ソフトの説明書の厚さに比例して「厚さの分だけ長く遊べる」という期待がふくらんだ 画像は「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」(任天堂)

【画像】テンション爆上げしたファミコンソフト(4枚)

ゲーム本編以外のほうが興奮した!? ファミコンにまつわる思い出

 ソフト一つひとつに思い出があるファミリーコンピュータ。少年少女だった頃、ゲームをプレイするたびにテンションが上がっていました。もちろんプレイすること自体でも大いに心は高ぶりましたが、この奇跡のゲーム機が高揚させたのはテレビの中だけではありませんでした。ファミコンにまつわる「テンション爆上げの瞬間」を振り返ります。

ソフトを箱から出したとき

 子供の頃、ファミコンのソフトを買ってもらえるなんて誕生日、クリスマス、親が機嫌のいい日などチャンスは少なく、一大イベントでした。買ってもらえただけでテンションは上がりましたが、ふと当時のことを思い返してみると、それ以上に歓喜した瞬間がありました。

 大昔、ソフトは紙の箱にそのまま入っていたように記憶していますが、時間が少し進むと紙の箱が少し大きくなり、中に緩衝の役割であろうプラスチックのケースがあり、そのケースの中央にソフトが収まっていました。このケースをわくわくしながら箱から引き抜き、透明のビニールに入ったソフトのステッカーを見たとき何とも言えない高揚感を覚えたものです。これから楽しいことが始まる興奮、つまらなかったらどうしようという不安の動悸、親に買ってもらった大事な宝物を扱う慎重のドキドキ……。すべてが相まってテンションが爆上がりしました。

拡張コントローラーを手に入れたときの万能感

 ファミコンには不器用な子供の手を補助してくれるように、さまざまな拡張コントローラーが販売されていました。筆者の最初の出会いは「ジョイボール」でした。これはその名の通り、手のひらサイズのボールが十字キーとなっていて前に倒せば標準コントローラーキーの上を、手前に倒せばキーを下に押したのと同じ操作となっていました。また標準コントローラーでは押しにくい「ななめ」がたやすく押せるという優れもの。

 しかもこのジョイボールの特筆すべき点は、「A・Bボタン自動15連射機能」を搭載していたというところです。時は高橋名人が16連射という信じられない技を披露し神格化されていた頃。名人が指を痙攣させ連射していたものが、ボタンを押しっぱなしのお手軽操作で15連射を可能にしたのがジョイボールでした。

 しかし、どうもボールの大きさや見た目が特異すぎて子供心に「反則してる感」があってなじめなかった筆者は、すぐに飽きてしまいました。その頃、奇跡の神器が誕生するのです。それは「ジョイカード・マーク2」です。これは標準コントローラーと形状はほぼ同じでひと回り大きいくらい。しかも連射がOFF、8連射、15連射(MAX16.5連射とも)の3段階で選べ、子供ながらにスターソルジャーのようなシューティングゲームを無双。見た目の反則感もない、すごいコントローラーを手に入れた、と万能感に浸り興奮しながらプレイ。とめどなく撃ちだされる戦闘機の銃弾を見たとき、テンションが爆上がりしたのを覚えています。



「シュウォッチ」は「コロコロアニキ」で復刻版が発売された 「シュウォッチ アニキ限定版」(小学館)

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ファミコンの反則技でたかぶるテンション! しかし大きな代償も…

反則技で歓喜…ときめきからの落胆

 上記で反則に厳格なような書き方をしましたが、そんなことはなく進んでやっていたこともあります。たとえば、「『ベースボール』の超遅球」というものがありました。『ベースボール』を遊んでいるときに、本体端子に10円玉をガチャガチャ触れさせると、投手が本来ではありえないほどのスローボールを投じ、打者を翻弄させるという荒技です。当時、友達や家族とのプレイにこの超遅球を披露し打ち取ることに、ドーパミンがドバドバ出ていました。

 しかし、この狂気の反則技はファミコン本体にダメージを与えるもので、しばらくすると本体が再起不能になり修理を余儀なくされました。当時、四角ボタンコントローラーユーザーでしたが、修理から返ってくると丸ボタンに替えられて戻ってきました。この出来事は四角ボタン原理主義者だった筆者をひどく落胆させるものでした。

本来の目的を見失うドーピング技

 反則といえば、ハドソンから発売されたヒットアイテム「シュウォッチ」でも行われました。このアイテムは時計機能や細かいゲームなどが入っていましたが、なんといっても10秒間の「連射測定機能」が主な遊び方でした。子供の能力では10秒で50回押せるかどうかだったように記憶しています。そんななか、人間の能力を競うということに反したドーピングが発見されました。それは「プラスチック製定規」。

 定規をしならせ手を放すことの反動で、ビヨヨーンと高速に上下します。この運動を利用しシュウォッチで連射を測定するという遊びが流行しました。この定規ドーピングを使うと、10秒で200回近くをマーク。この見たこともない数字にテンション爆上げで、兄弟間は「定規による連射記録」で競い合っていました。

 本来の目的を見失うほど、記録は伸び尋常ではない数字を叩き出し悦に浸っていましたが、はたと「これはゲーム自体に使えない」ということに気付き、衰退していきました。

 その他にもファミコンにまつわる「テンション爆上げ」エピソードといえば、転職システムが初めて導入された『ドラゴンクエストIII』でダーマ神殿に到達したとき。『スーパーマリオブラザーズ』で無限増殖にチャレンジ。ノコノコを上手に踏めたときの高揚感(そして欲張りすぎてバグる)などがありました。新しいソフトを買うと家に女の子も遊びに来るというボーナスステージ突入など、子供心をたかぶらせるイベントがたびたび起こるのがファミコンでした。