世に女子柔道ブームを巻き起こした大ヒット作『YAWARA! 完全版』1巻(小学館)

【画像】まだまだ多数!浦沢直樹先生のマンガで一番好きな作品は?(11枚)

幸薄すぎるヒロインのスポーツマンガも

 これまで数々の漫画賞を受賞してきた人気漫画家・浦沢直樹先生は、現在も「週刊ビッグコミックスピリッツ」で『連続漫画小説 あさドラ!』を連載中で、人気を博しています。『パイナップルARMY』(原作:工藤かずや)で連載デビューした浦沢先生は、30年以上にわたって『MASTERキートン』や『20世紀少年』などさまざまな名作を手掛けてきました。多作でどれも読み応え抜群のため、ネット上では「なかなか決められない、浦沢直樹先生のマンガで一番好きな作品」が話題になっています。今回は特に人気の高い3作品を、見どころとともに紹介していきましょう。

 まず、浦沢先生を語るうえで欠かせないマンガが『YAWARA!』です。才能あふれる女子柔道家・猪熊柔(いのくま・やわら)を主人公にした作品で、1989年には「第35回小学館漫画賞青年一般部門」を受賞し、累計発行部数は3000万部を超えています。手に汗握る柔道の試合シーンはもちろん、「普通の女の子になりたい」と願う柔の葛藤や恋愛模様も必見。ファンの間では、「普通のスポーツマンガとは一線を画す傑作」「主人公が魅力的だし、心理描写も細かく描かれていてすごく面白い」などの声が上がっていました。

 スポーツマンガといえば、テニスが題材の『Happy!』も人気作のひとつです。『YAWARA!』と同様に女子スポーツ選手が主人公の物語ですが、同作では「行方不明の兄が残した借金(2億5000万)の返済」や「ライバルの竜ヶ崎蝶子から受ける陰湿なイジメ」などシリアスな要素も満載。いろんな不幸も重なり世間から誤解を受けまくりながら、ひたむきに頑張り続ける主人公・海野幸(うみのみゆき)の姿には、思わず胸がアツくなります。「頑張っても頑張ってもなかなか報われない展開にヤキモキするけど、応援して泣けてしまう」と、『YAWARA!』とは対照的なヒロインを応援する人が多いようです。

 また浦沢作品で、特に「伏線が凄い」と言われているのが、『MONSTER』。「第1回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞」「第3回手塚治虫文化賞マンガ大賞」などの輝かしい受賞歴を持つ同作は、天才外科医・天馬賢三(てんまけんぞう)が主人公のサスペンスマンガです。東西冷戦、猟奇殺人、虐待といったさまざまな要素が不雑に絡み合って何度も読みたくなる作品で、読者からは「すごく考えさせられるマンガで読み応えがある」と大人気。なかには「読み始めたら先が気になって、一気読みしてしまった」という人も少なくないようです。

 また、同作を象徴する怪物的ながら妖しい魅力を持つ超天才悪役、ヨハン・リーベルトに魅せられた人も多く、浦沢作品のキャラのなかでも屈指の人気を誇っています。ちなみに、お笑いコンビ・インパルスのコント「取り調べ」などでヨハン・リーベルトの名前を知り、後から『MONSTER』を読んで衝撃を受けた人も一定数いるようです。