言われていますが、あまりマンガに詳しくない保護者の方々が雑誌名を間違えることがまれにありました。親に買ってきてもらうとよくある「コレジャナイ」あるあるです。

 そこで『姫ちゃんのリボン』が掲載されている方が「りぼん」……そう覚える人もいたそうです。筆者も当時、書店員をしていた知人から聞いて、なるほどと思いました。

『姫ちゃんのリボン』の人気は根強く、「りぼん60周年スペシャル読み切り」として2015年に読み切りマンガが掲載された時も好評で、その後にも他誌などを含めて何度か読み切り短編が発表されています。

 これらの読み切りは2017年に『姫ちゃんのリボン 短編集』として、本編最終巻から23年ぶりに発売されました。しかも、この『短編集』は旧RMC(りぼんマスコットコミックス)のデザイン装丁で出され、旧コミックスとデザインが統一されていることから、実質的には11巻と思える仕様になっています。



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あくまでも女性層をターゲットにしたTVアニメ作り

『姫ちゃんのリボン』のTVアニメ化。それには前述した『ちびまる子ちゃん』の影響もあったかもしれません。なぜならアニメ『姫ちゃんのリボン』は、『ちびまる子ちゃん』の第1期が終了直後、入れ替わるようにTV放送が開始されたからです。

 製作会社もTV局も違うふたつの作品ですが、このタイミングでの放送はTVアニメ作品がなくなることへの「りぼん」側の焦りだったのかもしれません。この当時の『ちびまる子ちゃん』の人気は高く、正統な少女マンガではないものの「りぼん」の顔でした。ここでTVアニメ作品を失うことは、ライバル誌「なかよし」でヒットの兆しを見せ始めていた『美少女戦士セーラームーン』による独走を許すことになりかねません。

 そう考えた「りぼん」が看板作品である『姫ちゃんのリボン』をTVアニメ化しようとするのは当然の戦略でしょう。アニメ化でのメインスポンサーも玩具会社の「タカラ(現在のタカラ・トミー)」と、『美少女戦士セーラームーン』のスポンサーである「バンダイ」とライバル関係にあることも見逃せません。

 この「タカラ」がスポンサーになったことで、TVアニメでは原作にない「魔法のパレット」や「秘密のハートタクト」といった魔法のアイテムが登場しています。この商品展開も好調で、この「りぼん」と「タカラ」のTVアニメ枠は4作品で5年半ほど継続しました。

 またTVアニメで話題になったのが、この前年にCDデビューしたSMAPがオープニング曲とエンディング曲を担当していたことです。さらに登場キャラクターのひとりである支倉浩一の声を、SMAPの草なぎ剛(※なぎの字は弓へんに剪)さんが演じていました。ちなみに後のミュージカルでは、この支倉先輩はTOKIOの長瀬智也さんが演じています。

 この他にも、姫子と最終的に恋人になる小林大地の声は元宝塚女優の大輝ゆうさんと、幅広い女性層に向けたキャストでした。そういった点は、同時期の『美少女戦士セーラームーン』が男性層も取り込もうとした戦略とは逆に、女性層向けに徹底した布陣だと言えるかもしれません。

 原作のストックが半年ほどでなくなったことから、TVアニメでは早い段階でアニメオリジナルエピソードが入りました。原作マンガが姫子の恋愛や友情を軸に連続ストーリーとなっていましたが、TVアニメでは短編1話完結の話が中心で、コミカルな要素もふんだんに取り入れられています。

 また、原作マンガとTVアニメの終了がほとんど同時でしたが、それぞれまったく別なストーリーで完結していました。怒涛の展開でハラハラした原作マンガとは異なり、TVアニメでは予定調和で安定した最終回を迎えています。正確に言うと、TVアニメの実質的な最終回は一本前でした。

 この『姫ちゃんのリボン』の成功が、その後の「りぼん」連載の人気作のTVアニメ作品に続きます。そう考えると、「りぼん」だけでなく『姫ちゃんのリボン』が90年代の少女ものアニメに与えた影響は大きなものだったと言えるでしょう。