人間時代の記憶が武器の毬に反映された朱紗丸。画像はアニメ『鬼滅の刃』より (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

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「毬」で遊びたいだけだった?

『鬼滅の刃』は、2020年に原作が完結してもTVアニメを中心に人気が沸騰中。熱いバトルにてんこ盛りのギャグ、そして泣ける人間ドラマなど、多彩な見どころが多くの読者、視聴者を惹きつけています。

 同作では、敵である鬼たちの悲しい過去も克明に描かれます。下弦の伍・累(るい)の両親との過去をはじめ、上弦の参・猗窩座(あかざ)の過去など、さまざまなドラマが描かれる一方で、作中では人間時代のことが特に語られない鬼たちもいます。彼らはいったいどんな人生を送っていたのでしょうか。

※以下、『鬼滅の刃』でアニメ化されていないストーリーや、キャラクターの最期に触れていますのでご注意下さい。

魘夢

 国内興行収入歴代1位となった『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』に登場した下弦の壱・魘夢(えんむ)は、炭治郎たちを夢の世界に閉じ込めてギリギリまで追い詰めた強敵でした。映画の大ヒットもあって印象に残っている鬼のはずですが、彼の過去は劇中では描かれていません。

 しかし、公開時の劇場版入場特典についていた「大正コソコソ噂話」で、魘夢の人間時代が明らかになっています。本名は不明ですが、彼は重い病気の患者に対し催眠療法……のふりをした詐欺まがいの治療をして金をだまし取ったうえに、本当は治っていないことを告げて絶望する様を楽しんでいました。鬼になったきっかけは、無惨に気まぐれに襲われて、気まぐれに血を分けてもらっただけのようです。

「無惨様のパワハラ会議」と有名な場面でも「人の不幸や苦しみを見るのが大好き」と言っていたので、ある意味一貫した人生と言えなくもありません。

朱紗丸

 炭治郎が初めて無惨と遭遇した後、珠代や愈史郎と一緒にいる時に刺客として襲ってきた鬼が朱紗丸(すさまる)です。殺傷能力の高い複数の毬をぶつけて攻撃する血鬼術を持ち、矢印で物体の動く方向を自在に操る能力を持つ鬼・矢琶羽(やはば)とコンビを組んで襲ってきました。出番は短いですが、かわいらしい幼女の見た目をしていることもあって人気の高いキャラです。

 具体的な過去は描かれませんが、最期のシーンで肉片から「まり……遊ぼ……」という声が出ていたので、おそらく無邪気な子供がそのまま鬼にされたものではないかと思われます。公式ファンブックの「鬼殺隊見聞録」では、毬は父親に買ってもらった思い出の品であることが明らかにされています。

 また、アニメの次回予告「大正コソコソ噂話」では、矢琶羽とは炭治郎殺害の命を受けた時が初対面で、任務に向かう途中で仲良くなったことが明かされていました。群れることが少ない鬼でありながら一定の社交性を持っているという点では、やや珍しい存在といえるかも知れません。



鳴女の過去をはじめ、作中のさまざまなキャラや出来事を補足してくれる「鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐 (ジャンプコミックスDIGITAL)」

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幸薄そうに見えて、まさかのロックな生きざま

玉壺

「上弦の伍」でかなりの実力者ながら、それ以上に強烈なビジュアルと性格が話題になった玉壺(ぎょっこ)。「刀鍛冶の里編」では、里の人間たちを壺に詰めて芸術品として見せびらかすといった外道ぶりを見せました。彼は人員交代が起きる前の上弦の鬼のなかでは、唯一作中で過去が明かされていないキャラクターです。

 しかしその後、公式ファンブックで玉壺の過去が明らかに。彼の本名は益魚儀(まなぎ)で、漁村で暮らす男でした。幼少期から違う魚を縫い合わせる、うろこや骨を壺に入れて「芸術」として愛でるなど、変態性を発揮しており、魚をモチーフにした血鬼術や壺に入った体の原点はここにあるようです。そして、両親の水死体まで芸術品とみなしたり、自分を馬鹿にした子供を殺害して壺のなかに入れて飾り付けたりと非道の限りを尽くし、村人たちから半殺しにされたのちに無惨に鬼にされました。

 霞柱・時透無一郎との戦いもどこか漫才のようにユーモラスだった玉壺ですが、こんなサイコパスすぎる過去を明かされては笑えるものも笑えなくなるので、本編では省略されたのかも知れません。

鳴女

 鳴女(なきめ)は、「パワハラ会議」の場面から登場する、無惨のお気に入りの鬼です。最初は十二鬼月にすら入っていませんでしたが、「刀鍛冶の里編」で半天狗が倒されてからはいきなり「上弦の肆」に抜擢されました。彼女の血鬼術は無惨の本拠地ともいえる「無限城」を操る能力。琵琶を鳴らすだけで城の部屋などを自在に移動・操作でき、選んだ対象をなかに入れたり別の場所に送り届けたりすることもできます。

 鳴女のバックボーンは描かれず、上弦のなかではいちばん影が薄くなってしまった彼女ですが、2021年2月に発売された最後の公式ファンブック「鬼殺隊最終見聞録・弐」で衝撃の事実が明らかになります。

 人間時代から琵琶奏者だった彼女は、舞台用のお気に入りの着物を勝手に売られたことから夫を殺害、その直後の演奏がかつてなく好評だったために、それから琵琶を弾く前は必ず誰かを殺すようになりました。そして、ある時ターゲットとしてたまたま無惨を襲ってしまい、その根性を買われて鬼にされた……というのです。

 鳴女という名前や幸薄そうなビジュアルに反して、生前からすでに鬼のような行為をしていた彼女は、一部のファンから「ロック」「メタルモンスター」など、ネタ込みで愛されているようです。