著:吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第20巻(集英社)

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無惨の細胞の記憶で堕姫が見た剣士とは?

『鬼滅の刃 遊郭編』第6話「重なる記憶」に、炭治郎と同じ耳飾りを着けた剣士(CV:井上和彦)が登場しました。鬼舞辻無惨の血を分けられた上弦の陸・堕姫は、細胞の記憶で彼の言葉を聞きます。

※これ以降、まだアニメ化されていないシーンの記載があります。原作マンガを未読の方はご注意ください。

 剣士の名前は、継国縁壱(つぎくに・よりいち)。『鬼滅の刃』に登場するキャラクターのなかで、最強の人物と言われます。「水の呼吸」や「炎の呼吸」といった鬼殺隊に必須の技術・呼吸法のもととなる「日の呼吸」を編み出した人物です。

 縁壱は無惨ですら「本当の化け物はあの男だ」と恐れる存在で、同じ耳飾りを着けていた炭治郎を殺そうと狙います。作中でも縁壱の剣技は「神の御業」、そして彼は「鬼狩りの長き歴史で最も優れた剣士」と称されました。そんな縁壱の人間離れしたエピソードをご紹介します。

7歳で初めて剣を握り、大人を気絶させる

 400年ほど前、縁壱は当時の習慣で不吉とされる双子として生まれました。また、痣があったせいで父親から殺されそうになります。反対した母のおかげで命拾いし、兄・厳勝(みちかつ)と離されて育てられます。

 そんな縁壱は兄を慕い、自分も兄と同じように剣の練習がしたいと言いました。初めて竹刀を持った縁壱は、剣の指南役であった父の輩下を一瞬で気絶させます。その様子を兄・厳勝は次のように回想します。

「父の輩下は瞬きする間に縁壱から四発叩き込まれ失神した 7つの子供に打たれた首・胸・腹・足は骨にこそ異常はなかったものの 拳大に腫れ上がったそうだ」

 しかも、縁壱は剣の持ち方や構え方を軽く説明されただけです。予備知識も全くない状態で大人を気絶させた、縁壱の生まれついての強さが分かるエピソードです。

山3つを1日で…

 縁壱のずば抜けた身体能力は、成長してからも発揮されます。

 大人になった縁壱は、妊娠した妻・うたのために産婆を呼びに行こうとしました。その途中で、座り込んでいる老人を助けます。老人は弱った心臓を庇いながら、戦争で傷を負った息子の元へ向かっていました。そこまでは山を3つ越える必要があります。縁壱は老人を背負って、傷ついた息子のところまで連れて行きました。産婆を呼ぶのは翌日にして、夜になってから家に戻ります。

 山を3つ越えるだけでもつらいはずですが、縁壱は老人を背負い、1日で運んでいます。しかも日が暮れたとはいえ、往復して戻ってきました。戦い以外の場面でも、縁壱の常人離れっぷりが分かります。

1500と少しをその場で斬る

 最愛の妻と子を鬼に殺された縁壱は、鬼狩りに加わります。鬼の始祖・無惨に遭遇した縁壱は、心臓が7つ、脳が5つあることから「日の呼吸」の剣技の型をその場で完成させます。そして、無惨の頚と両腕、そして胴と足を斬り落としました。しかし、無惨は1800個の肉塊に分裂し、はじけて散らばります。

 縁壱は次のように回想しました。

「千五百と少しをその場で斬った」

 1800個の小さい肉塊が勢いよく弾けたのですから、縁壱が無惨を斬れるタイミングはわずかでした。その短い間に、縁壱は1500個以上を斬ったのです。驚くべき腕と言えるでしょう。

 また、縁壱が無惨へ与えた傷は、その後もダメージを与え続けました。無惨の回復力が衰えると傷が現れます。先祖の記憶によって縁壱を知っていた炭治郎は、無惨との戦いのさなかに気が付きました。

「そうかあれは縁壱さんがつけた傷だ 治癒しなかったんだ 何百年のもの間無惨の細胞を灼き続けた」

 無惨自身も、縁壱がつけた傷に気が付いた時、怯えた様子を見せています。縁壱は無惨を倒せませんでしたが、彼が残した呼吸法と傷跡が無惨を追い詰め、最終的に討ち倒すことになりました。